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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生72巻5号

2008年05月発行

雑誌目次

特集 うつの時代―うつ病を改めて理解する

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ページ範囲:P.343 - P.343

 厚生労働省や自治体による自殺対策が進められてきていますが,自殺による死亡者数は減少の兆しをみせず,相変わらず毎年3万人を超える水準で推移しています.そして,その背景には膨大な数のうつ病患者が存在していることが推定され,まさに現代は「うつの時代」と言えると思われます.

 本誌では,2005年5月号(69巻5号)の特集「こころの健康問題への挑戦」の中で,地域での自殺対策,うつ病対策やうつ病に関連した疫学を取り上げ,また2007年4月号(71巻4号)の特集「過労死,過労自死」の中で,労働,職場でのうつ病の問題を取り上げました.しかし,保健所や市町村で受けるうつ病についての相談は,中高年や労働に関連したものだけではなく,高齢者や子どもを含む幅広い年齢層を対象としたものであると思われます.

最新のうつ病の概念

著者: 戸田裕之 ,   野村総一郎

ページ範囲:P.344 - P.349

 近年,「うつ病」という言葉の認知は急速に広まっていると言えよう.本邦における自殺者数が毎年3万人を超える高水準で推移していることや,国際分類であるDSM-IV(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 4th ed)とICD-10(International Classification of Disease, Injuries, and Causes of Death, 10th Revision)において操作的診断分類が採用されていることと,うつ病の浸透とは無関係ではあるまい.一方で,その概念が不十分なままに流布し,うつ病の理解が表面的なものに留まっており,社会的な混乱を少なからず引き起こしていることも紛れもない事実であろう.

 本稿では,躁うつ病の概念を初めて確立したKraeperin以降の概念について解説を加えた後に,現在主流となっているDSM-IVとICD-10によるうつ病について述べる.また,近年話題になっている「逃避型抑うつ」や「未熟型うつ病」「現代型うつ病」も紹介し,さらには,現時点で判明しているうつ病の生物学的な病態についての簡単な説明も加え,うつ病の概念の包括的な解説を試みた.なお,筆者らに与えられたテーマは最新の「うつ病」の概念についてであるが,DSM-IVとICD-10ではうつ病は気分障害の下位項目に分類されており,うつ病を理解するためには他の気分障害の理解も不可欠である.故に,うつ病を中心にしながらも,気分障害全体についても論じている.

うつ病の疫学

著者: 立森久照 ,   長沼洋一 ,   八木奈央 ,   竹島正

ページ範囲:P.350 - P.354

 厚生労働科学研究費補助金による研究事業として「こころの健康に関する疫学調査」が実施された.これは世界保健機関(World Health Organization: WHO)の提示した精神・行動障害に関する国際的な疫学研究プロジェクトである世界精神保健(World Mental Health: WMH)に参加して実施された,こころの健康に関する最新の本格的疫学的研究である.

 WMHは,WHOプロジェクトの定める方法論に則り,WMH調査票(WHO統合国際診断面接〔Composite International Diagnostic Interview: CIDI〕をもとに,危険因子等のセクションを追加したもの)を用いた訪問面接によって,こころの健康に関する疫学,つまり気分障害など国民の健康に直結する障害の現時点での有病率,生涯にわたる罹患率,社会生活への影響について,国民の代表とみなせるサンプルを対象に調査することを目的とするものである.

子どものうつ病

著者: 傳田健三

ページ範囲:P.355 - P.358

子どものうつ病は見逃されてきた

 近年,子どものうつ病が一般に認識されているよりもずっと多く存在するということが明らかになってきた.しかも,従来考えられてきたほど楽観はできず,適切な治療が行われなければ,青年あるいは大人になって再発したり,他の様々な障害を合併したり,対人関係や社会生活における障害が持ち越されてしまう場合も少なくない.今や子どものうつ病を正確に診断し,適切な治療と予防を行うことが急務となっている1,2)

 ところがわが国では,いまだに児童精神科医の間でさえ,子どものうつ病に対する認識は乏しいと言わざるを得ない.これまで,わが国では子どものうつ病という現象は見逃されてきたと言うことができるだろう.子どもの不適応を何でも精神障害と関連づけて考えることには慎重でなければならないが,近年見られる不登校やいじめの問題において,不適応を起こして落ち込んだり,引きこもったり,自殺を試みたりする子どもたちを,今一度,うつ病という視点から検討する必要もあるのではないだろうか1,2)

青年期のうつ病

著者: 坂元薫

ページ範囲:P.359 - P.363

 児童・思春期のうつ病や更年期のうつ病,老年期のうつ病がとり上げられることが多いのに比べて,青年期のうつ病は,意外にも正面から扱われることが多いとは言えない領域である.

