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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生70巻4号

2006年04月発行

雑誌目次

特集 予防接種

予防接種の国際戦略

著者: 砂川富正

ページ範囲:P.252 - P.256

急性あるいは慢性の感染症対策として予防接種(以下,ワクチンと総称)を用いた国際的な戦略に関する議論が活発である.急速に変化し,相互依存を強める世界にあって,WHO(世界保健機関)は公衆衛生施策としてさらに積極的なワクチンの役割を模索している.その理由としては,依然として,ワクチンによって予防しうる多くの感染症で,小児を中心とする多数の人々が死亡したり,重症に至ったりするなどの健康被害を生じている事実がある(表1)1)

 本稿においては,WHO内の主なワクチン担当部署である,Global Immunization Vision and Strategy(GIVS:世界的なワクチン施策の展望および戦略)や,Expanded Program on Immunization(EPI:拡大予防接種計画)などにおいて検討されている,ワクチンの国際戦略に関する情報より紹介する.これらのチームの具体的で古典的な目標の1つは,ワクチン予防可能疾患から一段進めた,ワクチンを用いた世界からの根絶(あるいは排除)可能な疾患への対策であり,1977年10月26日のソマリアでの自然感染例を最後に地球上から根絶された天然痘に続き,ポリオ,麻疹などをその候補として対策が進められている.麻疹についてはやや詳しく触れながら,感受性者蓄積など,わが国に共通する課題などについても少し触れてみたい.

わが国の予防接種制度についての概説と最近の動向

著者: 平山宗宏

ページ範囲:P.257 - P.260

予防接種に関する法律の歴史と経緯

 予防接種そのものの歴史は,病原体発見に先立つ1798年,E. Jennerの牛痘法発見に始まるが,これがわが国の長崎に伝わったのは1849年で,オランダ医のもとで西洋医学を学んだ先覚者たちによって,国内各地に伝えられた.江戸でお玉が池に伊東玄朴による幕府の種痘所ができたのが1858年であった.

 明治の開国後,文部省が設置されたのが1871(明治4)年,教育令に学校伝染病の規定が設けられたのが1879年,1880年の内務省告示伝染病予防心得書の付録として種痘施術心得書が出されたのが1885年であった.1897(明治30)年には伝染病予防法が定められ,これは平成10年まで使われてきた.種痘の心得書は,1909年に改正されたが,こちらは戦後の予防接種法制定まで継続されていた.

感染症の流行と予防接種―インフルエンザを中心に

著者: 廣田良夫

ページ範囲:P.261 - P.265

インフルエンザワクチン接種の目的は,ハイリスク者における重篤な合併症や死亡を予防することである.2001(平成13)年の予防接種法改正で,高齢者などを対象にインフルエンザの予防接種が行われることとなり,わが国のインフルエンザ対策もやっと世界のレベルに追いつきつつある.これまでの経緯の理解に資するため,本稿ではインフルエンザワクチン接種の現状,および適応と評価について概説する.

流行と予防接種

 1. わが国における接種の現状

 厚生労働省医薬局血液対策室の調査によると,2004/05シーズン(平成16年度)における予防接種法に基づく接種対象者数は,合計24,491,645人(①65歳以上の高齢者24,355,088,②60歳以上65歳未満で心臓,腎臓,呼吸器などの障害を有する者136,557,未把握市町村あり),実際に接種を受けた人数は11,410,856人,接種率は46.6%である.

BCGの新しい接種方式について―科学的根拠に基づく結核予防を求めて

著者: 高松勇

ページ範囲:P.266 - P.270

結核予防法の50年ぶりの改正1,2)に伴い,昨年4月からBCG接種体制が「ツベルクリン反応(以下「ツ反」と略)を廃止して直接接種する方式」に変更された.同時に,定期接種期間が生後6か月までと短縮され,新生児を含む生後3か月前接種が容認されたことから,現場は大混乱を呈した.

 本稿では,科学的根拠に基づく結核予防・医療政策を進める立場から,今回のBCG接種制度変更の問題点を検証した.

