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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生71巻1号

2007年01月発行

文献概要

特集 がん対策・1 がん登録の意義と課題

1.がん登録の意義とその有効活用例

著者: 祖父江友孝1

所属機関: 1国立がんセンターがん対策情報センターがん情報・統計部

ページ範囲:P.27 - P.30

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はじめに

 「がん対策基本法」の成立により,わが国においても国および都道府県レベルで,がん対策に取り組む方向性が明文化された.諸外国を見ても,国が主体となってがん対策に取り組むことにより,すでにがん死亡率の減少などの大きな成果を上げつつある国がある.

 WHOも国家的がん対策プログラム(National Cancer Control Programme)の推進を提唱している.その目的とするところは,第一に,がんの罹患率と死亡率を減少させることであり,第二に,がん患者とその家族のQOL(quality of life)を向上させることである.予防・早期発見・診断・治療・緩和ケアからなる一連のがん対策において,証拠に基づいた戦略を系統的にかつ公平に実行し,限られた資源を効率よく最大限に活用することにより,上記2つの目的を達成させることが,その内容である.

 こうした考えの背景には,がんという疾患が不治の病ではなく,ある程度コントロール可能になったという認識がある.現在の知識を駆使すれば,がんの1/3は予防可能,さらに1/3は早期発見により救命可能,残り1/3は,適切な治療とケアによりQOL向上可能である.具体的には,たばこ対策,がん検診,医療の質の均てん化が対策の柱となり,これらを系統的かつ公平に実行し,限られた資源をいかに効率よく活用できるかがポイントになる.しかるに現況では,組織・機器・情報が多様化する一方で,相互の連携が希薄化しており,類似した組織・計画・施設の重複,類似分野で異なる規準など,資源を有効かつ効率的に利用できているとは言い難い.国・地域・組織の様々なレベルで,関係機関・関係者が統合された意思のもとに活動を進める必要があり,そのための枠組みが,国を単位としたがん対策プログラムである.

 このがん対策を正しく方向付けるには,がんの実態を正確に把握する必要がある.がん登録はがんの実態を把握するための中心的な役割を果たし,がん対策を実施する上で必須の仕組みである.逆に,がん対策を実施しないのであれば,がん登録を強力に整備する必要はない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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