 20代の若者が何らかの抑うつ症状を主訴に受診した場合に,典型的なうつ病を想定する臨床家は少ないのではないか.たとえDSM-IV-TR1)のような国際的に繁用される操作的診断基準で「大うつ病エピソード」という診断がつくとしても,どこか「本当のうつ病」との微妙なニュアンスの差異を感じとる臨床家が少なくないのが現実であろう.

高齢者のうつ病

著者: 高橋晶 ,   朝田隆

ページ範囲:P.364 - P.367

 今日,高齢社会の進行に伴い,高齢者に特有な精神障害患者も増加しつつある.その中でもうつ病は認知症と並んで頻度の高い疾患である.これは単に精神科のみならず,医療全体において取り組むべき重要な問題となっている.

 その背景には高齢者のおかれる環境が,配偶者との死別や自らの身体疾患など様々な喪失体験を経験しやすいことがある.その一方で,うつ病が認知症と誤診されたり,併存していることもしばしばある.このような高齢者のうつ病について,臨床上のポイントを以下に述べる.

女性のライフサイクルとうつ

著者: 加茂登志子

ページ範囲:P.368 - P.373

 一般に,小児・学童期の発達障害などは男児に多く発症するが,思春期頃から女性の罹患率が増大し,閉経以降,女性の精神疾患罹患率はさらに上がるとされている.表に合衆国とわが国における精神疾患の生涯罹患率を男女別に示した1).気分変調症,双極性障害,季節連関性うつ病など,一般に気分障害は女性に多く発症し,なかでもうつ病はおよそ2:1で女性に多く見られることが知られている.気分障害と並んでパニック障害や社会恐怖,全般性不安障害などの不安障害も女性に多い.また,外傷後ストレス障害(PTSD)も同様である.

 うつ病が女性に多い要因としては,女性ホルモンの疾病成因や経過への関与と共に,ライフサイクル上に生じる様々な身体的,心理社会的ストレスが,うつ病発症の状況因となることが挙げられよう.うつ病はとりわけ性成熟期に好発する.うつ病の有病率は20代後半から30代前半と更年期の2つの人生のステージにおいてピークを迎える.本稿では,女性のライフサイクルに生じる心理社会的危機と女性ホルモン分泌の変動に伴う危機について振り返った上で,女性のうつ病における4つの重要な臨床的状況と言われる,月経に関連するうつ病,妊娠とうつ病,産後うつ病,そして閉経期(更年期)におけるうつ病について述べたい.

精神保健福祉センターのうつ病休職者・退職者への再チャレンジ支援―精神科デイケアの新たな役割と可能性

著者: 菅原誠

ページ範囲:P.374 - P.379

 わが国の行政におけるうつ病対策は,主に自殺予防対策として進められてきた.現在,東京都では自殺総合対策東京会議を設置し,自殺防止キャンペーンや実態調査,ゲートキーパーの養成,遺族支援など総合的に取り組みつつある.

 一方で,産業保健の分野では,メンタルヘルスの問題による休職者の増加への対策の必要性が強く言われ続けてきた.こうした状況の中で,30~50歳代の働き盛りの自殺の要因の1つと考えられている1),うつ病による休職者あるいは失職者の再チャレンジを支援する意義は,自殺予防対策の見地からも,産業保健の見地からも大きいと考え,東京都立中部総合精神保健福祉センター(以下,当センター)では,うつ病休職者に対する復職支援を目的とした精神科デイケア「うつ病リターンワークコース」を開設するに至った.

うつ病患者の家族支援

著者: 山口律子

ページ範囲:P.380 - P.383

 わが国では,平成10年以降自殺死亡者が3万人を超える状況が続いている.

 自殺者の背景には,健康問題,経済問題,家庭問題,社会や職場の急激な変化など,様々な社会的な要因が複雑に絡み合っている現状がある.様々な状況の中で「うつ」状態に陥り,自殺に至ることも少なくない.

視点

健康という幻想―リスク分散・バランス感覚の大切さ

著者: 福島哲仁

ページ範囲:P.336 - P.337

 私が大学生だった時に,ルネ・デュボス(著)『健康という幻想』という本を読んだ.この本は,いろいろな歴史的事例がたくさん書かれていて面白そうな反面,大変難解な文章で,学生だった私が詳細を理解するのは難しかったように記憶している.今懐かしく感じながらその本を手に取り,この「健康という幻想」という言葉の意味を再び自分に問い直している.

 人類は,農耕を始めた1万年前と比較しても生物学的には進化をしていないと言われている.先進諸国の寿命の延長は,人類が遺伝子レベルで進化したのではなく,栄養状態や衛生状態の改善,医療の進歩などによってもたらされたのである.今日の治療医学の急激な進歩は,あたかも人類が「不老不死」の妙薬を手に入れつつあるかのような錯覚を覚えさせる.しかし,ひたすら低下を続けた日本の死亡率は,1985年あたりから増加に転じ,寿命の延長も限界に近づいている.一方,私たち人類の生活様式と病気との関係を考えてみると,ある病気を減らす生活様式が広まると,別の新しい病気が増えるという歴史を繰り返してきたと言っても過言ではない.近代の栄養状態や衛生状態の改善は,栄養失調や感染症を減らすことに大きく寄与したが,代わりに肥満や生活習慣病,アレルギー性疾患を増やしたとも言えるだろう.また医学の進歩によって新たな病気が発見され,昔の死因は老衰でよかったものが,そうは許されないのであるから,病気の数は増えることはあっても減ることはない.多くの人は最期は何か「病名」がつき,それが死因となるわけで,人類は病気とは縁が切れないように思われる.

トピックス

IANPHI(世界国立公衆衛生機関協会)

著者: 篠崎英夫 ,   遠藤弘良

ページ範囲:P.384 - P.386

背景

 21世紀に入り,世界ではSARSや鳥インフルエンザといった新興再興感染症によるパンデミックやバイオテロの脅威が高まっている.一方,途上国においても糖尿病やがん・循環器疾患が増加傾向にある.これらはいずれも個別の国だけで解決できるものではなく,地球規模の取り組みが必要な公衆衛生的課題である.しかもその迅速かつ確実な解決には,科学的根拠に基づいた分析や対策が不可欠となっている.

 しかしながら,途上国の中には未だに新たな公衆衛生的課題に取り組む国レベルの公衆衛生機関が存在しない国や,存在していても新たな課題に対応できる技術力や資源が十分でない国が多数存在する.また感染症対策,環境衛生対策等,個別に担当する組織が存在しても,公衆衛生的視点から包括的な対策を取るための連携が不十分な国もある.

特別記事 地域在宅ケアを考える・4[座談会]

在宅で看取るという選択

著者: 蛭田みどり ,   尾崎梓 ,   島本多江 ,   前川佳子 ,   宮崎経生 ,   三井ひろみ

ページ範囲:P.387 - P.393

蛭田(司会) 本日は,「ケアタウン小平クリニック」を利用して,在宅でご家族を看取られた経験をお持ちの方々においでいただきました.昨年4月から施行された「がん対策基本法」からもわかりますように,国のほうでも在宅の緩和ケアに力を入れております.しかし,まだまだ家で看取るということを経験された方が少ないのが現状です.今回皆さんからお話をいただくことで,これから在宅ケアを普及させるには何が必要なのかを考えてみたいと思います.最初に自己紹介からお願いします.

島本 島本多江と申します.私は主人を2007年7月に看取りました.病名は脳腫瘍です.途中入院していた時期もありますが,1年3か月ほど在宅療養をしていました.子どもは3人で,上の子が会社員,真ん中が大学生,下は中学3年生という家族構成です.

連載 Health for All―尾身茂WHOをゆく・41

日本におけるパンデミックインフルエンザ対策

著者: 尾身茂

ページ範囲:P.338 - P.341

 平成20年2月29日に開催された「与党(自民党・公明党)鳥由来新型インフルエンザ対策に関するプロジェクトチーム」に招かれて講演をする機会を頂いた.このため,今回は「健康と文明」のテーマを中断し,この内容について述べよう.

 まず,パンデミックの危険性に対するWHOの状況分析について述べた.

