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特集 憲法と公衆衛生 〈生存権と公衆衛生〉
健康格差社会の中の憲法第25条
著者: 二宮厚美1
所属機関: 1神戸大学大学院人間発達環境学研究科
ページ範囲:P.24 - P.27
文献購入ページに移動現代日本の格差社会化は,実に多様な側面を持って進行中である.それは所得格差から始まり,消費格差,貯蓄格差,学歴格差,地域格差,寿命格差,結婚格差,学力格差等,挙げればきりがないほどに多様な形で現れている.しかも,それらの多種多様な格差は連動的・連鎖的関係にある.
本稿では健康格差に焦点を絞るために,複合的・連鎖的な格差社会化の進行をさしあたり2つのグループにまとめるとすれば,各種格差はまず経済的格差の範疇,第二に能力的格差の範疇に分類される.前者の経済的格差は,大づかみにいって「雇用格差→所得格差→消費・貯蓄格差」の系列にまとめられる.後者の能力的格差のほうは,能力総体を便宜上2つに分けるとすれば,1つは肉体的能力の格差,いま1つは精神的能力の格差に分類される.ここで取り扱う健康格差とは,能力格差の中の前者,すなわち身体的・肉体的な能力格差のことである.
人間の生命の再生産という視点から見ると,経済的格差とは生命の再生産の環境的格差を意味し,能力的格差とは環境の違いによって生まれた生命の再生産能力の格差を意味するから,これら両方の関係は「経済的格差→能力的格差」という流れでつかむことができる.そうすると,健康格差とは「経済的格差を反映した身体的・肉体的能力の格差」を意味することになる1).
本稿の課題は,このような健康格差をいかに評価するか,そして問題の健康格差を克服するために,憲法第25条にはいかなる意義があるかを検討することである.「経済的格差→健康格差」の連動関係をつかむところから開始しよう.
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