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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生71巻5号

2007年05月発行

雑誌目次

特集 歯周病予防からのヘルスプロモーション

フリーアクセス

ページ範囲:P.375 - P.375

 歯周病は,歯周病菌によって引き起こされる「感染症」であり,喫煙や歯みがきなどの嗜好や生活習慣に関係する「生活習慣病」でもあります.わが国の成人の約70~80%が歯周病に罹患しているとも言われ,歯周病は,中高年で歯を失う最大の原因となっています.

 以前より,糖尿病などの全身疾患が歯周病のリスクファクターであることは指摘されていましたが,近年,歯周病菌が,早産,動脈硬化性疾患,糖尿病,肺炎などの様々な全身疾患を引き起こすという,興味深い研究成果も報告されています.

 本特集においては,歯周病に関する最新の知見や歯周病予防の現状と課題などを各分野の先生方にご執筆いただくことにより,歯周病と全身の健康との深い関係について,広く公衆衛生従事者にご理解いただき,今後いっそう,「口腔保健」活動が,トータルヘルスプロモーションの一環として実施されていくことを期待するものです.

歯周病予防の視点からヘルスプロモーションを考える

著者: 中村譲治

ページ範囲:P.376 - P.380

 オタワ宣言から20年余が過ぎた.もはやヘルスプロモーションのなんたるかを語る時代は過ぎ,各々の現場で推進してきたヘルスプロモーションを検証する時期に来ている.禅語に「回光返照」という言葉がある.外に向かって探求しようとする心を,自分の内側に向け返して自分を照らすことをいう.今までの口腔保健活動の経験から得られた視点でヘルスプロモーションを眺めてみたら,何が見えるのであろうか.口腔保健はヘルスプロモーションにおいてどのような役割を担い,何が期待できるのであろうか.

 本特集では,歯周病の予防活動を通して得られた観点や,歯周病と全身の関連の知見から,ヘルスプロモーションを眺めてみる.

地域保健における歯周病予防の取り組み

著者: 大西宏昭 ,   今西秀明

ページ範囲:P.381 - P.387

 平成17年12月に示された「医療制度改革大綱」の基本的な考え方の1つとして,「安心・信頼の医療の確保と予防の重視」が掲げられ,国民の医療に対する安心・信頼を確保し,質の高い医療サービスが適切に提供される医療提供体制を確立するとともに,今後は,治療重点の医療から,疾病の予防を重視した保健医療体系へと転換を図っていくこととなった1)

 患者の視点に立った,安全・安心で質の高い医療が受けられる体制を構築するため,「良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律」2)が制定され,①都道府県を通じた医療機関に関する情報の公表制度の創設など情報提供の推進,②医療の安全を確保するための対策の推進・医療従事者の資質の向上(行政処分後の再教育の義務化等)等の措置が講ぜられることとなった.

歯周病とメタボリックシンドローム

著者: 山下喜久

ページ範囲:P.388 - P.392

 最近ではテレビのコマーシャルでも「歯周病」という病名を頻繁に耳にするようになり,この病名の巷での認知度は随分と上がっている.しかし,歯医者と聞けば,歯を削る甲高い機械音とそれに伴う痛みの連想がいまだに根強いようである.実際,歯周病の自覚症状や治療方法等,その具体的な実態を何人の人が思い浮かべることができるだろうか.自らの口の中を覗くことは難しく,仮に覗くことができても,歯科医師ですら視覚のみではこの病変の正確な把握は困難であり,このやっかいな疾病の実態は知名度ほどには十分に世に広まっているとは言えない.さらに,この疾病は進行に伴う痛みが少ないことも相まって,罹患者の大部分が自分には縁のないものと思い込んでいる(思い込みたい?)ことが,この疾患の対策をよりいっそう複雑なものにしている.本誌の読者も決して例外ではなく,これを機に,一度歯科医院に受診されることをお勧めしたい.