公衆衛生のオルタナティブ・2

【鼎談】がんと循環器疾患の予防対策(下)

著者: 大島明 ,   磯博康 ,   坪野吉孝

ページ範囲:P.394 - P.399

医療費抑制とセットの予防対策論議

坪野 今回,特定健診の実施主体が保険者になったことの動機の1つは,医療費の上昇抑制です.けれども,仮にがん検診の実施主体を市町村から保険者に移した時,がん医療費の上昇抑制というのはおそらくなかなか難しいと思います.がん検診の場合は検査そのものに相当コストがかかり,しかも500人に1人とか1,000人に1人ぐらいしか見つからないというものですから,保険者の予防給付としてがん検診を行ったとしても,おそらく医療費の抑制には結びつきにくいでしょう.するとコストが増える可能性がある予防対策を,保険に組み込めるかどうかが一番大きな課題だろうと思います.

大島 メタボリックシンドロームに焦点を当てた健診・保健指導に関しても,医療費が削減できるということは幻想かもしれません.がん検診にしても,その他循環器にしてもそうですが,健診・検診はまずは当該の病気なり,がんの死亡率を減少できるかどうか有効性をきちんと評価した上で,次はどれだけのコストでどれだけ救命できるかという費用効果比を一定のコンセンサスを得た基準のもとで検討すべきと思います.今回の特定健診・特定保健指導の場合,そこをスキップして,医療費の削減につながるという理屈だけで導入しようとしていますが,そのエビデンスは非常に曖昧です.

予防活動のガイドライン・5

うつ・自殺

著者: 中尾睦宏

ページ範囲:P.400 - P.403

Summary of Recommendations

 成人のうつは臨床現場でスクリーニングしたほうがよい.ただし,正確な診断・適切な治療・経過観察をする環境が整っていることが条件である(評価:推奨レベルB).

 小児や青少年のうつについては,ルーチンでスクリーニングすべきか否か断言できない.まだ証拠が不十分である(評価:推奨レベルⅠ).

地域における自殺対策の新展開―自殺は予防できる・2

青森県の自殺対策

著者: 渡邉直樹

ページ範囲:P.404 - P.409

青森県の自殺死亡率の特徴

 青森県は平成14年から4年続けて自殺死亡率全国ワースト2という位置である.平成15年には576名という自殺者を出し,ある統計の専門家から「次は青森が1番だよ」とかなり確信を持って言われていたが,幸いに私が赴任してから少しずつ自殺者は減り,現在に至っている(図1).

 図2で年齢別に見てみると,やはり中高年男性の自殺が多いというのが特徴であるが,地域差があり,特に津軽地域は男性の中高年の自殺者が非常に多いという特徴がある.南部地域の岩手県境の町村は,それプラス男性・女性の高齢者が多いという特徴がある.

保健予防事業のアウトソーシング最前線・15【最終回】

保健アウトソーシングの発展に必要な今後の取り組み

著者: 山田敦弘

ページ範囲:P.410 - P.412

医療保険者,企業,アウトソーサーの取り組み

 1.問題意識と取り組みの現状

 連載第7~14回まで,医療保険者,企業,アウトソーサー(ここでは保健予防事業の委託先)の取り組みの現状について貴重なご報告をいただいた.いずれも,立場は違うが保健予防を推進するために,問題意識を抱えながらも取り組んでいる様子であった.

 医療保険者は,保健予防事業におけるアウトソーシングの拡大にあたって,その実施責任者としての管理能力を向上させる必要性があるという問題意識を抱えている(第8回).また企業内健康管理室は,常時抱えておく必要のない職種のアウトソーシングを進めることや,保健指導にかかる多大な時間は,労働生産性の減少に繋がるため,健康的に仕事ができるという成果を示す必要があるという問題意識を抱えている(第10回).

PHNに会いたい・9

―栃木県真岡市・両親学級「ピアカウンセリング」―先輩からプレパパ・プレママへつなぐ市民の安心

著者: 荘田智彦 ,   鱒渕清子 ,   鎌田玲子 ,   相田美智子

ページ範囲:P.413 - P.419

 真岡市の両親学級のことを耳に留めていたのは,もう5年近く前のことです.2003(平成15)年の5月,私は宇都宮市で開かれた栃木県市町村業務研修会に参加しました.その時の市町村保健師会の会長が真岡市の鱒渕清子さんでした.「混迷の時こそ,保健師の意識改革を!」のサブタイトルは,今でもそのまま通用しそうですが,研修前にいただいたお手紙には〈(サブタイトルの「混迷」とは)時代の混迷と,その動きに巻き込まれている保健師の混迷を指しています.私たち職能が私たちらしく生き生きと,生きて活動できるように進んでいきたいと思います.〉とありました.そして,この研修会の折に鱒渕さんから,真岡市の驚きの母子保健の取り組みを聞きました.今回の取材は,あの真岡市はその後どうなっているか,あの日の鱒渕保健師(PHN)はまだ健在かと,訪ねたい思いが強くあったのです.

