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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生71巻11号

2007年11月発行

雑誌目次

特集 超高齢社会の地域医療制度の展望

フリーアクセス

ページ範囲:P.893 - P.893

 特定健診,保健指導をどう進めるのか,保健事業関係者は忙しい状況にあると思います.老人保健法による保健事業は,国保や健保の保険者が行っていた疾病予防活動の実績から派生してきたものであります.今後の医療制度改革の行方を知ることは,疾病予防活動に関わる者にとっても重要であると考え,本特集を企画させていただきました.

 わが国の医療体制は,壊滅的に打撃を受けた戦後の医療資源が回復してきた昭和30年代,高度経済成長の追い風を受けて,一気に国民皆保険制度を達成することができました.さらに高齢者医療費の無料化も実現しました.

超高齢社会における医師会の役割と展望

著者: 唐澤祥人

ページ範囲:P.894 - P.899

はじめに

 高齢化は世界的傾向と言われている.わが国が超高齢社会という理由は,高齢者の増加数が顕著であることに加え少子化がまた著しいため,必然的に高齢社会が加速度的に進展することによる.

 わが国は,米国に次ぐ世界第2位の国民総生産(GDP)を維持している.これらは,終戦後の廃墟から立ち上がり,高度成長を続けてきた成果と,たゆまぬ産業の創意工夫や効率化などの賜物であろう.一方,物流や交通,情報の迅速化や拡大によって,家庭と地域の生活環境は大きく変貌したと言える.たとえば,女性が従来の家庭内生活環境から社会一般の就労活動へと進展してきたこと,食生活と公衆衛生環境の改善や医学・医療の進歩によって,旧来の感染症など多くの疾患が克服され,健康的で安全な社会環境が築かれるようになったことである.そのような環境の中,家庭では,長時間の勤労などにより親の帰宅の時間が遅く,それぞれの家族の不在時間が長くなり,子どもが取り残されるようになった.近年は複数世代の同居家庭が激減し,多くの高齢者は地域的に日常生活の場はあっても,若年世代と居住を隔てることとなった.その結果,高齢者の独居世帯,老老世帯の増加が著しくなり,各地の自然災害などでは,真っ先にこのような高齢者が悲惨な被災者となっている.

 このように子どもや高齢者は地域社会で厚遇されているわけではない.わが国が経済大国として,冠たる地位を築いてくる間に,大切なものを置き忘れてきたことに,ようやく今気づきつつある.

超高齢社会に向けた医療制度ビジョン

著者: 宮島俊彦

ページ範囲:P.900 - P.903

 遠い将来から過去を振り返った時,平成18年度の医療制度改革は,エポックメイキングなものとして取り上げられることになるだろう.医療費適正化計画の導入,生活習慣病対策の方向付け,医療計画の見直し,後期高齢者医療制度の導入,医療保険の県単位の再編などは,いずれも1つひとつが大きなテーマであり,これが一度の改正で行われたということは,いかに日本の高齢化のスピードが,医療制度のあり方に変化を迫っているかを示している.

 今後の医療制度のビジョンについては,少なくとも平成20年度から始まる健康増進計画,医療費適正化計画,医療計画の見直し,介護の整備計画,後期高齢者医療制度に触れないわけにはいかないのだが,どれ1つをとっても膨大な解説を要するし,お互いに複雑に関連し合っている.そこで,そういった個々の計画についての解説は避け,なぜこのような政策のパッケージをとることになったのか,今後,医療制度はどのような方向をたどるのかを中心に述べてみたい.

超高齢社会における地域医療を担う医師生涯教育制度の確立

著者: 矢崎義雄

ページ範囲:P.904 - P.907

 そもそも医学教育を含めた医師育成制度は,その国の歴史や文化,そして経済と社会の医療へのニーズの変化により影響を受けるところが大きい.わが国も,昭和36年の国民皆保険制度の導入と高度経済成長に支えられて,国民はきわめて少ない負担で医療サービスを享受してきた.