麻しん・風しんワクチンの2回接種

著者: 安井良則

ページ範囲:P.271 - P.276

麻しんは,2001年に全国的な流行が見られたが,それ以降は年々減少が見られている.全国約3,000か所の小児科定点医療機関からの累積報告数(感染症発生動向調査)では,2001年の34,237から,2005年は603(2006年1月現在未確定値)と大きく減少した.風しんの定点報告数も2004年は4,236と前年よりも増加したが,2005年は初めて1,000以下となることが確実である.麻しん患者報告数の減少は,2001年頃より全国の小児科医や自治体を中心に,ワクチン接種率向上のための対策やキャンペーンが実施されてきた成果であると考えられる.

 今回,平成16年7月29日付で予防接種法施行令の一部を改正する政令,省令が出されたが,これは平成18年4月1日から麻しん・風しんの混合ワクチン(乾燥弱毒生麻しん風しん混合ワクチン)の定期予防接種と,2回接種の導入を目的としたものである.これは,麻しんおよび風しん感受性者の蓄積による将来のアウトブレイク発生の阻止だけではなく,両疾患の日本国内からの排除を目指す上において,極めて重要であることは間違いはない.しかしながら,今回導入される制度とその運用には様々な問題点が存在している.場合によっては,ワクチン接種率の低下を招き,ここまで減少してきた麻しんもしくは風しんの発生数の増加のみならず,流行を来たすことも危惧される.

ポリオ

著者: 加藤達夫

ページ範囲:P.277 - P.280

わが国においてポリオは,1980年に1例が発生したのを最後に,その発生は見られない.また2000年には,わが国を含むWHO西太平洋地域で,ポリオの根絶宣言がなされた.

 わが国では1960年5,600人を超える流行があり,多くの麻痺患者が発生した.しかし1961年,経口生ポリオワクチンがソ連から超法現的に緊急輸入され,子どもたちに接種された.その後,日本ポリオ研究所はセービン生ワクチンを開発し,接種が広く日本に普及したため,患者は激減し,3年後には100人を下回った.生ワクチンの効果が絶大であったことがわかる.図1に流行とワクチンの関係を示す.

動物の予防接種はどのように行われているか

著者: 中村成幸

ページ範囲:P.281 - P.283

動物用のワクチンは,人体用と同様,薬事法に基づき承認,製造,国家検定等により品質,有効性および安全性が確保されており,個々の動物の疾病予防や疾病による経済的損失の軽減のために使用されている.本稿では,動物用ワクチンの種類,人体用ワクチンとは異なる特徴,および使用の法的規制について述べる.

ワクチンの種類

 1. 対象動物

 動物用ワクチンは,ほ乳類(牛,馬,豚,犬,猫,ミンク),鳥類(鶏,カナリア),魚類(あゆ,ぶり,かんぱち,まだい,しまあじ,ひらめ)を対象動物とするものが承認されている.

新たな感染症へのワクチン

著者: 渡辺理恵

ページ範囲:P.284 - P.287

「新興感染症」という言葉が聞かれるようになって久しい.1990年に発表されたWHOの定義によると「過去20年間に新たに同定された感染症」とされている.表1は新興感染症の中でも特にウイルスが原因となっている疾患について発生年,地域を示したものである.個々の疾患についての詳細は本筋から外れるので割愛するが,エボラ出血熱やラッサ熱など致死率の高い急性感染症,今や全世界で4,000万人を超す感染者が出ている後天性免疫不全症候群(AIDS:エイズ),2002年末から2003年にかけてアジアに突如出現し,世界に衝撃を与えた重症呼吸器症候群(Severe Acute Respiratory Syndrome: SARS)など,社会的に大きなインパクトを与える疾患が多い.また動物由来のウイルスが種の壁を越えてヒトへ感染し,ヒト社会で蔓延するパターンが多いのも1つの特徴である.

 表1ではワクチンの開発状況についても記してあるが,今のところエボラ出血熱,ウエストナイル脳炎,SARSの3つについて第一段階の臨床試験が,エイズについては第二段階の臨床試験が行われている.ワクチンは個体の防御と病原体の封じ込めに大きな役割を果たすものの,その開発には通常莫大な費用と長い時間を必要とするため,未知の感染症が発生した場合,すぐにワクチンを供与することは難しい.しかし現代のワクチン開発は,過去の知識の蓄積と研究技術の進歩の結果,過去のワクチン開発とは比べものにならないほどに進化しており,開発の時間を大幅に短縮することが可能となっている.