 一方,「メタボリックシンドローム」は昨年の流行語大賞のトップテンにランクされており,医療関係者ならずともこの言葉を知らぬ者はいないと言っても過言ではない.昨年の6月に医療制度改革法案が参議院で可決されたことを受けて,平成20年4月からはメタボリックシンドロームに重点を置いた健診制度の開始が各医療保険者に義務づけられたことから,今後ますます多くの予算が費やされた「メタボリックシンドローム」関連の保健事業が動き出すことは必至である.昨年に逃した流行語大賞を今年は奪回することも予想される.いずれにせよ,お腹に巻いたベルトに象徴される内臓脂肪型肥満と,血圧値や血液検査の結果から得られる空腹時血糖値,HDL-コレステロール値,中性脂肪値などは,どれも生活習慣病との関連が理解しやすく,今後これらのパラメーターを束ねた「メタボリックシンドローム」が,生活習慣の在り方の指標として人々に定着することは予想に難くない.

歯周病と心疾患

著者: 坂本春生

ページ範囲:P.393 - P.395

 歯周病は,歯と歯肉の境目にある歯周ポケットの慢性嫌気性菌感染症である.歯周ポケットには数多くの嫌気性菌が相互に連絡しあって構成する粘着性のバイオフィルムがあり,生体内の免疫から巧みに自己を守っている.歯周病局所におけるバイオフィルムとそれを構成する嫌気性菌は,近年,心疾患,糖尿病,低体重児出産などとの関連が指摘されるようになってきた.

 歯周病菌が生体に影響を及ぼす過程としては,細菌自体が生体内に侵入する場合と,細菌の産生する物質(内毒素,サイトカイン)が入り込む場合がある.バイオフィルム内には大量の細菌が生息しており,何らかのきっかけによって,生体内へ侵入し,それぞれに適した部位に到達すると疾患を惹起することが可能である.しかし,実際に「病巣感染」と呼ばれたこれらの遠隔部位における疾患のメカニズムが明らかになってきたのは,分子生物学的手法の進歩が著しいごく最近のことである.

 本稿では,心疾患に関連した話題として,「感染性心内膜炎」と「冠動脈疾患」について,歯周病細菌との関連を中心に記載する.

歯周病と呼吸器疾患

著者: 米山武義

ページ範囲:P.396 - P.399

 要介護高齢者の直接的死因の上位に位置する誤嚥性肺炎は,介護,医療の現場で大きな問題として取り上げられている.これは食物や口腔細菌を含む口腔・咽頭の分泌物を誤嚥(吸引)することにより引き起こされるといわれているが,一般的に在宅や施設に入所する高齢者の口腔内は,極めて口腔衛生状態が悪く,歯がある場合はほぼ例外なく歯肉炎ないしは進行した歯周病に罹患している.また,義歯がある場合も義歯の衛生管理がなされていないのが実状である.

 しかし近年,口腔ケア,すなわち口腔衛生状態を改善することによって,本疾患の予防の可能性を示唆する研究報告がなされた1,2).しかしながら,要介護者の置かれている状況は様々であり,いまだ多くの課題を抱えている.そして在宅における歯科診療を含め,真剣に解決しなければならない課題を有している.

 本稿では歯周病との関連において,老人性肺炎,特に誤嚥性肺炎の発生機序と予防について取り上げる.

妊娠期の歯周病

著者: 品田佳世子

ページ範囲:P.400 - P.404

 妊娠期は,女性にとって,新しい命を宿し,育む,大切なライフステージです.1965(昭和40)年から2005(平成17)年までの日本における合計特殊出生率(15~49歳の女性が,一生に産む子どもの概数)の推移1)を図1に示します.日本では,1975(昭和50)年に2.00を下回ってから減少の一途をたどっており,2005年には1.26と最小値を示しました.このままでは,日本の人口は減り続けると危惧されています.

 近年,妊娠期の歯周病が早産や低体重児出産と関連があるとの報告が相次いでいます.本稿では,これらの報告をわかりやすく概説するとともに,女性が安心して子どもを産み,育てられるための口の健康情報も提供します.

歯周病予防における口腔ケア

著者: 河野晴美 ,   笹川百吏子

ページ範囲:P.405 - P.408

歯周病予防から全身の健康へ

 口の中は硬組織である歯や骨と,軟組織である舌や粘膜がバランス良く存在することで,口腔機能が維持されています.口腔機能は健康を営む上で欠かすことのできない咀嚼や嚥下,会話や呼吸などと関係する重要な働きがあります.しかし,歯周病が引き起こされると,歯を支えている周囲の組織が破壊され,重度になると歯を失ってしまうために,口腔内のバランスは崩れ,口腔機能も良好に保てなくなってしまいます.食生活の入り口となる口腔が機能しなくなると,栄養が摂れず体力が衰え,運動機能の低下から全身疾患を引き起こすことにも繋がり,健康と密接に関与していることがおわかりかと思います.

 また歯周病は,大人だけの口腔疾患と思われがちですが,歯周病の初期である歯肉炎に罹っている子どもは多いものです.子どもの時期からの口腔ケアは,健全な身体発育にも大きく影響し,罹患率の高まる成人期から老年期に安定した食生活が保てるように,早期からの関わりとライフステージに合わせた口腔ケアが重要になります.

職域における歯周病検診

著者: 品川隆

ページ範囲:P.409 - P.412

生活習慣病としての歯周疾患予防

 2000年に厚生省によってまとめられた「健康日本21」において,歯科疾患は,糖尿病や循環器疾患と共に生活習慣病と位置づけられた.成人期の歯周疾患予防の目標としては,40歳,50歳における進行した歯周炎罹患者(4mm以上のポケットを有するもの)を3割低下させることが挙げられた.具体的な方法としては,歯間部清掃用具(デンタルフロス,歯間ブラシ)を使用すること,喫煙の健康影響についての知識を普及すること,定期的な検診および歯石除去,歯面清掃と自己管理である.歯周疾患予防により成人期に急増する歯の喪失を防ぎ,最後まで自分の口で食べられるよう「8020」を達成することが重要である.2002年には「健康日本21」が「健康増進法」として法制化された.

 現在,政府主導により「健康フロンティア戦略」が,2005年から2014年までの10年計画で,健康寿命を伸ばすことを基本として生活習慣病対策と介護予防に重点を置いて展開されている.歯周疾患による歯の喪失が咀嚼など機能的な障害につながることや,歯周疾患が慢性感染症であることを考えると,成人期からの生活習慣病としての歯周疾患予防が,摂食・嚥下障害があり,口腔ケアが必要な要介護高齢者に対する,まさに介護予防といえるのではないだろうか.

視点

歯科保健医療対策の動向

著者: 日髙勝美

ページ範囲:P.372 - P.373

 患者の選択の尊重や疾病予防を重視した保健医療体系への転換を目指した医療制度改革が進められている中,歯科保健医療の分野についても今後の方向性を検討するため,厚生労働省としては平成17年12月に「今後の歯科保健医療と歯科医師の資質向上等に関する検討会(座長:斎藤毅日本大学名誉教授)」を設置した.8回の審議(ワーキンググループの審議を含む)を重ね,平成18年12月に中間報告書(以下「報告書」と言う)がとりまとめられたところであるが,本稿においては,この報告書の内容を引用しながら,今後の歯科保健医療対策の動向について概説したい.

特別寄稿

六ヶ所村の現在から未来を展望する―日本が選んだ原発エネルギーの行方

著者: 鎌仲ひとみ

ページ範囲:P.414 - P.418

原子力立国

 六ヶ所村は本州の北端,青森県下北半島の付け根にある人口12,000人の村だ.2004年,ここに使用済み核燃料再処理工場が完成した.10年がかりの工事に投入された建設費は,2兆2千億円にも上る.日本でも最も高額の建設費が投入された建築物だ.

 この再処理工場は2006年3月31日より,本格稼動に向けた最終試験に入った.また日本政府は向こう5か年のエネルギー長期政策を決定し,基幹エネルギーを原子力発電とし,「原子力立国」をうたいあげた.

連載 いのちのプリズム・2

母なる海

著者: 宮崎雅子

ページ範囲:P.371 - P.371

朝焼けの海を背に,妊婦さんの撮影を行った.

静かに波が打ち寄せる砂浜には,私たち以外誰もいない.

空は青紫色からしだいに薄紅色に変わり,優しい光が海面に降り注ぐ.

臨月まじかの大きなお腹は,まあるくて,地球のかたちを連想させる.

いのちを育む女性のからだは,なんと豊かで,エネルギーに溢れているのだろう.

