icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生71巻10号

2007年10月発行

雑誌目次

特集 感染症の危機管理―関連法規改正後の新たな展開

フリーアクセス

ページ範囲:P.813 - P.813

 感染症の予防及び感染症患者の医療に関する法律(以下,感染症法)が大幅改正され,平成19年4月(一部は6月)に施行となりました.今回の改正では,①生物テロ等の防止をも視野に入れた病原微生物等の適正管理体制の確立とその法的整備,②最新の医学的知見に基づく感染症の分類の見直し,および③結核予防法を廃止して結核対策も感染症法に組み入れること,などが大きな論点となりました.検疫法および予防接種法等の関連法規の改正を伴う大きな制度改革と言えます.

 一方,世界的に見ても生物テロや新興・再興感染症等による健康危機の脅威が増大していることなどを背景にして,平成17年5月のWHO総会で国際保健規則(IHR)の改正が採択され,改正感染症法の施行と同時期に発効となります.その意味でも今年は,わが国における感染症の危機管理体制を世界標準のレベルに高めるための重要な年と言えるでしょう.

感染症法の改正について

著者: 厚生労働省健康局結核感染症課

ページ範囲:P.814 - P.819

 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律(以下,「改正法」)は,平成19年4月1日にその一部が,同年6月1日に全体が施行されたところである.今回の改正法は,病原体等の管理体制の確立や,最新の医学的知見に基づく感染症の分類の見直し,結核予防法を廃止して感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(以下,「感染症法」)及び予防接種法に必要な規定を整備した上での統合,人権を尊重するという基本理念に基づく各種手続きの見直し等,新たに規定された事項を含め,多岐にわたる改正内容となっており,本稿では,改正の背景と立法経緯及び主要な改正内容を概説することとしたい.

感染症の危機管理はなぜ必要か?

著者: 倉田毅

ページ範囲:P.820 - P.823

はじめに

 “危機管理”という語は,この数年大流行語となった.2001年の米国ニューヨークでの貿易センタービル破壊テロ(9月11日),その後23日して発生した米フロリダからワシントン,ニューヨーク等に拡大した郵便物を媒体とした炭疽菌テロは,世界中に“健康の危機管理”,“感染症の危機管理”なる語を,止まることのないシャワーのように巻き散らす元となった.危機管理とは,語ることではない,対応マニュアルを作ればよいということのみではない,具体的にどう対応すべく動いていくか,動かすかである.机上に積んだマニュアル,ガイドラインの山は,そのままでは何の意味もない,その内容をどう日常的に実践させていくかである.

 感染症対策の中心は厚生労働省と,実践部隊は,感染症法がそうならば,地方自治体にあるわけで,その指揮系統は,警察庁,消防庁等における指令が瞬時に国々の末端まで及ぶのに比べ,大きく異なっていると言えよう.その違いが各自治体間に大きな質的格差を生むことにつながってはいないだろうか?

国際貿易の自由化と感染症の危機管理―新しい国際保健規則IHRの意義を求めて

著者: 松延洋平

ページ範囲:P.824 - P.830

はじめに:国際貿易と国際保健・公衆衛生にかかわる課題の背景―公衆衛生・食安全にかかわる展開と課題

 世界保健機関(WHO)が2005年5月の年次総会で採択した改正国際保健規則が,この2007年6月15日に発効した.画期的な内容の法制度のもとに国際保健へ取り組む体制として大きな変革を求めるこの規則は,世界の公衆衛生を抜本的に転換するものである.のみならず,国際貿易のあり方に決定的な影響をもたらす可能性を持つものである.国際保健・公衆衛生と国際貿易とは,その緊張関係は最近のSARSなどの新興感染症の発生以来特に高まってきたが,それがここに新たな段階に入った.