視点

新医師臨床研修制度について思うこと―保健所研修のこの1年を振り返って

著者: 宮園将哉

ページ範囲:P.246 - P.247

平成16年度から新しい医師臨床研修制度が始まり,今年4月で2年が経過した.その中では,これまでなかった「地域保健・医療」の分野における研修が義務付けられ,保健所でも研修医を受け入れるようになった.多くの場合研修医は,始めに臨床研修指定病院の内科や外科などで医師としての基本的な知識や技術を身に付けるため,「地域保健・医療」の分野についてはおおむね2年目に研修することになり,現在私が勤務している保健所においても,実際に研修医を受け入れたのは平成17年になってからであった.

 私自身が保健所で勤務を始めてから,まだ4年目であるにもかかわらず,研修医を指導する立場になってしまい,さらにそれに対して意見を述べるというのは非常におこがましいところではあるが,この4月で実際に研修医の受け入れを始めてほぼ1年が経つことから,これまでの反省を踏まえて研修内容を振り返り,今後の課題などについて考えてみたいと思う.

トピックス 水俣病認定申請者調査③

申請を遅らせた住民の「水俣病」イメージ

著者: 川北稔 ,   成元哲 ,   牛島佳代 ,   丸山定巳 ,   「不知火海研究プロジェクト」

ページ範囲:P.288 - P.291

水俣病補償制度への申請経験とその結果

 「同じ家にいてどうして家族は医療手帳,私だけ棄却なのか? 身体も変わらないのに.(棄却されて)何日も眠れなかった.ご飯もおいしくなかった」(60代・女性),「95年,ほんの5分や10分の検査で棄却されたのが非常に不満だ.地引網をしている私たちがかからない(=認定されない)のに,山から嫁いで漁業もしない人がかかっている.私たちは30年以上,朝晩漁業していたのに……」(70代・女性)

 今回の調査対象者274人に対して,これまで水俣病に関する補償制度に申請した経験があるかどうか,またその申請結果を尋ねた(図1).1995年の政府解決策に伴って再開された水俣病総合対策医療事業(以下,総合対策医療事業)に申請した人を含めて,「申請経験がある」人が129人(47.1%)で,「申請経験がない」人は145人(52.9%)である.申請経験があると答えた129人の内訳をみると,「公害健康被害補償法(以下,公健法)のみに申請した」人が14人(10.9%),水俣病とは認めないものの,一定の健康被害があるとして国と県が医療費・療養手当等を支給した「1995年の総合対策医療事業にはじめて申請した」人が89人(69.0%),「公健法と1995年の双方に申請した」人が26人(20.2%)である.

特別記事 [インタビュー]水俣病から50年・患者さんの声を聴く・1

行政とチッソの今

著者: 浜元二徳 ,   田口ランディ ,   実川悠太

ページ範囲:P.292 - P.296

田口 今日は,水俣病の語り部として活動していらっしゃる浜元二徳さんにお話を伺います.また「水俣展」を企画運営しているNPO法人「水俣フォーラム」の実川悠太さんにもアドバイザーとして同席いただきました.どうかよろしくお願いします.

「水俣は世界の,地球の,よかモデルたい」

田口 浜元さんは1972年にストックホルムで行われた国連人間環境会議に出席されていますね.その後,水俣病を海外に紹介する大切な役目を担われていくようになるのですが,ストックホルムではどのような経験をなさったのでしょうか?

特別寄稿

環境と人権がつくる人々の健康と安全―公衆衛生学の新たな発展をめざして

著者: 岸玲子

ページ範囲:P.298 - P.303

第64回日本公衆衛生学会(札幌,2005年9月14~16日)では,「環境と人権がつくる人々の健康と安全」をテーマに,全体プログラムを企画した.本稿は学会長講演の要旨である.

第二次大戦後の日本の公衆衛生,その光と陰

 乳児死亡率や妊産婦死亡率などは,戦前非常に高かったが,地道な公衆衛生活動により,乳児死亡率は世界でもっとも低いレベルまで低下した.世界一の長寿が達成され,平均寿命は男性で78歳,女性で85歳である.その意味で戦後の日本の公衆衛生は大きな成功を遂げ,サクセス(success)であったと言える.明治の女工哀史に代表されるような劣悪な労働環境は,戦後,労働安全衛生法が制定され改善されたが,高度経済成長期には職業病と労働災害が多発した.産業公害で広範な地域の大気,土壌や水質が汚染され,「修復と再生」の歴史であった.

