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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生72巻12号

2008年12月発行

文献概要

特集 地球温暖化対策―京都の約束

地球温暖化対策の評価―アジア地域の対策の重要性を踏まえた提言

著者: 甲斐沼美紀子1

所属機関: 1国立環境研究所地球環境研究センター温暖化対策評価研究室

ページ範囲:P.938 - P.942

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長期的な気候安定化と温暖化対策

 このままのCO2排出量の増加が続けば,地球全体の地上平均気温は2100年には1.1℃から6.4℃まで上昇すると言われており,各地での影響が心配されている3).アジア地域においても多くの影響が懸念されている.例えば,1mの海面上昇によって,メコン川のデルタ地帯(2,500km2)のほぼ半分のマングローブが消失し,一方で,約1,000km2もの耕作地や養殖漁業の地域が,塩性湿地になると予想される.また,長さ4km未満のチベット高原の氷河は,気温が3℃上昇し,かつ降水量の変化がないと,消失すると予測されている.その他,現在の温暖化速度が継続されれば,ヒマラヤの氷河は非常に急速に崩壊し,2030年代には現在の50万km2から10万km2にまでに縮小する可能性があるなどである4)(図1).

 甚大な影響を回避するためには,大気中の温室効果ガス濃度を安定化させる必要がある.どのレベルで安定化する必要があるかについて,2008年7月に開催されたG8北海道洞爺湖サミットでは,長期目標として,「2050年までに世界全体の排出量の少なくとも50%削減を達成する目標を,UNFCCCのすべての締約国と共有し,採択することを求める」ことで合意した.欧米の主要国ではすでに,2050年までに60~80%の温室効果ガスの削減目標を設定している.先進国は1990年の排出量に比べて,2020年までに25~40%の,2050年までに80~90%の温室効果ガスを削減する必要があるとの指摘もある1)

参考文献

1) MGJ Den Elzen, M Meinshausen:Multi-gas emission pathways for meeting the EU 2℃ climate target. Avoiding Dangerous Climate Change. HJ Schellnhuber, W Cramer, N Nakicenovic, T Wigley, G Yohe(eds), Cambridge University Press, 2006
2) IPCC:Special Report on Emissions Scenarios. Cambridge University Press, 2000
3) IPCC:Climate Change 2007. Science, Cambridge University Press, 2007a
4) IPCC:Climate Change 2007. Impact, Adaptation and Vulnerability, Cambridge University Press, 2007b
5) IPCC:Climate Change 2007. Mitigation of Climate Change, Cambridge University Press, 2007c
6) IPCC:Climate Change 2007. Synthesys Report Cambridge University Press, 2007d
7) 花岡達也,明石修,日比野剛,長谷川知子,藤野純一,松岡譲,甲斐沼美紀子:世界地域別の温室効果ガス排出削減量と削減費用の評価.Journal of Japan Society of Energy and Resources 29(4):36-42, 2008

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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