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連載 感染症実地疫学・10
大学病院におけるサルモネラ症集団発生の事例調査
著者: 神垣太郎12 松舘宏樹13 鈴木葉子14 中島一敏5
所属機関: 1国立感染症研究所実地疫学専門家養成コース 2北海道大学大学院医学系研究科社会医学専攻予防医学講座国際保健(医学)分野 3岩手県環境保健研究センター保健科学部 4東京女子医科大学東医療センター小児科 5国立感染症研究所感染症情報センター
ページ範囲:P.791 - P.795
文献購入ページに移動全国で約28,000名(2004年)報告されている食中毒患者のうち,細菌性食中毒の中ではサルモネラ属菌による報告が最も多い1).またPatrick2)らによれば,85~99年での米国におけるSalmonella Enteritidis(以下,SE)集団発生時の致命率(CFR)は0.3%程度であるが,医療施設では約3%まで上昇すると報告されている.このために医療施設では,平素からのSE集団発生予防とともに,発生した場合には迅速な対応が必要であると考えられる.
2004年7月中旬より大学病院の入院病棟にて消化器症状を呈する患者が多く発生した.病院の院内感染対策チームと届出のあった保健所は直ちに協力して調査を行い,SEによる集団発生であり,汚染の原因は院内感染の可能性が否定できないが,厨房視察において卵の取り扱いに問題があり,事例発生後の食品からSEが分離されたため食品媒介の可能性が高いと判断し,厨房の使用を停止した.患者の発生数は厨房の休止後著しく減少したが,給食再開後も散発的に患者発生を見たために,県より事例発生1か月を経て国立感染症研究所に実地疫学専門家養成コース(以下,FETP)の派遣要請があり,全体像の把握,感染源の特定および伝播経路の解明を目的として,自治体に協力して現地調査することとなった.
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