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雑誌目次

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公衆衛生71巻7号

2007年07月発行

雑誌目次

特集 狂犬病・デング熱・マラリア・コクシジオイデス症―海外で罹る危険性のある感染症

海外勤務健康管理センターでの感染症対策

著者: 濱田篤郎 ,   奥沢英一

ページ範囲:P.582 - P.585

 観光や業務で海外に渡航する日本人の数は年々増加しており,海外滞在中に健康問題を起こす者も相当数に上っている.こうした健康問題を未然に回避するためには,出国前に十分な予防対策を提供しておくことが必要になる.特に近年増加の著しい途上国への渡航者については,感染症への対策が欠かせないものである.

 そこで,本稿では海外渡航者の感染症対策について,海外勤務健康管理センターの活動や研究データを中心に解説する.

海外で罹る危険性のある感染症update

1.海外渡航と狂犬病

著者: 髙山直秀

ページ範囲:P.552 - P.555

本文献は都合により閲覧が許可されていません

2.デング熱・デング出血熱

著者: 原田文植 ,   高崎智彦

ページ範囲:P.556 - P.560

 デングウイルス感染症であるデング熱(dengue fever)およびデング出血熱(dengue hemorrhagic fever)は,蚊によって媒介される急性熱性疾患で,世界の熱帯・亜熱帯地域で流行が認められている.現在,日本国内でのデングウイルスの存在は確認されていないが,日本人旅行者の渡航先は流行地であるアジア地域が最も多いこと,都市部やリゾート地でも感染することなどから,重要な輸入感染症の1つであり,年間数十例が報告されている.

 デングウイルスはフラビウイルス科フラビウイルス属に属する節足動物媒介性ウイルスであり,ネッタイシマカやヒトスジシマカなどの蚊によって媒介され,ヒトに感染する.デングウイルス感染者の多くは不顕性感染に終わるが,発症した場合,非致死性の熱性疾患であるデング熱あるいは致死的疾患であるデング出血熱・ショック症候群という2つの異なる病態を示す.

 現在,デングウイルスに対するワクチンは開発段階であり,有効な特異的治療法がないため,蚊に対する予防策が最も重要である.したがってデングウイルスの流行地域に渡航する場合は,蚊に刺されにくい服装や虫除け剤等により,蚊の刺咬を避ける必要がある.

3.マラリア

著者: 小田原隆

ページ範囲:P.561 - P.565

 マラリアは原因となっている原虫の種類によって熱帯熱,三日熱,卵形,四日熱の4種類に分かれるが,なかでも熱帯熱マラリアは,治療が遅れれば重症化して致死的となり得る救急疾患である.熱帯・亜熱帯地域へ渡航後に発熱した患者を診たとき,考えなければならない代表的な感染症――マラリア,腸チフス,デング熱,A型肝炎など――の中でも,診断・治療に最も急を要するのが熱帯熱マラリアである.治療開始の遅れから不幸にも死の転帰をたどっている熱帯熱マラリア症例は国内で散発的に見られており1),私たちは,マラリア流行地に渡航する人たちには,「38~39℃に達する熱を出したときにはダッシュで病院にかかってください」と指導している.

4.A型肝炎

著者: 淸原知子 ,   米山徹夫

ページ範囲:P.566 - P.568

 食品を介して感染する急性ウイルス肝炎の大半はA型肝炎ウイルス(以下,HAV)が原因である.HAVは患者の肝臓で増殖した後,糞便中に排出され,感染源になる.ウイルスを含んだ排泄物に汚染された食材や水の経口摂取が主な感染経路である.汚染された手や食器からも感染する.糞口感染する疾患の発生状況は,衛生環境に依存する.

 衛生環境の未整備な途上国ではHAVが常在していて,子どものうちに人口のほぼ100%が感染する.日本や北欧のように衛生環境の整った国では,ウイルスの伝播経路が絶たれ,A型肝炎の発生は減少する.そのため人口のほとんどがHAVに対する防御抗体を持たない.このような人たちが衛生環境に問題がある地域に渡航する時は感染を受けやすいので,汚染の危険のある生水,生野菜,未調理の食品には注意が必要である.

5.E型肝炎

著者: 李天成

ページ範囲:P.569 - P.571

E型肝炎とは

 E型肝炎は東南アジア,中南米,アフリカ,中近東では常時流行を繰り返している疾患で,しばしば飲料水などを介し大規模な流行を引き起こすことが知られている.

 E型肝炎の原因ウイルスはE型肝炎ウイルス(hepatitis E virus,以下HEVと略)である.1955年にインドのニューデリーで飲料水を介した大規模急性肝炎が発生した.この流行では,黄疸性肝炎と診断された症例だけでも29,000人に及んでいる.これは学術的にE型肝炎に関する最初の記述である.その後,アジア,北アフリカ,メキシコなどでもこれに似た水系感染による急性肝炎の大流行が発生している.先進国で非A非B肝炎といえばC型肝炎を意味するが,発展途上国での非A非B肝炎はE型肝炎である.日本をはじめとする先進国でもE型肝炎の発生は時折見られるが,その大部分は輸入感染症例である.

 しかしながら,近年,全く海外渡航歴のないE型肝炎症例が日本やアメリカなどの先進国で報告されるようになってきた.最近,豚,シカ,イノシシ,マングースなどの動物からもHEVが分離され,シカとイノシシ由来HEVは人への感染が証明されていることから,E型肝炎は人畜共通感染症でもある1,2)

6.赤痢・コレラ

著者: 荒川英二

ページ範囲:P.572 - P.577

 わが国の海外渡航者は,法務省の統計によると,2005年は1,740万人あまりが出国しており,訪問先としては,上位5位までのアメリカ合衆国(ハワイ州やグアム,サイパンを含む),中国,韓国,香港,台湾でおよそ70%を占めている.しかし,赤痢やコレラの流行地である他のアジア地域やアフリカにも多くの日本人が訪れている.

7.コクシジオイデス症

著者: 宮治誠

ページ範囲:P.578 - P.581

 コクシジオイデス症(coccidioidomycosis)は,カリフォルニア,アリゾナ,テキサス州等の米国西南部地域,メキシコ,アルゼンチンのパンパ,ベネズエラのコロの限局された半乾燥地帯に発症する風土病である.

 原因菌はコクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)で,強風や土木工事などで土埃と共に舞い上がった本菌の分節型分生子(arthroconidium)を吸入することにより,肺に初発病巣を起こす.通常カゼに似た症状を呈した後,自然治癒するが,患者の約0.5%が全身感染へと移行し,その内約半数が死に至る.

 特に皮膚病巣に特徴があり,結節や潰瘍を繰り返し,キャベツ状の腫瘤を呈する.この症状により,コクシジオイデス肉芽腫とも呼ばれている.なお,コクシジオイデス症は平成11年に施行された「感染症法」の中で「四類感染症」に指定されている(さらに現在改訂中).

視点

憲法九条の大切さ―戦争は最大の公衆衛生問題

著者: 日野原重明

ページ範囲:P.540 - P.543

 『公衆衛生』誌という予防医学の専門誌に,私が「憲法九条」を考え,私の論説を掲載したいとの要請を受け,私への注文がどんなところにあるかと思案したが,まず私の尊敬するウィリアム・オスラー(1849-1919)が,第一次世界大戦の最中に,次のような手紙を書いていることをお伝えしたい.「避けがたい戦争を避けるという難問を引き受けるものは,すべての民族は同じ血液からなっている人間だということを誰よりも最もよく知っている医師以外にはない」.ちなみに,オスラーの1人息子は,欧州のフランダース地方での対ドイツ戦で戦死している.

 そしてまた偶然にも,この原稿を今夜書く6時間前に,アメリカ国籍の日系3世スティーヴン・オカザキ監督作品,映画「白い光と黒い雨――広島・長崎の破壊」(日本題「ヒロシマ ナガサキ」)の試写会で,広島と長崎の原爆を受けて,からくも生存して今日に至っている被爆された方たちの回顧と原爆投下現場の記録を見たばかりである.

 そのような今の私の心境から,憲法の改正案への激しい抵抗心以外に,九条の文章をさらに徹底した戦争放棄に改め,軍隊となりつつある自衛隊の名称をも変えて,「ボランティア隊」として外国に送り出し,難民などのために活動してもらいたいという気持ちで,この原稿を書き始めた次第である.

トピックス

狂犬病の歴史とその現況を基にした防疫対策

著者: 源宣之

ページ範囲:P.586 - P.591

 狂犬病は人を含めたすべての哺乳類が罹患する,最も致命率の高いウイルス性人獣共通感染症である.本病の流行に病原体を媒介するベクターや自然宿主が介在しないと考えられているにもかかわらず,また医療技術や予防手段が高度に発達し予防・発病阻止に有効なワクチンが開発された今日においても,世界における狂犬病の発生は顕著な減少傾向を示すことなしに連綿と続いている.なぜ,人類は狂犬病を撲滅することができないのであろうか.本病の過去と現在を検証しながら,その対策を考察してみたい.

越境する公衆衛生 共に生きるコミュニティの構築をめざして・2

[インタビュー]東京都足立区「六町エコプチテラス」から学ぶ

著者: 平田裕之 ,   大塚敦子

ページ範囲:P.592 - P.598

 従来の市民農園から一歩進んだ「コミュニティ・ガーデン」が東京都足立区にあります.2002年,地元で暮らす1人の若者が立ち上げ,足元から環境を考える取り組みを行ってきました.花や野菜を育てることを通して得られる効果に着目し,豊かな地域づくりに生かしていこうと様々な活動を行っています.全国から高い関心が寄せられている「六町エコプチテラス」を紹介しつつ,コミュニティ・ガーデンの意味するものを,平田裕之さんと大塚敦子さんの対話より探ってみたいと思います.

連載 いのちのプリズム・4

喜びの星「ホクレア号」

著者: 宮崎雅子

ページ範囲:P.539 - P.539

 ハワイからスターナビゲーションと呼ばれる古代の伝統航海術を再現した原始カヌー「ホクレア号」が,太平洋を渡り日本にやってきた.

 2007年1月にハワイ島を出発.伴走船カマヘレ号とともに,ミクロネシアの島々を経由して4月24日午前1時,沖縄の糸満漁港に入港した.

Health for All-尾身茂WHOをゆく・31

日本の医療を考える・2

著者: 尾身茂

ページ範囲:P.544 - P.545

 前回,日本の医療が抱える4つの課題から考えると述べた.今回は,第1点目の医師への過剰な負担や“burn out”の問題と,第2点目の医療の量的な課題について考えてみよう.

 医師に過剰な肉体的および心理的な負荷がかかっているという指摘を,マスコミを通じて最近しばしば耳にし,また,日本の多くの医師たちから「最近,元気がない,burn outしている医師が多い」と聞いたりもする.

感染症実地疫学・19

アウトブレイク:海外④ タイにおけるボツリヌス症集団発生と日本の抗毒素供給支援

著者: 上野久美

ページ範囲:P.599 - P.603

 2006年3月,タイ北部ラオスとの国境に位置するナン県において,史上最大規模の食餌性ボツリヌス症(ボツリヌス食中毒)の集団発生が確認された.ボツリヌス症は,芽胞を有する嫌気性グラム陽性桿菌であるClostridium botulinum(ボツリヌス菌)が産生するタンパク毒素(ボツリヌス毒素)で起こる.適切に処理されなかった缶詰や加工食品等の中でボツリヌス菌が増殖し,産生された毒素を経口摂取することによって,コリン作動性シナプスにおけるアセチルコリンの遊離が阻害されることにより発症する神経麻痺疾患である.わが国では1984年に,14都道府県において36症例(うち11死亡例)の発生を見たカラシレンコンによる食中毒で知られる.

 本事例に関して,タイ政府は国を挙げて調査・対応にあたるとともに,わが国を含む3か国にボツリヌス抗毒素の緊急供給支援を要請した.筆者は,実際に抗毒素搬送に携わった経験から,本事例の詳細とタイ政府における対応,わが国の抗毒素供給支援の様子に関して述べると共に,今後,海外における感染症集団発生時にわが国に求められる役割に関して考察する.

エイズ対策を評価する・19【最終回・上】

ソーシャルワークとカウンセリング(上)

著者: 岩室紳也 ,   磐井静江 ,   小島賢一 ,   稲垣智一 ,   上野泰弘

ページ範囲:P.604 - P.610

チーム医療が始まるまで

岩室 連載の最終回は都立駒込病院ソーシャルワーカーの磐井さん,荻窪病院カウンセラー(臨床心理士)の小島さんにお話を伺いたいと思います.まずはお2人がHIV/AIDSにかかわるようになったきっかけからお話し下さいませんか.

磐井 私は1975年,がんと感染症の専門病院だった東京都立駒込病院に勤務し,主に末期がん,在宅死に対して訪問看護制度を都立病院の中に(神経難病以外に)初めて導入したり,小児がんのお子さんの学習ボランティアをしてきました.1980年代になって,感染症の先生方がHIV診療をなさっていたのですが,私たちソーシャルワーカーがHIV患者の力になれる存在かどうか,医師たちの認識もなく,私たちも他の仕事に忙しかったため積極的にはかかわっていませんでした.

レセプト情報を活かす・4

医療費分析システムとレセプト情報

著者: 鹿妻洋之

ページ範囲:P.611 - P.614

 2008年度医療制度改革において,都道府県は自らの医療費適正化計画を策定することが求められることとなった.この医療費適正化計画は,健康増進計画,医療計画,介護保険事業支援計画等の関連計画と整合を取りながら策定する必要があることから,これまで2回にわたり国立保健医療科学院において,各都道府県の医療費適正化計画担当者に対して総合医療政策研修が実施されたところである.都道府県医療費適正化計画における医療費分析は,地域の状況に合致した施策となっているか,数値的に裏付けることにその意味があることから,都道府県医療費を求めることが重要となる.

 何をもって都道府県医療費と定義するのかについては様々な議論がある.医療機関の所属する都道府県で考えるほうがレセプトを用いて集計する上では簡単ではあるが,交通手段の発達に伴い,自都道府県外への入院・通院が増えている現状を考えると,この医療費を住民数で割って1人当たり医療費を算出しても意味を持たなくなる.一方,加入者の居住地で判断する場合,本来の意味での都道府県民医療費を算出することが可能と言えるが,被用者保険側では居住地把握が十分なされていないという問題点が残る.さらに,国民健康保険には低所得者は高齢者が集中しやすいことを考えると,各保険制度における疾病構造や受診傾向を同一視して良いのかといった問題も残っている.

 このため医療費適正化計画における医療費分析では,加入者居住地の疾病構造と制度間の比較という2つの視点を持って,作業を進める必要がある.

保健予防事業のアウトソーシング最前線・5

アウトソーシングを推進するための新しい取り組み

著者: 山田敦弘

ページ範囲:P.615 - P.618

 平成20年度より実施される特定健診等の義務化において,アウトソーシングへのニーズがますます高まることは,前々号本連載にて説明をした.今回は,保健予防のアウトソーシングを円滑かつ効果的に実施するための取り組みについて,国の取り組みとして厚生労働省が標準的な健診・保健指導プログラムの中に示した指針を,また民間団体の取り組みとして保健サービス事業者データベースを取り上げて説明する.

衛生行政キーワード・33

「今後の歯科保健医療と歯科医師の資質向上等に関する検討会」中間報告書について

著者: 大坪真実

ページ範囲:P.620 - P.621

歯科保健の現状と検討会の設置

 平成17年歯科疾患実態調査の結果を見ると,1人平均現在歯数が増加し,8020達成者(80歳で20本以上,自分の歯を持つ者,表)の割合が調査開始以来,初めて20%を超えた.健康日本21の中間評価報告においても,「歯の健康」分野の目標値のうち,多くの項目で改善,または目標の達成が認められ,わが国の歯科保健の状況が着実に向上していることがわかる.

 これは,国民の歯科保健に対する意識の高まりや歯科医療関係者による歯科疾患の予防,歯の保存治療への取り組み等による成果だと考えられるが,予測を上回る改善に伴い,患者の求める医療水準はますます向上し,ニーズも多様化している.日々進歩する医療技術への対応,患者中心の医療の提供等,国民の要求に対応できる歯科医療関係者の質の向上等が課題となり,歯科保健医療は,従来とは異なる方向性を示す必要が出てきた.

 このような現状に鑑み,厚生労働省は,平成17年12月に「今後の歯科保健医療と歯科医師の資質向上等に関する検討会」(座長=斎藤 毅・日本大学名誉教授)を立ち上げた.この検討会では,今後の歯科保健医療の在り方を検討するとともに,併せて歯科医師の資質向上の方策,生涯研修の在り方,新たな歯科医療需要を踏まえた歯科医師数の将来予測等について等幅広い検討を重ね,平成18年12月に中間報告書を取りまとめた.本稿では,この報告書の中身について簡単にご紹介したい.

資料

山形県における自殺死亡の地域較差と人口動態的および社会経済的要因との関連性についての研究

著者: 大類真嗣 ,   深尾彰

ページ範囲:P.623 - P.627

背景および目的

 わが国における自殺死亡者は,1998年に31,755人1)と急激に増加し(前年23,494人),それ以降も30,000人前後で推移している.また山形県でも同様に,1998年に359人2)と増加し(前年279人),2002年および2003年には370人に達している.自殺は国および地方公共団体が取り組まなければならない健康課題の1つであり,自殺対策を進める上で,自殺の地域較差やそれを生じさせている要因の検討が必要とされる.

 自殺に地域較差が認められることは諸所の報告によってなされており,先行研究において市町村および二次保健医療圏別の検討にて自殺の地域較差が確認されている3,4).また,自殺の原因には社会的要因,経済的要因,気象的要因など様々な要因が関連しているとされており,先行研究では,自殺は農村部に多く,また医師数が少なく,高齢者世帯割合が高い地域に多いといった報告3)や,失業率,第3次産業就業者割合,人口あたり医師数などの要因と関連がある,という報告4)がされている.しかし,山形県における自殺の地域較差および関連要因との詳細な検討の報告はなされていない状況である.

 今回,山形県の市町村別の自殺死亡の地域較差を明らかにするとともに,自殺死亡と人口動態的および社会経済的要因との関連性を検討した.

報告

大阪府泉州二次医療圏回復期リハビリテーション病床群における疾患分類別患者動向―統一データベースによる年間1300症例の検討

著者: 手塚康貴 ,   森野恭典 ,   湯浅ひとみ ,   太田忠信 ,   田中肇 ,   湯川修也 ,   多田裕一 ,   勝山真介 ,   橋本務

ページ範囲:P.628 - P.633

 平成12年度から地域リハビリテーション(以下,地域リハ)推進事業が展開され,その活動指針などが提示された1).リハビリテーションの流れを便宜上,急性期・回復期・維持期とし,切れ目のない効率的なサービス継続の必要性が示された.当院は泉州二次医療圏のリハビリテーション広域支援センター(以下,広域支援センター)に指定され,地域リハ推進に努めることとなった.

 同時期に回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期リハ病棟)の整備が開始された.その入院目的は,ADL(Activities of Daily Living)の向上,寝たきり防止,家庭復帰とされ,入棟適応は脳血管疾患などの発症から90日以内,入棟期間は180日とされた.また多職種が病棟専従となり,強力なチームアプローチを求められる病棟となった.さらに,急性期病院からの患者を早期に受け入れ,要介護状態の十分な軽減を図った上で在宅ケアに移行する流れ,いわゆるリハ前置主義を徹底する病棟とされ,地域リハの中間的位置づけと考えられた1,2).当院は平成14年に回復期リハ病棟を開設した.

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あとがき フリーアクセス

著者: 西田茂樹

ページ範囲:P.634 - P.634

 20年位前の一時期,国際協力の仕事に携わったことがあります.まだわが国の保健分野での国際協力が立ち上がった頃で専門家も少なく,私のところにまで協力依頼の話がJICAから舞い込んできました.東南アジアや南米の数カ国で実施されていたプロジェクトのお手伝いに何度が出掛けました.南米に行く時に,現地でのマラリア対策に(現地視察の予定があったため)蚊取り線香を持っていったことを覚えています.また,その時に黄熱の予防接種を受け,ニューヨーク行きの飛行機の中で,(たぶん)副作用の発熱で苦しんでいたことも覚えています(私が機内で何度もお酒を頼むので,偶然隣に座っていた女子高生に呆れられたことも覚えています).

 防虫剤や予防接種など,現地での感染症対策をとっていたつもりの私も,昨年の狂犬病発生のニュースには驚きました.当時,わが国以外の国々では狂犬病が発生していることは知識としてはありましたが,現地で犬に注意するということはなかったような気がします(もっとも車での移動が多く,犬に接することもなかったと思いますが).

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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