文献詳細
文献概要
連載 感染症実地疫学・25【おわりに】
連載「感染症実地疫学」を終えて
著者: 岡部信彦1
所属機関: 1国立感染症研究所感染症情報センター
ページ範囲:P.1014 - P.1014
文献購入ページに移動1996年大阪府堺市を中心とした腸管出血性大腸菌O157感染症のアウトブレイク時には,わが国には迅速に対応するサーベイランスや,現地における疫学調査を行うシステムは不十分であった.もちろん保健所においては,それまでにも食中毒等に対する疫学調査は行われており,ノウハウは培われていたが,多くの場合平常時のサーベイランスと連動し,広範に迅速に専門的に行えるものではなかった.情報センターの前身である国立予防衛生研究所感染症疫学部 井上栄部長(後の初代感染症情報センター長)は,「厚生省から疫学調査を依頼されても,それを行う人材はなく,臍(ほぞ)をかむ思いであった」と当時おっしゃっておられた.また米国CDC(Center for Disease Control and Prevention)からは,「日本で調査ができないのであれば我が方からEIS(Epidemic Intelligence Service:米国におけるFETP)を中心にしたチームを派遣しようか」という申し出もあり,厚生省担当課では対応に困惑したと聞いている.
掲載誌情報