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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生72巻1号

2008年01月発行

文献概要

連載 レセプト情報を活かす・10

産業保健とレセプト情報―患者自己負担増による慢性疾患の受診中断をレセプト情報で評価する

著者: 馬場園明1

所属機関: 1九州大学大学院医学研究院医療経営・管理学講座

ページ範囲:P.52 - P.55

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はじめに

 産業保健では,生活習慣病など慢性疾患の健康支援が重視されている.しかしながら,高血圧や糖尿病など自覚症状に乏しい疾患では,受診中断などが多く,コンプライアンスが悪いことから,疾病管理の重要性が叫ばれている.

 また,1980年前半以降,政府は自己負担を上げる政策に転換して1)おり,被用者健康保険においては,1984年10月には被保険者本人に1割,1997年9月には2割,2003年4月には3割の自己負担を導入した.健康保険制度において,自己負担が課せられている理由は,モラルハザードを防ぐための対策である.モラルハザードとは,自己負担が軽いと受診が増加することを指す.また,出来高の支払制度では,自己負担が軽いと医療を供給する側も過剰な診療をすることも指摘されている.しかし一方,自己負担が課せられれば,必要な受診も差し控えられて疾病が重症化する危険性もある.

 どの程度の自己負担があれば受診が適切なのかの判断は難しいが,適切な自己負担を設定するには患者を対象とした実証的な研究の蓄積が必要である.本稿では,職域を対象として,筆者が行ってきた自己負担率の変化による高血圧と糖尿病の受診への影響に関する実証的な研究を紹介してみたい.

参考文献

1) 馬場園明:受診保障の経済学.科学(岩波書店)75:592-597,2005
2) 山岡和枝,小林廉毅:医療と社会の計量学(初版).pp86-99,東京大学出版会,1994
3) 馬場園明:一割負担導入の高血圧症患者に対する影響.日本衛生学雑誌45:849-859,1990
4) Babazono A, Tsuda T, Yamamoto E, et al:Effects of an increase in patient co-payments on medical service demands of the insured in Japan. Int J Technol Assess Health Care 19:465-475, 2003
5) Babazono A, Miyazaki M, Une H, et al:Health care policy-making in Japan;The Impact of the increase co-payments on use of services by patients with chronic illness. Japanese Journal of Health Promotion 8:89-96, 2006
6) Babazono A, Miyazaki M, Imatoh T, et al:Effects of the increase in co-payments from 20 to 30 percent on the compliance rate of patients with hypertension or diabetes mellitus in the employed health insurance system. Int J Technol Assess Health Care 21:228-233, 2005

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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