 しかし,最近の人口の少子高齢化と医療技術の高度化により国民医療費が増大する一方,経済成長が停滞してこれを吸収することができず,国民の医療費への負担感が大きくなった.その結果,国民の医療に対する意識が変化して,医療の評価が従来の医師主導のパターナリズムから,患者の安心,信頼,満足といった患者側の評価が重きをなすパラダイムシフトが生じてきた.すなわち,高度な専門医療のみならず,幅広く患者の抱える問題にしっかり対応できる医師の育成が社会的にも大きな課題となった.

 さらに,人口の都市部への流入と首都圏の機能強化により,経済はもとより,行政サービスにおいても大きな地域格差が生じていることが指摘されている.そこで,地方には高齢者が残されて医療ニーズが高まる一方,医師,特に緊急の事態にも対応が可能な病院医師の確保が困難となり,医療における地方格差がますます拡大し,その是正が喫緊の課題として注目され,今日では行政を含めた対策が最大の焦点になっている.

 このような医療を取り巻く社会的な環境変化を背景にして,卒前の医学教育を中心に医師育成システムの抜本的な改革が求められている.

安心と安全の地域医療を担保する医療制度の再構築

著者: 濃沼信夫

ページ範囲:P.908 - P.913

医療問題の根源

 今日,医療の諸問題は,これまでにないほど社会的な関心を集めているが,医療問題の根源は,①少子高齢化・経済低成長と,②過度の量的拡大の2つに大別できる.前者は,医療を巡る外部環境の変化である.高齢者が急速に増加することで医療費支出が増大する一方,生産年齢人口の減少で経済成長は低迷し,医療財源の逼迫は避けられない.

 わが国の財産と言うべき国民皆保険制度は,21世紀の相当長期にわたり財政破綻の危機に晒され続けるが,これには対症療法で対応するしかない.人口構成は半世紀,四半世紀というスパンで変化する.少子高齢化という上り坂にも峠があり,いずれ下り坂に転じる.時間が解決してくれるのを辛抱強く待つのが,最も確実な手立てである.

地域包括医療をめざす公立病院の現状と課題―尾道市公立みつぎ総合病院の現状を中心として

著者: 山口昇

ページ範囲:P.914 - P.919

 昨今医療を取り巻く環境は急激に変化し,市町村合併,医療制度改革,介護保険制度改革,新医師臨床研修制度に伴う医師確保難等により,大きな影響を受けている.中でも公立病院の現状はこれらに経営難も加わって,非常に厳しいものが見られる.

 公立みつぎ総合病院は尾道市の北部御調町にあり,御調町を中心とした診療圏域人口約7万人の地域の中核的総合病院である.この病院を核として寝たきりゼロ作戦が実施されてから30年,保健・医療・介護・福祉の連携による地域包括ケアシステムが構築されてからはや20年が経過した.

 当病院が実践している地域包括医療および地域包括ケアシステムの構築は当病院の理念であり,これらも今回の市町村合併,医療制度改革等の影響を大なり小なり受けている.本稿では,その状況およびこれらをどのようにしてクリアしてきたか等について述べる.

地域におけるチームケアの課題―看護職の立場から

著者: 山崎摩耶

ページ範囲:P.920 - P.923

 わが国の高齢化率はすでに20%を超えたが,中山間地・過疎地においては40%を超えているところもあり,すでに厳しい社会構造の変化が見られている.とりわけ生活に密着した地域医療や介護の問題は,地域によってその格差が拡大している状況が浮き彫りになってきた.しかし今後は,都市部での急速な高齢化の進展と,一方で過疎化の進行,そしてひとり暮らしの増加が見込まれており,特にインフラ整備の整っていない都市部での地域医療体制は大きな課題を抱えることになると予測される.

 そのような中で,低迷する少子化と相まって,年金・医療・介護といったいわば社会保障制度は変革の転換点にあるが,医療制度改革・介護制度改革の方向を間違えば医療崩壊の危機は免れない.特に保険財源確保が先にありきのような「後期高齢者医療保険制度」の創設や,療養病床削減等による「地域ケア体制整備構想」などが進められているが,これらが高齢者のための真の地域医療の確保策になるのか,異論もないわけではない.

 誰もが等しく年をとるが,あまねく高齢期は健康長寿でありたい,たとえ要介護状態になっても死の瞬間まで自分らしく,生き生きとWell-Beingな状態でQOLを確保し自己実現を図りたい,という願望を持つ.

