icon fsr

文献詳細

雑誌文献

公衆衛生71巻11号

2007年11月発行

文献概要

特集 超高齢社会の地域医療制度の展望

わが国の地域プライマリケア体制の構築

著者: 池上直己1

所属機関: 1慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室

ページ範囲:P.924 - P.927

文献購入ページに移動
今,なぜプライマリケアか?

 プライマリケアに対する関心は,75歳以上の高齢者に対して2008年度に高齢者医療制度が創設され,こうした状況下で総合的に診る医師の必要性を鑑みて,「総合医」を新たな標榜科目として設け,その教育を支援したいと表明した辻前事務次官の講演により一段と高まった1).確かに高齢者は複数の病気を持っていることが多く,入院の場合と同様に,在宅においても主治医を決め,処方や検査の指示を一元的に管理するメリットは大きく,総論として異論はないであろう.

 しかしながら,現状では患者は,例えば高血圧症は内科医,腰痛は整形外科医,白内障は眼科医をそれぞれ受診しており,このうちの1人の医師が主治医として医学的管理の責任を持たせようとしても,他の医師の診療に介入することに躊躇するであろう.また,仮に「総合医」が将来実現できたとしても,内科以外の整形外科や眼科等の診療所医師,および病院,特に中小病院の医師が現在果たしている役割を十分に考慮する必要がある.

 本稿では医療制度改革によって構築される新しい枠組みの中で,地域プライマリケア体制を整備するための課題を整理する.具体的には,各都道府県における医療費適正化計画は,医療計画,健康増進計画,介護保険事業支援計画の3つの計画が整合性を持って達成されることになっているので,これら3計画ごとに,プライマリケア医の役割について,諸外国における状況を参照しながら検討する.

参考文献

1) 動向,医療政策の方向性や地域ケア指針などを提示.辻事務次官の講演(要旨),社会保険旬報2314:13-14,2007.5.1.
2) 池上直己:地域医療計画の課題と新たな展開.田中滋・二木立(編):保健・医療提供制度,pp23-45,2006
3) 池上直己:医療問題―改訂3版.日本経済新聞社,2006
4) 池上直己:成熟社会の医療政策―イギリスの選択と日本.保健同人社,1986
5) 池上直己:日本の医療制度における専門医の役割.総合診療52(12):3125-3130,2003
6) 日本経済新聞:専門医の「看板」立て直せ.日本経済新聞2006年11月5日
7) 日本専門医認定制機構概報―平成17(2005)年版.日本専門医認定制機構,2006
8) U.S. Preventive Services Task Force:Guide to Clinical Preventive Services. William and Wilkins, Baltimore, 1989(pp xxiii)
9) 厚生労働省:平成16年度国民生活基礎調査.厚生統計協会,2006
10) 厚生労働省保険局:特定健康診査・特定保健指導の円滑な実施に向けた手引き.2007年7月
11) 厚生労働省:社会保障審議会,後期高齢者医療の在り方に関する特別部会(第9回)資料.pp3-1,2007.7.5
12) 石橋智昭,池上直己:介護予防施策における対象者抽出の課題―特定高齢者と要支援高齢者の階層的関係の検証.厚生の指標54(5):24-29,2007

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら