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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生7巻6号

1950年06月発行

文献概要

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公衆衞生の發達(4)

著者: 杉靖三郞

所属機関:

ページ範囲:P.357 - P.360

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公衆衞生の黎明
 歐洲においては18世紀の末から所謂,實利主義が時代の思想となつてきた。『最大多數の人の最大の幸福』と云う言葉は空氣の研究で有名なジェレミイ・ベンサムJeremy Bentham(1748-1832)によつて一層徹底された。このベンサムが唱えた實利主義が科學研究の專門化・分化をもたらす上に大きな原動力をなしたと云つてもよいかと思う。ベンサムの思想は丁度その時代の社會情勢とぴつたり適合したものであつて,人々は意識するとせざるとに拘らず,この思想の影響を大いに受けた。醫學方面の人々もこの時代思想に大いに影響されて,學問を專門化してそれぞれ細かい分野を分擔することが能率をあげる所以だと知らず知らずの間に思うようになつたのである。それ故に,ベンサムこそは19世紀以後の學問研究の專門化の刺戟者であり,また,19世紀以後に漸く盛んになつてきた豫防醫學の直接の創始者だつたと云つてよいかと思う。
 ベンサムは人間の社會現象の説明の自然科學の方法を利用して,社會學という一つの科學を創始しようと努力した。そして,その點に於いて,彼は醫學思想家.殊に,公衆衞生を取扱う醫學思想家達に大きな影響を與えた。彼の弟子のジョン・スチュアート・ミル(John Stuart Mill(1806-1873)はベンサムの學問の方法を『科學的な方法」と云つた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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