感染症実地疫学・17

アウトブレイク・海外② アンゴラにおけるマールブルグ病のアウトブレイク(2004~2005年)

著者: 進藤奈邦子

ページ範囲:P.419 - P.422

 マールブルグ病はウイルス性出血熱を呈する急性感染症であり,マールブルグウイルスに起因する.動物宿主,環境因子は不明で,日本をはじめアジアでの患者発生の報告はなく,ウイルスはアフリカに固有のものと考えられている.マールブルグ病の発生は,その名の由来となった1967年のドイツ(マールブルグ)および旧ユーゴスラビアにおける実験用サルからの感染例を含めて5件(1975年ジンバブエ,1980・1987年ケニヤ,1998~2000年旧ザイール)1)が知られていたが,今回,初めて西アフリカ,アンゴラでの発生が報告され,しかもマールブルグ病のアウトブレイクとしては史上最大,ウイルス性出血熱のアウトブレイクとしては2000年のウガンダ北部におけるエボラ出血熱の流行に匹敵する,最大級のものとなった.

エイズ対策を評価する・17

外国人のHIV/AIDS(上)

著者: 岩室紳也 ,   沢田貴志 ,   内野ナンティヤー ,   岩木エリーザ ,   稲垣智一 ,   上野泰弘

ページ範囲:P.423 - P.427

岩室(司会) 今回は在日外国人の方々にとって,日本のエイズ対策はどのような成果を挙げているのか,どのような課題を抱えているのかを検証するため,在日外国人の医療に関わっておられる3名の皆さんからお話を伺います.まずは自己紹介をお願いできますか.

 

帰国を支援することから

沢田 私は在日外国人のニューカマーの人口が急速に増え始めた1991年から,医療に関わることが難しい方の診療を積極的に受けようということで,横浜にある診療所の内科医をしています.その中で当然エイズを発病する患者さんに多数かかわっています.また,「国際保健協力市民の会(SHARE:シェア)」というNPOで電話相談を受けており,おそらく100人以上のHIV陽性の外国人との接点がこれまであったかと思います.私どもの診療所では1992年ぐらいから,HIV陽性の外国人の方が来ていました.最初の頃は非常に深刻で,アフリカなど,開発途上国の方が,腎不全で,あるいは高熱で立てないような状況になって,行き場がなくなって友人に担ぎ込まれるというような事例が続いていました.

レセプト情報を活かす・2

レセプト情報で何ができるか

著者: 小林廉毅

ページ範囲:P.428 - P.431

 レセプト(診療報酬請求明細書)には,患者の基本的情報や傷病名,診療行為の種類・回数,診療報酬請求額などが1か月単位で記載される.表1,2にレセプトの主要な特長を記した.これらの特長を正しく理解して利活用すれば,レセプトの資料的価値はきわめて高い.今回は,レセプト情報を使って何ができるかについて述べたい.

保健予防事業のアウトソーシング最前線・3

保健予防アウトソーサーの概要

著者: 山田敦弘

ページ範囲:P.432 - P.434

 平成20年4月から特定健診等の義務化が開始されるにあたって,対象者の拡大等により医療保険者がアウトソーシングに頼らざるを得ない状況は,連載第1回にて説明した.今回は「保健予防アウトソーサーの概要」と題して,保健予防事業の委託先(アウトソーサー)である事業者について,そのサービスの種類や特徴,そして課題などについて説明する.

衛生行政キーワード・31

院内感染対策の新局面

著者: 徳本史郎

ページ範囲:P.435 - P.437

 MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)はもとより,VRE(バンコマイシン耐性腸球菌),MDRP(多剤耐性緑膿菌)など各種の微生物に起因する院内感染の防止を図るため,各医療機関はこれまで様々な取り組みを実施してきたことと思われる.しかし,中小の病院のみならず,全国の特定機能病院等においても,多剤耐性緑膿菌やセレウス菌等の集団感染と思われる事例が確認され,報道がなされているところである.特に高度の医療を提供する医療機関においては,侵襲の大きな手術を行う等により,感染症に対する抵抗力が低い患者が少なくない事情があることも踏まえ,院内感染対策委員会を中心とした組織的な取り組みの機能強化等,院内感染防止体制の再徹底を図ることが求められる.

