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特集 子どもを守る
少年事件と児童精神医学
著者: 山崎晃資12
所属機関: 1目白大学人間社会学部 2臨床児童精神医学研究所
ページ範囲:P.588 - P.591
文献購入ページに移動例えば,「長崎男児誘拐殺人事件」(2003年7月,中学1年生の男児が4歳の男の子を立体駐車場のビルから突き落として殺害した),「河内長野市家族殺傷事件」(2003年11月,18歳の男子大学1年生が家族を包丁で刺し,母親は死亡し,父親と弟は重症を負った.家族を殺して交際中の女子高校1年生と一緒に暮らそうと考えたという),「東京都少女監禁事件」(24歳の男性がチャットで知り合った18歳の女性を3か月以上監禁し,2005年5月に逮捕された),「山口県高校爆破事件」(2005年6月,高校3年男子生徒が自作の爆弾を教室に投げ込み,58人が重軽傷を負った.いじめられたことを恨みに思ったという),「母親毒殺未遂事件」(2005年10月,高校1年女子生徒が母親に毒物を飲ませて殺害しようとした疑いで逮捕された),「秋田小1男児殺害事件」[2006年5月,小学校1年生の男児が町営団地で行方不明となり,翌日,6km離れた河沿いの草むらで遺体が発見された.4月に水死体で発見された女児(9歳)が「事故死」として扱われた近所の女性が容疑者として逮捕された]などが次々と起きている.
これらの少年事件をみていると,子どもが加害者であることもあり,被害者であることもある.さらには加害者も被害者も子どもである場合がある.誰しもがすべての子どもの幸せを希求しているが,現代社会には子どもたちを犯罪に巻き込む環境的要因が氾濫している.
最近,政府による「少年非行対策のための提案」,東京都による「子どもを犯罪に巻き込まないための方策」が相次いで緊急提言された.わが国の将来を担うべき子どもたちの健全な育成をいかに実効性をもって行うことができるかが,厳しく問われている.
本稿では児童精神科医の立場から,少年事件に関連する諸問題を整理してみたい.
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