 手元に5年前鱒渕保健師(以後敬称略)からもらった資料コピーがあります.『生活教育』2002年6月号に鱒渕が報告していた『ピアカウンセリング効果を活用した両親学級の実際』(特集/父親の育児参加支援に向けて―その役割意識をどう高めていくか)です.そこには,妊娠・出産・子育て期の母親たちを支援するためには,妊娠中の夫の協力や父親の育児参加が不可欠であるという考えから,真岡市では1997(平成9)年からピアカウンセリングを活用した両親学級を実施してきたと記されていました.

楽しく性を語ろう―性の健康学・9

性同一性障害・トランスジェンダー

著者: 中村美亜

ページ範囲:P.420 - P.421

 今の学生にとって「性同一性障害」という言葉は,随分身近なものであるらしい.テレビ番組『3年B組金八先生』がこの問題を取り上げた効果は大きかった.またフェンシング元日本代表の杉山文野さんや,NHK紅白歌合戦に出場した中村中(あたる)さんなど,性同一性障害であることを公表している有名人も多いからだろう.そこで今回の授業では,「性同一性障害とは何か?」よりも,「性同一性障害は,なぜ“障害”か?」に焦点を当てることにし,「トランスジェンダー」との違いについても話をすることにした.

 まず最初にNHK教育テレビの『ハートをつなごう』で放映された「性同一性障害(第1回)」を見た.これを選んだのは,番組の冒頭で杉山文野さん自身が「性同一性障害って言うと,なんだか暗~いというイメージがあるけど,もっと明るく楽しくいきたい」と話しているように,「性同一性障害=かわいそうな人」という印象があまり強調され過ぎない番組作りになっているからだ.確かに「かわいそうな」面はあるが,そこをあまり強調しても「特別な人扱い」されて終わってしまう.

衛生行政キーワード・43

がん検診の受診率向上と精度管理の充実に向けた取組

著者: 古元重和

ページ範囲:P.422 - P.424

 平成19年6月に閣議決定された「がん対策推進基本計画」において,がん早期発見の重要性の観点から,がん検診の受診率を5年以内に50%とすること,およびすべての市町村において精度管理・事業評価が実施されることが目標とされた.

 がん対策推進基本計画に定めた目標に向け,国民のがん検診への要望に応えるためには,「有効な」がん検診を,より「多くの人に」「正しく」実施することが必要であり,現状を正確に認識した上で,目標の達成に向けた着実な前進が求められている.

研修医とともに学ぶ・2

まずは「誤解」を解くことから始めた

著者: 嶋村清志

ページ範囲:P.373 - P.373

 滋賀県甲賀保健所管内は,琵琶湖の東南部に位置しており,甲賀市と湖南市のみを管轄しています.信楽盆地などの丘陵地の他旧東海道と野洲川一帯の平地からなり,この平成20 年2 月の新名神高速道路開通に伴い,近畿圏と中部圏をつなぐ広域交通拠点になりつつある地域です.管内人口は15 万人,高齢化率17.8%,歴史的には甲賀流忍者や配置薬などが知られており,製薬業や信楽焼が有名です.福祉では糸賀一雄氏のラストメッセージ「この子らを世の光に」ゆかりの近江学園(児童福祉施設)があります.

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あとがき フリーアクセス

著者: 西田茂樹

ページ範囲:P.426 - P.426

 うつ病については,マスコミ等でも度々取り上げられるようになってきていますが,まだまだ市民には十分に理解されていないように感じています.そのため,うつ病に罹患し苦しんでいるにもかかわらず,医療機関を受診していない人がまだ多数存在しているのではないかと思います.また,「うつ病はこころの風邪」といった表現もかえって誤解を招き,うつ病患者への職場での対応や,家族の理解を誤らせてしまっている例もあるのではないかと思います.

 そこで,うつ病についての市民の理解を深めるための第一歩として,われわれ公衆衛生従事者がより詳しい知識を持つこと目的に,うつ病を特集に取り上げました.

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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