 「国際貿易が盛んになれば,国も人も富み,そして豊かになった国力の元で国民の環境,栄養状況等が改善され,公衆衛生や食品安全も自ら向上してくる」

改正感染症法に基づく結核対策の課題と展望

著者: 森亨

ページ範囲:P.831 - P.835

 1999年の「結核緊急事態宣言」以来の見直しを経て,2005年には結核予防法大幅改正が行われた.そしてその施行段階で浮上した問題から,急遽結核予防法の感染症法への統合が提起され,2007年から施行の運びになった.結核予防法改正は,いわば低蔓延状況への技術的対応を縦糸に,人権や地方自治,EBM等の理念を横糸にするものであったが,それの重要性は感染症への統合においても変わらない.むしろ,改正感染症法には,急性感染症を主たる対象としてきた感染症法の中に,これと対応のかなり異なる(登録や患者管理,定期検診などといったユニークな事業を含んだ)旧結核予防法の規定がかなりの部分そのまま取り込まれており,その意味ではこれまでと比べて大きな変化はないとも言える.しかし,結核予防法廃止前後からのいくつかの問題を契機として,法の運用に関する新規の規定や未確定の問題が種々顕在化しており,それらへの現場の対応如何によっては,結核対策の大きな障害となる可能性もある.

 今後の結核対策の重い視点を2つ挙げるならば,①感染症としての結核への対応の強化,②健康格差対策,であろう.①は当然と思われるかもしれないが,これまでの日本の結核対策では,伝統的に健康問題としてあまりにも大き過ぎるという観念から見失われがちな点であった.今回の感染症法との統合では,それが形式的にも明確になったことは(強制力などの次元でではなく),統合のメリットと言える.その具体的な事業の柱は,(ⅰ)日本版DOTSによる確実・良質な医療の確保(これによる患者QOLの改善,感染機会の低減,多剤耐性結核の予防)であり,(ⅱ)接触者健診と化学予防の強化,である.

 本稿では(ⅱ)は次章に譲り,(ⅰ)を中心に紙幅の限度内で議論したい.

新たな結核対策と感染症危機管理機能の強化―都道府県の立場から

著者: 阿彦忠之

ページ範囲:P.836 - P.840

 結核予防法が廃止され,2007年4月からは,改正後の「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(以下,感染症法)」に基づいて結核対策が実施されている.

 この制度改革について,厚生科学審議会の感染症分科会結核部会が2002年3月に取りまとめた「結核対策の包括的見直しに関する提言」には,「将来的に結核罹患者数及び死亡数等が減少した場合には,他の感染症対策とともに一貫した対策を行うことも必要である」としながらも,「現段階では,結核及び結核対策を取り巻く特殊性に基づいて独立した対策を維持することが適当である」との基本方向が示されていた.つまり,感染症法への統合は「時期尚早」であり,当面は結核予防法のもとで対策を強化すべきという提言であった.2004年の結核予防法及び関係政省令の大幅改正は,この基本方向に沿ったものと言ってよい.

―改正感染症法に基づく新たな取り組み―①病原微生物等の適正管理の実際

著者: 杉山和良

ページ範囲:P.841 - P.844

 バイオテロやSARS実験室感染が相次いで起こる等,バイオセーフティ・バイオセキュリティの重要性が改めて認識されている.ハザードは危害要因,危険,危険のおそれのあるという意味であるが,バイオハザードは生物災害として用いられている.狭義には研究施設,医療施設等における病原体等の取扱いに起因する感染によるものを示す.バイオハザード対策のことをバイオセーフティと呼んでいる.バイオセーフティでは,病原体の管理がそもそも重要な問題であるが,今日,バイオセキュリティがクローズアップされ,法制化された.

 本稿ではバイオセーフティとバイオセキュリティの考え方,病原体等の管理体制,輸送等について紹介する.

―改正感染症法に基づく新たな取り組み―②症候群サーベイランスの意義と実際

著者: 大日康史

ページ範囲:P.845 - P.848

 従来の感染症サーベイランスの多くが確定診断に基づいて,医師が届け出るシステムであったのに対して,症候群サーベイランスは,確定診断ではなく,患者の症状に基づいたサーベイランスである.症候群サーベイランスの目的は,新型インフルエンザやバイオテロなど,あるいは新興感染症または稀な感染症において診断がつかない,あるいは診断に時間がかかることによって探知が遅れる危険性を回避し,また医師の診断が容易につく重症症状期よりも,以前の前駆症状でその立ち上がりを捉えるところにある.

 例えば,現状で天然痘の患者を診察した医師の多くは水痘と診断するであろう.また,新型インフルエンザにおいては,従来のインフルエンザと鑑別できるかどうかは現時点では不明である.このような疾患に対して症状をモニターすることによって,確定診断よりも数日,あるいは数時間でもより早く探知することができ,より早く公衆衛生的対応が開始でき,そして被害を最小化できることが期待される.情報の元となるものは患者の症状なので,医療機関だけではなく,一般用医薬品の売り上げや,学校の欠席や職場の欠勤,あるいは救急車要請・搬送の情報からも,疾患の発生状況を監視できる.

