文献詳細
文献概要
連載 レセプト情報を活かす・10
産業保健とレセプト情報―患者自己負担増による慢性疾患の受診中断をレセプト情報で評価する
著者: 馬場園明1
所属機関: 1九州大学大学院医学研究院医療経営・管理学講座
ページ範囲:P.52 - P.55
文献購入ページに移動産業保健では,生活習慣病など慢性疾患の健康支援が重視されている.しかしながら,高血圧や糖尿病など自覚症状に乏しい疾患では,受診中断などが多く,コンプライアンスが悪いことから,疾病管理の重要性が叫ばれている.
また,1980年前半以降,政府は自己負担を上げる政策に転換して1)おり,被用者健康保険においては,1984年10月には被保険者本人に1割,1997年9月には2割,2003年4月には3割の自己負担を導入した.健康保険制度において,自己負担が課せられている理由は,モラルハザードを防ぐための対策である.モラルハザードとは,自己負担が軽いと受診が増加することを指す.また,出来高の支払制度では,自己負担が軽いと医療を供給する側も過剰な診療をすることも指摘されている.しかし一方,自己負担が課せられれば,必要な受診も差し控えられて疾病が重症化する危険性もある.
どの程度の自己負担があれば受診が適切なのかの判断は難しいが,適切な自己負担を設定するには患者を対象とした実証的な研究の蓄積が必要である.本稿では,職域を対象として,筆者が行ってきた自己負担率の変化による高血圧と糖尿病の受診への影響に関する実証的な研究を紹介してみたい.
参考文献
掲載誌情報