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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生72巻3号

2008年03月発行

視点

アレルギーは何故増えたか?

著者: 石坂公成1

所属機関: 1ラホイヤアレルギー免疫研究所

ページ範囲:P.170 - P.171

文献概要

 花粉を吸い込んで鼻炎を起こす人がいることは欧米では80年前から知られていたが,その当時は,花粉を吸い込んだ人の中で病気になる人は極めて僅かだったから,花粉症は特異体質によって起こる病気だと考えられていた.一方,今から50年前には花粉症は日本には存在しないと考えられていたが,1970年代になるとスギ花粉やハウスダスト(主要なアレルゲンはダニ)による花粉症がだんだん増え,80年代にはこの病気は極めてpopularな病気になってしまった.現在では日本の全人口の20%は花粉症を持っているし,これに気管支喘息やアトピー性皮膚炎を加えると,日本人の約1/3はアレルギー性疾患に罹ったことがあると言われている.

 なぜ日本では急激にアレルギーが増えたのだろうか?少なくともスギ花粉症に関する限りは,患者の数とスギのアレルゲンに対するIgE抗体を持っている人の数(陽性率)の間には強い相関がある.スギ花粉症の患者は例外なくスギ花粉に対するIgE抗体を持っているし,肥満細胞に結合したIgE抗体にアレルゲンが反応すると,肥満細胞はヒスタミンやロイコトリエンのような誘発物質を遊離するだけでなく,アレルギー炎症に関与するTNFαやIL-5を産生する.IgE抗体の産生において主役を演ずるTh2細胞も,アレルゲンの刺激によって多くのIL-5を産生する.したがって日本で花粉症が増えたのは日本人の免疫系がアレルゲンに対してTh2 typeの応答をし,IgE抗体を作るようになったためではないかと思われる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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