視点

ランドスケープの変化とこれからの国際協力

著者: 中谷比呂樹

ページ範囲:P.808 - P.809

 公衆衛生に従事して30年弱,その間,濃淡こそあるものの常に国際保健の動向に注意し関与してきたつもりです.しかし,15年ぶりにWHOに復帰したところ,国際保健分野は地殻変動とも言える変化が起こっていることを再確認しました.そこで,どのような地形(ランドスケープ)となっているか,これからの国際協力はどのような方向に進むのかについて,以下に私見を述べてみたいと思います.

特別寄稿

韓国の敬老堂におけるソーシャルキャピタルと健康

著者: 斎藤嘉孝 ,   近藤克則 ,   平井寛 ,   秦基南

ページ範囲:P.850 - P.853

 まちづくり型,あるいはポピュレーション・ストラテジー(population strategy)に基づく介護予防の重要性が指摘されている.しかし,その具体的なプログラムとなると,いまだ手探りの状態である.そのモデルになり得る取り組みが,お隣の国,韓国にある.それが「敬老堂(Kyungrodang)」である.

 地域在住高齢者向けの保健福祉制度である敬老堂は,全国約51,000か所に存在する施設と,そこで行われるサービスの総称である注1).韓国全土で160戸につき1つの敬老堂の設置が法的に義務化されているほどの徹底した普及ぶりで(2003年住宅法),韓国高齢者の4~5割が利用している.韓国の高齢者人口が約438万人と言われるため(2005年韓国統計局報告による),単純計算で高齢者の約86人に1か所の敬老堂が存在することになる.利用者の利用頻度も高く,ほぼ毎日,朝から行き,昼食をはさんで夕方まで居るのが基本である.後述するように,介護予防につながる各種の活動が行われている.

 本稿ではこうした韓国敬老堂を紹介しつつ,筆者らが2006年に収集した量的データに依拠し,「利用者は非利用者よりもソーシャルキャピタル(social capital)1,2)が豊かで,健康と言えるのか」を,社会疫学的に検証する.

連載 いのちのプリズム・7

つぶらな瞳

著者: 宮崎雅子

ページ範囲:P.807 - P.807

 生まれたての赤ちゃんの瞳はなぜあんなにも美しいのだろうか。

 吸い込まれるような黒い眼(まなこ)に出会うたびにいつも思う。そして、赤ちゃんってなんてすごいんだろうとその生まれ持つ力に驚嘆するのだ。

Health for All―尾身茂WHOをゆく・34

日本の医療を考える・5

著者: 尾身茂

ページ範囲:P.810 - P.811

 これまで4回にわたり,医師への過剰な負担とburn outの問題,医療の量的な課題(医師の地理的偏在・診療科的偏在),医療の質・安全面的な課題,増大する医療費の課題など,日本の医療が抱える問題について考えてきた.また,その中で,医療制度をどのように作り上げていくかについては各国が悩み模索していること,また,こうした課題にはあまりに多くの要素が複雑に絡み,どの国も簡単には解決の糸口を見つけ出すことができていないことなどを述べてきた.日本が直面しているこうした課題について,根源的な解決方法はあるのであろうか.その方向性について,今回は,いくつかの重要な点を整理してみよう.

 第一は,医師に過剰な負担がかかり,時にburn outなどが起こっている状況の中で,これを解決していくために医療関係者の“やる気”を引き出し,医療の質を高める制度の構築が必要である.この中には,専門医制度の資格の厳格化や医療関係者の生涯教育の充実などが含まれる.医療関係者自身の資質を高めることで,国民・住民からの信頼感は高まる.こうした取り組みはプロフェッショナル集団としての医療関係者自らの努力が必要である.また,診療報酬制度においては,医療の「量」は反映されているが,「質」については,まだ十分に反映されているとは言えない.これを診療報酬に反映させるような新しいフレームワークなども必要となってくるであろう.

感染症実地疫学・22

サーベイランス② 病原体サーベイランス

著者: 山下和予

ページ範囲:P.854 - P.858

 現在,わが国では1999年4月に施行された「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法)に基づく感染症発生動向調査によって感染症サーベイランスが行われている.感染症サーベイランスは患者サーベイランスと病原体サーベイランスから成り立っている.「患者サーベイランス」については前号で述べられたので,本号では「病原体サーベイランス」について,筆者が携わっている「病原体検査情報システム」を中心に述べる.