 そして時代の要請は,すでに高齢者医療に「医学モデル」から「生活モデル」への転換を余儀なくしており,その中で,看護職はまさに“ライフサポーター”として,予防からターミナルケアまでマネジメントし,ケアできるようなトータルな役割が期待されていると言える.保健医療介護の制度改革は看護職にとっても,これまでの実践に依拠しつつも“新たな価値と信頼の創造”という局面だととらえることができるのである.

 超高齢社会こそ看護の時代,そしてチームケアの時代ではないかと思うゆえんである.

 本稿では医療や介護制度改革の中で変化する看護職の役割を整理し,地域医療を推進するチームケアについて,筆者が視察したデンマーク・フランスの地域医療提供体制を紹介しながら,わが国の今後の課題について見ていきたい.

わが国の地域プライマリケア体制の構築

著者: 池上直己

ページ範囲:P.924 - P.927

今,なぜプライマリケアか?

 プライマリケアに対する関心は,75歳以上の高齢者に対して2008年度に高齢者医療制度が創設され,こうした状況下で総合的に診る医師の必要性を鑑みて,「総合医」を新たな標榜科目として設け,その教育を支援したいと表明した辻前事務次官の講演により一段と高まった1).確かに高齢者は複数の病気を持っていることが多く,入院の場合と同様に,在宅においても主治医を決め,処方や検査の指示を一元的に管理するメリットは大きく,総論として異論はないであろう.

 しかしながら,現状では患者は,例えば高血圧症は内科医,腰痛は整形外科医,白内障は眼科医をそれぞれ受診しており,このうちの1人の医師が主治医として医学的管理の責任を持たせようとしても,他の医師の診療に介入することに躊躇するであろう.また,仮に「総合医」が将来実現できたとしても,内科以外の整形外科や眼科等の診療所医師,および病院,特に中小病院の医師が現在果たしている役割を十分に考慮する必要がある.

 本稿では医療制度改革によって構築される新しい枠組みの中で,地域プライマリケア体制を整備するための課題を整理する.具体的には,各都道府県における医療費適正化計画は,医療計画,健康増進計画,介護保険事業支援計画の3つの計画が整合性を持って達成されることになっているので,これら3計画ごとに,プライマリケア医の役割について,諸外国における状況を参照しながら検討する.

視点

大阪から,公衆衛生の古くて新しい風を―たかが保健所,されど保健所

著者: 髙山佳洋

ページ範囲:P.888 - P.889

 地方分権の時代,理念の上では医療は都道府県,福祉は市町村が企画調整の主役になったと言う.しかしながら,医療制度改革,介護保険制度改革,障害者自立支援法による障害保健福祉施策の改革という嵐の中で,地域の公衆衛生の現場は行革による統廃合や人員削減,厳しい財政状況の中にあって戸惑いながらも,新しい活路を見出すべく苦悶している.この大きな試練の下で,都道府県と市町村の地域保健行政は実力が試されている.地域保健法で枠組みが見直された保健所と市町村のあり方や形の良し悪しが真正面から問われている.激動の時代でフットワークの良い動きが求められているのだが,予算や人員の制約が大きく手詰まり感も強い中で,「保健所に期待する」と言えば,保健所経験者故の思い込みと大方の顰蹙(ひんしゅく)を買うであろうか? “たかが保健所”であるが,過去から現在へと大阪の公衆衛生における経緯をたどり,さらにこの先に向かって見えてくるもの,模索するべきものから,“されど保健所”と,改めて考えてみたい.

特別寄稿

米国における鍼灸師とパブリックヘルス(上)

著者: 中野佐智子

ページ範囲:P.929 - P.933

パブリックヘルスに入ったきっかけ

 1995年にアメリカの鍼灸学校を卒業して鍼灸資格を取得し,今年で13年目に入ります.私の卒業した鍼灸学校は,ワシントン州シアトル市にあるNorthwest Institute of Acupuncture and Oriental Medicine(以下,NIAOM)です.当時の学長夫妻はアフリカやインドで長年の生活経験があり,そのことが反映していたのかもしれません.この学校のスチューデント・クリニック(学生が患者に鍼灸を行うクリニック)は低額であり,スライディング・スケール(収入により治療費が異なる)もあり,それでも治療費が払えない患者には学校内の植物の世話仕事と治療の交換を提供していました.非常に一般庶民に親しみがあり,治療の必要な人には「ノー」とは言わない,コミュニティを大切にする学校でした.

