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特別寄稿
健康格差社会とポピュレーションアプローチ
著者: 尾島俊之1
所属機関: 1浜松医科大学健康社会医学講座
ページ範囲:P.487 - P.491
文献購入ページに移動世の中,所得格差,雇用格差,地域格差と,様々な格差が拡大しているという.これまでの種々の疫学研究などによって,所得や教育などの社会経済因子によって健康状態が左右されることが明らかになっており1,2),社会経済的な格差が広がることにより,健康格差も広がることが懸念されている.総務省の実施している全国消費実態調査3)による所得のジニ係数(格差を示す指標)の推移を見ると,図1に示すように,日本における所得格差は年々拡大傾向にある.日本のジニ係数は,アメリカと比較すると遙かにマシであるが,スウェーデンよりは高い値となっている.ただし,多くの諸外国でも日本と同様に所得格差が拡大する傾向にある.格差社会であるアメリカにおいては,低所得者が近づけないように柵で囲んだ住宅街の中に暮らす高所得者がいて,一方で,高所得者が治安上の危険性から近づけないような地域に住む低所得者がいて,社会の分断化が生じている.所得格差が拡大の一途をたどれば,それが日本の未来の姿となるかもしれない.
公衆衛生の目的は,人々の健康,幸福を向上させることである.現在,健康格差が拡大しつつあり,健康が十分に確保されない人が増えつつあるとすると,それは公衆衛生にとって重要な問題である.格差そのものは,いつの時代にも存在するものであり,また格差がゼロの社会というのはあり得ないであろう.しかし,今後ますます格差が開いていくとしたら,それは好ましくないと考える国民のほうが多いであろう.
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