レセプト情報を活かす・7

レセプトに記載された傷病名の妥当性について

著者: 谷原真一

ページ範囲:P.859 - P.862

 レセプトに記載された傷病名に対しては,「保険病名」として懐疑的な意見を呈する者も多い.本稿では,レセプトに記載されている傷病名に関する問題点を整理し,レセプトに記載された傷病名を分析に用いる上での課題について検討する.具体的には,傷病名の決定はどのようなプロセスをたどって行われているか,という命題について確認した上で,わが国のレセプトに実際に記載される傷病名の問題点を整理する.

保健予防事業のアウトソーシング最前線・8

特定健診等の義務化への取り組み―日本アイ・ビー・エム健康保険組合

著者: 池田政弘

ページ範囲:P.863 - P.866

 平成20年4月の特定健康診査および特定保健指導の実施に向けて,詳細な実施基準や実施方法等を定めた省令や施行規則が相次いで発効され,実施責任者となる健康保険組合では,本格的な準備段階に入っています.本稿にて,当健保組合での準備の現状と今後の課題等についてご紹介します.

PHNに会いたい・2

―高知県高知市・田野町―地域リハビリテーションとノーマライゼーションの町づくりがテーマ

著者: 荘田智彦 ,   濱田知加 ,   中越美渚 ,   廣末ゆか

ページ範囲:P.867 - P.872

はじめに

 高知県は昭和23年から独自の「駐在制」を敷き,県下あまねく太平洋に浮かぶ孤島から,辺境の山々の奥地まで,保健婦たちを派遣し駐在させ,無医村,無助産婦村にも公衆衛生活動を展開しました.その保健師たちは県の保健婦の制服と,胸に「K(高知)PHN(パブリックヘルスナース)」のマークのはいったバッジを必ずつけていました.制服,バッジが消えたのは,平成6年の「地域保健法」を境にしたころだったようです.本連載〈PHNに会いたい〉の取材で高知に行った時,講演を頼まれた際,この話(今回初めて聞いた)をしましたら,親しい保健師が「私もまだ持っています」と,写真を撮って送ってくれました(写真1).黄緑の地にピンクの撫子,その上に銀で縁取られた赤い文字で「KPHN」と刻印された,直径1.8cmの丸いバッジです.

 『黒い鞄―高知県下保健婦 苦闘の記録集』(昭和60年3月,高知県国民健康保険団体連合会発行)には,高知県保健婦が全県に駐在する制度が始まって以来,県境の僻地寒村,絶海の孤島,四国のチベットと言われるような土地に駐在派遣され,命がけで保健(公衆衛生)活動に取り組んだ保健婦たちの声が綴られています.特に新人保健婦が地の果てと思えるような赴任地に初めて向かった時の不安,その地での孤独な闘いを知るにつけ,唯一彼女たちを支えた「県の保健婦」という誇りと責任のシンボルが,この制服と胸のマークであったことは想像に難くありません.どんな未知の地への赴任も「自分の地域を持つ」覚悟と熱情がどの報告にも溢れています.

 実際に保健婦たちが引き受けた困難な仕事のアイデンティティであり,それほど大事な生命線でもあったシンボルがいつの間にか消え,胸のバッジを外すことに大した抵抗もなかったところが問題でした.「保健婦(師)」の周囲に時代の大きな変化が起きていたことは確かですが,その変化(公衆衛生→地域保健)をやすやすと受け入れてしまった保健婦側にも,すでに「PHN」としての使命感や心構えが希薄になってきていたのだと思います.しかし,ここでもう一度このバッジを机から出して眺め直している保健師たちがいます.

 写真を送ってくれた保健師の合併町では今春から,新採保健師の名刺に“phn”のロゴを入れた名刺をプレゼントすることにしました.もちろん大事なのは形ではなく精神ですが,当たり前に誇りを持って「私はパブリックヘルスナースです」と,若い力が名乗れるときがまた必ず来るのではと,今回の高知取材で感じました.