 私がこの鍼灸学校にちょうど入学する頃,11歳の男の子に出会いました.彼は8歳の時に父親を病気で亡くし,その後は母親と義理弟と3人で暮らしていました.しかし母親はコカイン常習者で罪を犯し,2年ほど刑務所に行くことになりました.楽しい少年期を奪われ,それにまつわる問題を抱えながら毎日生活をする彼の姿は,私に衝撃を与えました.残念ながらこの子のような話は,アメリカでは稀ではないのです.私が鍼灸学校2年生の時,鍼灸学生の友人から薬物依存症の治療を主に行っている団体のことを知らされました.その時,私もその団体に入り治療法を身につけることにより,鍼灸師として多くの人を救うことができる,その道に行きたいと希望と喜びに満ちたことは,今でもはっきり覚えています.

連載 いのちのプリズム・8

祖納の節祭

著者: 宮崎雅子

ページ範囲:P.887 - P.887

 紅白の旗をさした二艘のサバニ(ユークイ舟)がゆっくりと沖に漕ぎ出てゆく.舟子と呼ばれる漕ぎ手たちが歌を歌いながら静かに櫂を挙げては降ろし,沖のアムリソーヤと呼ばれる石に向かっている.

 ドラの合図で一斉に競争が始まり2艘は波しぶきをたてながら浜との間を往復する.そして,最後に沖の小島まるまぼんさんを目指して力いっぱい漕ぎ続ける.

Health for All―尾身茂WHOをゆく・35

WHO地域委員会―2007年9月10~14日,済州島

著者: 尾身茂

ページ範囲:P.890 - P.891

 さて,今回は,今年9月10~14日まで,韓国の済州島で開催されたWHO西太平洋地域委員会(Regional Committee Meeting;以下RCM)について話そう.

 WHOは世界を6つの地域に分け,それぞれに各国が所属し地域事務局を置いており,本部の統治機構に加え,6つの各地域にもそれぞれ統治機構が存在している.各地域の事務局長をRCMで選出することになっており,その事務局長のもとで各地域事務局が地域の加盟国の保健問題に取り組んでいるのである.ちなみに,私も1998年にマニラで開催されたRCMで選出をされた.

感染症実地疫学・23

サーベイランス③ 介入につながった実例―風疹・先天性風疹症候群対策

著者: 多田有希

ページ範囲:P.934 - P.938

 前号まで2回にわたり,患者サーベイランスと病原体サーベイランスの実施状況を紹介した.今回はサーベイランスが対策につながった実例として,2004年に取り組まれた風疹・先天性風疹症候群に関する対応を紹介する.サーベイランスで収集されたデータの解析から,国としての対策の必要があると判断され,緊急に研究班が立ち上げられて,対策を立案,実行したものである.

レセプト情報を活かす・8

レセプトにおける匿名化名寄せ技術と傷病名辞書

著者: 木村真也

ページ範囲:P.939 - P.942

 診療報酬請求明細書(以下,レセプト)をデータとして利活用する場合の技術的課題には,個人情報に係わるデータ処理から生じるもの,医療情報としての特性から生じるものなどいくつかあると思われる.とりわけ,前者については個人情報保護の問題と個人データの名寄せという相反する関係をどのように解決するか,後者についてはレセプトの傷病名をICD10等の疾病分類に変換する場合によく行われる,補記作業におけるデータの再現性をいかに確保するかという課題が重要である.本稿では,これまでレセプトを大量にデータベース化してきた筆者らの経験から,これらの課題に対応する方法論とポイントを述べたい.

保健予防事業のアウトソーシング最前線・9

経済産業省の健康サービス産業の発展に関する取り組み

著者: 中嶋直樹

ページ範囲:P.943 - P.947

 戦後,わが国は高い経済成長に支えられ,国民1人ひとりの生活水準が向上し,公衆衛生,医療技術などが進歩したことにより長寿化が進展し,男女とも世界最高レベルの平均寿命になった.また,所得の向上によって健康への意識の高まりが見られるようになった.