連載 Health for All―尾身茂WHOをゆく・24 鳥インフルエンザと闘う⑥

2006年1月,日本で開催された,鳥インフルエンザの国際会議

著者: 尾身茂

ページ範囲:P.248 - P.249

さて,今回は2006年1月に東京で開催された,日本政府とWHOの共催による鳥インフルエンザの早期封じ込めについて議論された会議のことを,舞台裏も含めて話そう.

 鳥インフルエンザがアジアを中心に拡大し,その対策に対する国際世論が大きくなり始めた2005年夏頃,私は日本に数回足を運び,政府高官と会合をもった.日本政府からの鳥インフルエンザに対する支援をお願いする目的だった.国際社会の中で,日本の指導力がやや翳りを見せている現在,鳥インフルエンザに対する支援が,日本の得意とする保健医療分野であることを考えると,この機会は,日本にとってそのリーダーシップを発揮する大きな契機であると強調し,特に以下の2点を訴えた.

21世紀の主役たち・1【新連載】

馬の世話をするイラリオ(ペルー・アンデス,ケロ村)

著者: 関野吉晴

ページ範囲:P.245 - P.245

イラリオはすでに学齢期になっていたが,学校に行っていない.小さい頃からブタ,ヒツジ,アルパカ,リャマといろいろな家畜の面倒を見てきた.今は馬も乗りこなすようになり,馬の世話を始めた.身長が低いので,首にロープをかけるのにひと苦労する.誰も手伝ってくれないので,自分1人でやるしかない.家族で馬が必要ない時は山の上に放し飼いにしておく.長い間放置しておいて,必要になって探しに行くと見つからない時がある.どうしても自分1人で見つけられない時は,父や兄の手を借りなければならない.最近は家畜泥棒も増えてきた.農繁期には家族総出で畑仕事をするので,イラリオも駆り出される.

 イラリオは時々馬を連れて,学校の近くまで行く.そして授業の様子を眺めていることがある.学校では朝,ペルー国歌を歌う.イラリオは何度も聞いているうちに,おおよそ国歌をそらんじるようになっていた.

感染症実地疫学・4

FETPの活動と日常

著者: 松井珠乃

ページ範囲:P.304 - P.307

FETPについて

 日本において,FETP(実地疫学専門家養成コース)は,感染症危機管理対応の人材を育成することを目的に,1999年9月に産声をあげました.自治体などからFETPに派遣された研修生は,国立感染症研究所(以下,感染研)をベースとして,2年間にわたり感染症疫学に関する研修を受けながら実務を行う中で,各人の実地疫学に関するスキルアップが期待されるとともに,各種の活動を通して,国内外の様々なネットワーク構築を積極的に行うことができます.

 国際的には,1997年に結成されたTEPHINET(Training Programs in Epidemiology and Public Health Interventions Network)というFETPのネットワークがあり,日本のFETPもその一翼を担っています.

精神医療ユーザーが語る・4 精神障害者が精神障害者に日本で初めて行ったアンケート結果から④

精神障害者が人間らしい生活を取り戻すには,何が必要なのだろうか?(上)

著者: 山梨宗治

ページ範囲:P.308 - P.311

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エイズ対策を評価する・4

HIV医療の問題点(下)

著者: 根岸昌功 ,   稲垣智一 ,   宮澤豊 ,   岩室紳也 ,   上野泰弘

ページ範囲:P.312 - P.317

スタンダードがないHIV医療

根岸 保険での医療技術が画一化されているということが大きいと思うのです.例えばHAART療法でエファビレンツという薬を使うことになったとしても,血中濃度を測定したほうがよい.これも結局,最先端のものを目指すということになり,今の保険制度の中に入ってこないものを導入するか,しないかという問題が出てきます.

 拠点病院の技術をメインに考えるとしたならば,そのルートがあるかないかによって,患者さんのほうで選ぶコマが大分違ってきますね.

