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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生72巻3号

2008年03月発行

文献概要

特集 アレルギー対策―花粉症・食物アレルギー・アトピー等への対応 食物アレルギーの研究と対策の最前線

1.食物アレルギーの疫学と発症・重症化予防に関する研究

著者: 今井孝成1

所属機関: 1独立行政法人国立病院機構相模原病院小児科

ページ範囲:P.208 - P.211

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食物アレルギーの疫学

1.食物アレルギーの有病率1,2)

 わが国における食物アレルギーに関する大規模な調査は少なく,最近になってやっといくつか報告が行われるようになってきた.神奈川県相模原市(人口約70万人)で行われた約5,000人を対象とした乳児コホート調査において,乳児期の食物アレルギーの有病率は5~10%であった.また昨年度に報告された文部科学省の悉皆調査では,小中学生で2.6%程度,(社)全国学校栄養士協議会が行った大規模全国調査では1.3~1.5%と推定される3).乳幼児早期に大部分が発症してくる食物アレルギーは,経年的に耐性化を獲得する(食べられるようになる)ことが知られている.このため幼児期の有病率は乳児期と学童期の間でおよそ3~5%程度と考えられ,実際当院周辺地域の約3万人規模の幼児の調査では,その有病率は3%程度であった.またわが国の学童期以降,成人の有病率調査はない.しかし学童期以降の食物アレルギーの発症は乳幼児期ほど多くなく,また耐性化の獲得もほとんど進まないことが知られており,このことから学童期以降の食物アレルギーの有病率は,学童期とさほど変わらないと考えられる.つまり,乳児の5~10万人,幼児期の30万人,学童以降の100万人の合計約150万人が,わが国における食物アレルギー人口であると考えられる.

参考文献

1) 今井孝成,飯倉洋治:即時型食物アレルギー 食物摂取後60分以内に症状が出現し,かつ医療機関を受診した症例(第1報).アレルギー52(10):1006-1013, 2003
2) 今井孝成:即時型食物アレルギー 食物摂取後60分以内に症状が出現し,かつ医療機関を受診した症例(第2報).アレルギー53(7):689-695, 2004
3) 今井孝成,板橋家頭夫:学校給食における食物アレルギーの実態.日児誌109(9):1117-1122, 2005
4) 今井孝成:学校給食における食物アレルギーの対策.アレルギー54(10):1197-1202, 2005
5) 今井孝成,小俣貴嗣,緒方美佳,富川盛光,田知本寛,宿谷明紀,海老澤元宏:遷延する食物アレルギーの検討.アレルギー56(10):1285-1292, 2007

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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