楽しく性を語ろう―性の健康学・2

性への偏見と抑圧

著者: 中村美亜

ページ範囲:P.874 - P.875

 私たちの多くは,性について何か後ろめたい気持ちを持っている反面,なぜそうした後ろめたさを感じるのかと考えることはほとんどない.しかし,自分が性にどんな偏見を持っているか,普段性に関する欲望がどれほど抑圧されているかを自覚しないうちは,性についてまともに考えることなどできない.前回触れたように,ほとんどの学生は性に否定的なイメージを持っている.そのため,こちらが正確な情報を与えたとしても,それを吸収する時点で屈折して理解される可能性が高い.「でも世間ではそう考えられていない」と混乱したり,「そうは言っても,これは人と話せることではない」といった具合に,学生の頭の中で性の“安全装置”が作動し始めるからだ.そこで,第2回の本稿では,いかに私たちの社会には性に対する偏見や抑圧が蔓延しているか,そしてそれに私たちがどれほど影響されているかについて考えていこうと思う.

 いきなり抽象的な話をしても学生はついてこないので,まず映像を見て自分たちの性への反応を客観的に観察することから始める.今回は,2つの音楽プロモーション・ビデオ(PV)を使った.1つ目は,2005年のレコード大賞を受賞した倖田來未の《Butterfly》のPV.“エロかっこいい”の代名詞とも言われたPVだ.ここで,倖田はセクシーな女教師に扮し学校の廊下で踊ったり,カー・ウォッシュをしながら他の女性と戯れるなど,ステレオタイプ化された男性の性的欲望を演じる.しかし,それを堂々と行う彼女のさまは,逆に女性のかっこよさとして肯定的に映し出す効果もある.

衛生行政キーワード・36

国立高度専門医療センターの独立行政法人化について

著者: 前田彰久

ページ範囲:P.876 - P.879

 国立高度専門医療センターについては,平成22年度より独立行政法人化することが決定されているが,「国立高度専門医療センターの今後のあり方についての有識者会議」が開催され,7月13日に報告書が取りまとめられたので,その概要について報告する.

資料

日本と韓国における小児・青少年の身長・体重の動向

著者: 望月好子 ,   佐藤千史

ページ範囲:P.880 - P.884

緒言

 わが国の学童期および思春期の子どもの身体的な発育は,発達加速現象により身体発達が加速度的に増大し,一般に体格が向上していると認識されている.しかし一方では,出生時体重の減少や若年女性のやせの増加やダイエット志向などが問題視されており1,2),さらに最近では,胎児期の健康状態が成人期の疾病を作り出すという指摘なども相次ぎ3),出生時から青年期に至るまでの身長および体重の動向が,その後に続く成人期の健康にも影響を及ぼし得るものであることを改めて認識する必要に迫られている.

 日本では,文部科学省および厚生労働省によって,全国的規模での身長および体重に関する実態の調査・公表がなされているが4),人種的にも差が少ないと考えられるアジア諸国のデータと比較検討されたものはほとんどない.よりグローバルな視点から日本の変化を捉え,若年者のヘルスプロモーションを進めていく上で,小児・青少年の身長・体重の動向を近隣国のデータと比較・検討することは,基礎的な資料を得る上で重要である.

--------------------

あとがき フリーアクセス

著者: 阿彦忠之

ページ範囲:P.886 - P.886

 最高気温記録(従来は山形市の40.8℃)が,74年ぶりに更新された今夏.それでも暑かった山形での実話を1つ.某病院から「入院患者から検出された菌が多剤耐性結核菌(3種病原体)と判明した.感染症法の改正に伴い,当院では管理できないので,滅菌廃棄していいですね」という話が保健所にありました.廃棄されては困るので,保健所から相談を受けた衛生研究所が,菌の譲渡の受け入れを決定.ところが,車で20分の距離の菌の運搬でも,法令順守(運搬経路等の詳細に関する公安委員会への届出など)には予想以上の苦労がありました.さらに,感染経路等の究明のため,菌株を抗酸菌レファレンスセンター(結核研究所)に送付しようと考えましたが,法令順守の方法で輸送するには1回で15万円以上の経費が必要とわかり,その執行は保留….

 結核予防法を統合し,さらにテロ対策との関連で病原微生物等の適正管理に関する規定を新設した改正感染症法が,今年度から施行されました.しかし,本特集内で倉田先生がご指摘のように,病原微生物の管理規制の強化を感染症対策の推進に関する法律の枠内で進めるにあたっての弊害(例:病原体サーベイランスに支障)が心配されておりました.それを現実のものとして体験した夏でした.

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら