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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生71巻7号

2007年07月発行

文献概要

特集 狂犬病・デング熱・マラリア・コクシジオイデス症―海外で罹る危険性のある感染症 海外で罹る危険性のある感染症update

2.デング熱・デング出血熱

著者: 原田文植1 高崎智彦1

所属機関: 1国立感染症研究所ウイルス第1部

ページ範囲:P.556 - P.560

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 デングウイルス感染症であるデング熱(dengue fever)およびデング出血熱(dengue hemorrhagic fever)は,蚊によって媒介される急性熱性疾患で,世界の熱帯・亜熱帯地域で流行が認められている.現在,日本国内でのデングウイルスの存在は確認されていないが,日本人旅行者の渡航先は流行地であるアジア地域が最も多いこと,都市部やリゾート地でも感染することなどから,重要な輸入感染症の1つであり,年間数十例が報告されている.

 デングウイルスはフラビウイルス科フラビウイルス属に属する節足動物媒介性ウイルスであり,ネッタイシマカやヒトスジシマカなどの蚊によって媒介され,ヒトに感染する.デングウイルス感染者の多くは不顕性感染に終わるが,発症した場合,非致死性の熱性疾患であるデング熱あるいは致死的疾患であるデング出血熱・ショック症候群という2つの異なる病態を示す.

 現在,デングウイルスに対するワクチンは開発段階であり,有効な特異的治療法がないため,蚊に対する予防策が最も重要である.したがってデングウイルスの流行地域に渡航する場合は,蚊に刺されにくい服装や虫除け剤等により,蚊の刺咬を避ける必要がある.

参考文献

1) Dengue Haemorrhagic Fever, 2nd ed. World Health Organization, Geneva, 1997
2) 高崎智彦,倉根一郎:世界におけるデング熱・デング出血熱.病原微生物検出情報25(2)33-34, 2004
3) Takasaki T, Kotaki A, Nishimura K, et al:Dengue virus type 2 isolated from an imported dengue patient in Japan;First isolation of dengue virus from Nepal. J Travel Med, 2007 (in press)
4) 堀田進:デングウイルス研究60年の回顧.ウイルス51(1):105-107, 2001
5) 畠山修司,北沢貴利,奥川周・他:デング出血熱/デングショック症候群に真菌感染症を合併し死亡した日本人症例.病原体検出情報27:14-15, 2006
6) 伊藤美佳子,倉根一郎:デング熱・デング出血熱.綜合臨牀52(増刊号):1109-1115, 2003
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8) 五十嵐彰:デング熱・デング出血熱.治療学31:35-39, 1997
9) 田島茂,倉根一郎:デング熱・デング出血熱.成人病と生活習慣病33(9):1111-1115, 2003
10) 林昌宏,倉根一郎:デング熱・デング出血熱.化学療法の領域21(10):55-62, 2005
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14) 小林睦生,二瓶直子,栗原毅:わが国のデング熱媒介蚊であるヒトスジシマカの分布拡大について.病原微生物検出情報25(2)35-36, 2004

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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