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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生71巻10号

2007年10月発行

文献概要

特集 感染症の危機管理―関連法規改正後の新たな展開

―改正感染症法に基づく新たな取り組み―②症候群サーベイランスの意義と実際

著者: 大日康史1

所属機関: 1国立感染症研究所感染症情報センター

ページ範囲:P.845 - P.848

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 従来の感染症サーベイランスの多くが確定診断に基づいて,医師が届け出るシステムであったのに対して,症候群サーベイランスは,確定診断ではなく,患者の症状に基づいたサーベイランスである.症候群サーベイランスの目的は,新型インフルエンザやバイオテロなど,あるいは新興感染症または稀な感染症において診断がつかない,あるいは診断に時間がかかることによって探知が遅れる危険性を回避し,また医師の診断が容易につく重症症状期よりも,以前の前駆症状でその立ち上がりを捉えるところにある.

 例えば,現状で天然痘の患者を診察した医師の多くは水痘と診断するであろう.また,新型インフルエンザにおいては,従来のインフルエンザと鑑別できるかどうかは現時点では不明である.このような疾患に対して症状をモニターすることによって,確定診断よりも数日,あるいは数時間でもより早く探知することができ,より早く公衆衛生的対応が開始でき,そして被害を最小化できることが期待される.情報の元となるものは患者の症状なので,医療機関だけではなく,一般用医薬品の売り上げや,学校の欠席や職場の欠勤,あるいは救急車要請・搬送の情報からも,疾患の発生状況を監視できる.

参考文献

1) 大日康史,杉浦弘明・他:症状における症候群サーベイランスのための基礎的研究.感染症学雑誌80(4):366-376,2006
2) 児玉和夫,菅原民枝,大日康史:高齢者中心の診療所における外来受診時症候群サーベイランスの検討.島根医学26(2):13-19,2006
3) 大日康史,川口行彦・他:救急車搬送数による症候群サーベイランスのための基礎的研究.日本救急医学会雑誌17(10):712-720,2007
4) 菊池清,大日康史・他:院内感染早期探知のための症候群サーベイランスの基礎的研究.感染症学雑誌81(2):162-172,2007
5) 中山裕雄,大日康史・他:外来受診時における症候群サーベイランスのための基礎的研究;1年間の運用成績.医療と社会16(4):387-400,2007
6) 大日康史,菅原民枝・他:OTC(一般用医薬品)を用いての症候群サーベイランスの試み.感染症学雑誌81(3):235-241,2007
7) 中島雪夫,児玉和夫,大日康史,菅原民枝,谷口清州,岡部信彦:新型インフルエンザ対策のための症候群サーベイランスのテスト結果.島根県医師会ニュース695:20-24,2007

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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