 本稿においては,今後の院内感染対策のあり方について,医療制度改革の話題と絡めて概説する.

海外事情

高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)最前線―タイの現状と今後の課題

著者: 金森サヤ子 ,   神馬征峰

ページ範囲:P.439 - P.442

 高病原性鳥インフルエンザA(Highly Pathogenic Avian Influenza A:HPAI)のヒト症例数は,全世界で2006年8月までに241件に及んでいる.そのうち死亡者数は141件である.タイではこれまでに24件(うち16件のHPAI症例が死亡)が報告されている.ベトナム,インドネシアに次いで多い数である1).筆者らは,2006年7月から8月の間,保健省,教育省,およびこれまでにHPAIの症例が報告されているスパンブリ県を訪問し,タイにおけるHPAIの現状および対策を調査した.

 本稿ではタイのHPAIに対する取り組みの現状および対策を紹介すると共に,今後の課題についても言及する.

調査報告

認知症対応型共同生活介護における食品衛生実態調査

著者: 森下千恵美 ,   岩田康一 ,   清水進 ,   高野英雄 ,   青木誠 ,   船橋隆夫 ,   鈴木幹三

ページ範囲:P.443 - P.447

目的

 高齢社会に対応して,様々な形態の高齢者施設が誕生し,急増している.認知症対応型共同生活介護(以下“グループホーム”とする)もその1つで,平成17年度末現在,全国に8,026施設,本市には131施設が開設されている.グループホームの入居者は,介護認定された要介護1以上の認知症高齢者(原則65歳以上)であり,自立支援を目的としていることから,日常生活のことはできる範囲で入居者自身が行っている.

 グループホームでは,介護職員(以下“職員”とする)は交替勤務制で24時間入居者の介護をしながら,食事の準備も行っている.調理は職員を中心に,配膳など一部を入居者が手伝うという形で行われる場合が多いことから,グループホームでの食中毒あるいは感染症の発生が強く懸念される.しかし,これまでグループホームの衛生管理に関する報告は少ない.

 そこで今回,今後の衛生指導の基礎資料を収集するためグループホームへ立ち入り,調理の実態と衛生管理上の問題点,課題などを調査した.

「公衆衛生」書評

日本の疫学―射線の健康影響研究の歴史と教訓 フリーアクセス

著者: 多田羅浩三

ページ範囲:P.399 - P.399

 わが国の疫学の育ての親である,重松逸造先生が,これまでの先生の放射線の健康影響に関する研究の軌跡とその成果をもとに,このたび歴史の記念碑ともいうべき本を出版された.『日本の疫学―放射線の健康影響研究の歴史と教訓』である.

 わが国は世界で唯一の原爆の被災国である.その被災の悲劇は,もちろん被爆の時点においてのみ見られたのではない.長く数十年にわたって,その傷跡は深く残され,今日にまで続いている.その記録は,人類が2度と起こしてはならない愚挙の足跡として,刻まれ,記され,人類の歴史に残されなければならない.

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あとがき フリーアクセス

著者: 桜山豊夫

ページ範囲:P.450 - P.450

 1986年2月号を最後に日本語版は休刊,というか事実上の廃刊(?)になっていますが,『リーダーズダイジェスト』という雑誌がありました.記事と記事との間のスペースに,気の利いたコラムや愉快な笑い話などが掲載されており,「隅から隅まで,むしろ隅のほうが面白い雑誌」と言われておりました(現在も英語版などは刊行されており,復刊が望まれます).弊誌『公衆衛生』も隅から隅まで面白いように努めてきましたが,今月号の特集「歯周病予防からのヘルスプロモーション」は如何でしたか.

 医師全般を「医者」と言いますが,眼科医を表す「目医者」と歯科医を表す「歯医者」という言葉も古くから存在します.他の診療科については,このような表現はなく,眼科と歯科は,古くから専門分化していたのでしょう.そのせいか,歯科保健分野について,ややもすると他の領域からは関心が薄いような気もします.しかし,歯の健康が全身の健康と密接な関連があることは言を俟ちません.本特集では,歯科保健分野以外の方々にも,ヘルスプロモーションにおける歯周病の重要性をご認識いただくべく,多くの先生方から玉稿をいただきました.どうぞご精読ください.

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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