公衆衛生70巻4号

2006年04月発行

特集 予防接種

BCGの新しい接種方式について―科学的根拠に基づく結核予防を求めて

著者： 高松勇¹

所属機関： ¹大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター小児科

ページ範囲：P.266 - P.270

結核予防法の50年ぶりの改正^1,2)に伴い，昨年4月からBCG接種体制が「ツベルクリン反応(以下「ツ反」と略)を廃止して直接接種する方式」に変更された．同時に，定期接種期間が生後6か月までと短縮され，新生児を含む生後3か月前接種が容認されたことから，現場は大混乱を呈した．

　本稿では，科学的根拠に基づく結核予防・医療政策を進める立場から，今回のBCG接種制度変更の問題点を検証した．

参考文献

1) 厚生科学審議会感染症分科会結核部会報告「結核対策の包括的見直しに関する提言」(2002年3月20日)

2) 結核部会・感染症部会の共同調査審議に係る合同委員会報告書(2002年5月29日)

3) 厚生省保健医療局結核感染症課(監修)：結核の統計2005. 財団法人結核予防会, 2005

4) ツベルクリン反応検査及びBCG接種に関する調査. 平成12年度結核緊急実態調査報告書

5) 高松勇：緊急寄稿―BCG接種体制の変更―直接接種の導入. 日本小児科医会報29: 105-114, 2005

6) Victoria Romanus: Department of Epidemiology Swedish Institute for Infectious Disease Control. The impact of BCG vaccination on mycobacterial disease among children born in Sweden between 1969 and 1993. Smittskyddsinstitutet, Stockholm, 1995

7) Evaluation of The Finnish Newborn BCG Vaccination Programme. National Public Health Insutitution publications. Kansanterveyslaitor, Folkhaisoinstitutet, National Public Health Institute, 2001

8) 永井宗雄, 藤岡雅司, 宮崎千明・他：乳児BCG直接接種の導入に関する全国自治体への緊急実態調査. 第9回日本ワクチン学会学術集会(2005年10月15, 16日, 大阪市)プログラム・抄録集, p73, 2005

9) Lotte A, Wasz-Hockert O, Poisson N, et al: Second IUATLD study on complications induced by intradermal BCG-vaccination. Bull IUATLD 63(２): 47-59, 1988

10) 柳元和, 伊集院真知子, 入江紀夫・他：小児結核の治療・副作用の文献レビューに関する研究―新生児期におけるBCG接種の安全性の検討. 平成17年度厚生労働科学研究費補助金(新興・再興感染症研究事業)分担研究報告書(印刷中), 小児結核及び多剤耐性結核の予防, 診断, 治療における技術開発に関する研究「小児結核の実態と臨床像に関する研究」分担研究者・高松勇

11) 日本小児科学会：結核予防法の改正等に係る対応(BCG直接接種導入)についての見解(内容は, 日本小児科学会ホームページhttp://www.jpeds.or.jpの会員専用ページに掲載)

12) 全国保健所長会：結核の予防接種(BCG)の開始時期等について(結核予防法第13条に基づく「保健所長の指示」に関する参考資料), 2004(全国保健所長会ホームページから入手可能→http://phcd.jp/oshirase.html)

13) 近藤克則：医療費抑制の時代を超えて―イギリスの医療・福祉改革. 医学書院, 2004

14) Aday LA, Begley CE, Lairson DR, et al: Evaluating the healthcare system-Effectiveness, Efficiency, and Equity, 2nd ed. Health Administration Press, Chicago, 1998