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特別寄稿
鳥インフルエンザA(H5N1)の現状と日本の新型インフルエンザ対策の課題
著者: 押谷仁1
所属機関: 1東北大学大学院医学系研究科微生物学分野
ページ範囲:P.696 - P.700
文献概要
インフルエンザウイルスA(H5N1)(以下H5N1と略)による鳥インフルエンザの流行はアジアのみならず,ヨーロッパ・中東・アフリカにまで広がり,これとともに人での感染も,世界各地で継続的に起きている.まず,これまでのH5N1の流行拡大の経過を時系列に従って振り返ってみたい.
今回の一連の流行において,公式の報告としては,2003年の12月に韓国から家禽類で流行の報告があったのが最初である.しかしそれ以前に,おそらく2003年の半ばまでには,アジアのかなり広い地域で家禽類での流行がすでに起きていたと考えられている.2004年に入るとアジア各国からも家禽類での流行が公式に報告されるようになり,2004年2月の始めまでに8か国(韓国・ベトナム・日本・タイ・カンボジア・ラオス・インドネシア・中国)での感染が確認されることとなる.この流行の時期に一致して,ベトナム・タイの2か国で人でのH5N1の感染も相次いで報告されることになる.その後,いったん流行は下火になるが,2004年6月から7月にかけて,中国・インドネシア・タイ・ベトナムなどの国で再び家禽類での感染が報告されるようになり,8月にはマレーシアから最初の流行が報告される.韓国・日本・マレーシアの3か国では,流行は一部の養鶏場などに限られており,迅速な対応をすることにより封じ込めに成功したが,その他の国では初期対応に失敗し,ウイルスが広範囲に拡散してしまい,その後も流行が継続することになる.
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