 このような中,経済産業省では,平成16年5月に今後の新しい産業政策指針として「新産業創造戦略」を策定し,健康サービス産業を新産業創出のための重点7分野の1つとして位置付け,モデル事業等を実施して,その創出に戦略的に取り組むこととした.

PHNに会いたい・3

愛知県―ホームレス自立支援対策と保健師の健康支援

著者: 荘田智彦 ,   阿部早苗 ,   愛知県医療福祉計画課地域保健グループ

ページ範囲:P.948 - P.955

 「あなたたちは法律がないと仕事ができないのか」という事務方からの指摘を,もっともな感想として連載第1回の鎌倉市の報告を書きました(本誌71巻9号791~795頁).ただ,この法律というものがなかったら,たぶん,県も保健所も,当然保健師も動かなかったに違いない事業もあります.

 今回は,愛知県保健所保健師が全国に先駆けて取り組む「ホームレス自立支援のための健康支援事業」について報告します.

楽しく性を語ろう―性の健康学・3

セックスとは何か?

著者: 中村美亜

ページ範囲:P.956 - P.957

 セックスとは何か?―これは個々人の考え方の違いによるところも大きく,真剣に考え出すと哲学的な問題へと深入りし泥沼にはまってしまう.なので,ここでは1つの答えを導き出そうとするのではなく,普段何も考えずに行動に移しがちなセックスについて立ち止まって考え,少しでも主体的・意識的にセックスができるようになるきっかけを作ることを目的とする.

 セックスという行為は,自分や相手に及ぼす心理的・情緒的な影響が大きく,人生設計や健康問題,人の命にも関わる重要なものである.にもかかわらず,それを何のためにするのか,それがどういう意味を持ち得るのかといったことについて,誰かと話し合ったり,自分で深く考えたことのある学生は少ない.

衛生行政キーワード・37

科学技術の振興及び成果の社会への還元に向けた制度改革について―治験を含む臨床研究の総合的推進(総合科学技術会議)

著者: 三田晃史

ページ範囲:P.959 - P.962

研究開発投資の現状

 国全体の研究開発投資の水準を示すものとして,研究費の国内総生産(GDP)に対する比率がある.わが国の研究費総額(政府,民間を含む)のGDPに占める割合は3.55%(平成17年度)であり,主要国中(米国2.68%,英国1.73%,フランス2.13%等)で最高水準を維持している※1が,政府の研究開発投資のGDPに占める割合は0.79%(平成17年度)であり,主要国中(米国1.08%,英国0.81%,フランス0.82%等)で低い値となっており※2,わが国では研究投資への民間活力が旺盛であることが窺える.

 一方,政府はライフサイエンス分野を,重点的に研究開発投資を行う4分野のうちの1つと位置付け,平成19年度科学技術関係予算の約3.5兆円のうち,3,154億円を充当している.

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あとがき フリーアクセス

著者: 高鳥毛敏雄

ページ範囲:P.964 - P.964

 1978年にアルマ・アタで行われたWHOの会議において,保健医療の潮流として途上国,先進国を問わずプライマリ・ヘルス・ケアを目指すとの宣言がなされました.これが有名な「Health for All」であります.わが国の国民健康づくり運動もこの流れを受けてはじまったものです.地域に,保健,医療と住民との活動の場として保健センターを設ける.保健センターに保健師を配置する.地域医療に関わる諸団体にも参画いただく.そこには新しい地域保健医療活動創出の夢が描かれていたように思います.

 この壮大な夢の実現は,今なお完成しているとは言えません.地域の人々に対して,疾病予防,健康管理,医療,在宅ケアを地域で包括的に提供するためには,地域の中にハブ的な役割を果たす組織や機能を育てていくことが必要と考えられます.英国社会においてはこの役割を長年一般医に負わせていましたが,健康づくり,疾病予防,地域ケアなどの幅広い保健医療活動を展開していくために,「プライマリケアトラスト」という組織機構に組み替える,大きな制度改革がブレア政権下で行われました.

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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