性のヘルスプロモーション・7

[インタビュー]これからの性教育のあり方―「性教育バッシング」を超えて

著者: 村瀬幸浩 ,   浅井春夫 ,   岩室紳也

ページ範囲:P.319 - P.324

岩室 今回は性教育の一翼を長年にわたり引っ張ってこられた両先生方に,「性教協」(“人間と性”教育研究協議会)のことを含めお話を伺えればと思っています.この団体はどういう流れの中で始まり,今まで何をやってこられて,今後何を目指していかれるのか,まず教えていただけますでしょうか.

性教育の幕開け

村瀬 「性教協」の創立は1982年で,私も創立者の1人です.日本では,戦前はもちろん,戦後も性教育という言葉自体が使われていない時代が長くありました.戦後,民主主義や男女平等などの教育は必要だと言っても,それを性の問題に広げていく意識や考え方はありませんでした.売春問題や非行問題が起きると,モラルの低下だとか純潔とか言って,特に女の子の性行動を抑制しようとしたり,一方男の子には何も教えようとしませんでした.つまり教育の対象にはされなかったのです,性は.

衛生行政キーワード・18

介護保険制度の見直し―「介護予防の推進」について

著者: 國光文乃

ページ範囲:P.325 - P.327

高齢化のさらなる進展とともに,介護は今後ますます大きな問題となることが予想される.

 その中で,介護保険制度については,平成12年度の施行後の5年間の状況を踏まえ,制度の基本理念である「自立支援」を徹底し,さらに制度の持続可能性を高めていくために見直しが行われ,平成17年6月に「介護保険法の一部を改正する法律」が国会で可決・成立し,平成18年4月に施行されたところである.

赤いコートの女―女性ホームレス物語・20

波さんの故郷

著者: 宮下忠子

ページ範囲:P.328 - P.329

福岡県にある某炭鉱街に育った波さん.

 波さんが小学校1年生のとき,それは1963(昭和38)年11月9日,午後3時15分過ぎ,突如,大爆音が市街に響き渡った.やがて黒煙が空を覆う.三井三池工業所三河坑が出所だった.大爆音は,有明海の海面下約350mの炭鉱内で起きた.そのとき在坑者は1,994人で,爆死,あるいは一酸化炭素中毒,罹災等で,ほとんどが死亡している.石炭に代わり石油等,新たなエネルギー資源が台頭してきたときでもあった.エネルギー資源としての石炭の需要は,激減していった.その三井三池鉱業所は,1997(平成9)年3月29日に閉山になっている.

 2002(平成14)年10月,お彼岸の日,私は熊本にある実母の墓参りに行った.墓参りを済ませた後,波さんの故郷であるこの炭鉱の街を訪れていた.同所には,2度目の旅であった.1度目は,早春の頃,波さんが小学1年生の時の担任の先生にお会いできた.波さんがしっかりと記憶している,原先生である.

調査報告

練馬区麻疹ゼロ作戦―3年間の取り組みとその評価

著者: 西田みちよ ,   北島和子 ,   成田友代 ,   木尾祐子

ページ範囲:P.330 - P.334

練馬区では平成14年7月に区内中学校で発症者17人に及ぶ麻疹集団感染を経験したことを契機に,麻疹ワクチン接種の重要性を再認識し,平成14年度から麻疹ゼロ作戦を展開している.戦略の3本柱を「未接種者の把握と接種勧奨」,「普及啓発」,「麻疹発生時の情報連絡システムの構築」とした.平成14年度から現在までの3年間の取り組みとそれを評価するために実施した3つの追跡調査の結果について報告する.

練馬区の現状

 練馬区は人口約67.1万人,出生数は平成16年5,819人であり,東京23区中2番目に人口の多い区である.練馬区保健所はいわゆる県型の保健所業務以外に,市町村業務も併せて行っており,区役所内の保健管理課,生活衛生課,予防課3課の他,6か所に保健相談所を配している.予防接種業務は予防課所管であり,ポリオ,BCG以外の予防接種は,区内の医療機関に委託して個別方式で実施している.麻疹の予防接種は生後3か月時にDPT(初回・追加),風疹と共に予診票を個別郵送している.個人の接種履歴等は予防接種情報システムによりデータベース化し,予防課が一元管理している.乳幼児健診等の健診は各保健相談所で実施している.

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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