icon fsr

文献詳細

雑誌文献

公衆衛生72巻5号

2008年05月発行

文献概要

特集 うつの時代―うつ病を改めて理解する

女性のライフサイクルとうつ

著者: 加茂登志子1

所属機関: 1東京女子医科大学附属女性生涯健康センター

ページ範囲:P.368 - P.373

文献購入ページに移動
 一般に,小児・学童期の発達障害などは男児に多く発症するが,思春期頃から女性の罹患率が増大し,閉経以降,女性の精神疾患罹患率はさらに上がるとされている.表に合衆国とわが国における精神疾患の生涯罹患率を男女別に示した1).気分変調症,双極性障害,季節連関性うつ病など,一般に気分障害は女性に多く発症し,なかでもうつ病はおよそ2:1で女性に多く見られることが知られている.気分障害と並んでパニック障害や社会恐怖,全般性不安障害などの不安障害も女性に多い.また,外傷後ストレス障害(PTSD)も同様である.

 うつ病が女性に多い要因としては,女性ホルモンの疾病成因や経過への関与と共に,ライフサイクル上に生じる様々な身体的,心理社会的ストレスが,うつ病発症の状況因となることが挙げられよう.うつ病はとりわけ性成熟期に好発する.うつ病の有病率は20代後半から30代前半と更年期の2つの人生のステージにおいてピークを迎える.本稿では,女性のライフサイクルに生じる心理社会的危機と女性ホルモン分泌の変動に伴う危機について振り返った上で,女性のうつ病における4つの重要な臨床的状況と言われる,月経に関連するうつ病,妊娠とうつ病,産後うつ病,そして閉経期(更年期)におけるうつ病について述べたい.

参考文献

1) Burt VK, Hendrick VC:Concise guide to Women's Mental Health second edition. American Psychiatric Publishing, Washington DC, London, England, 2001
2) 加茂登志子:女性の生き方とストレス.久米美代子,飯島治之(編著):ウーマンズヘルス.医歯薬出版,2007
3) 林直樹:女性の精神障害の特徴.実践・女性精神医学,p286,創造出版,2006
4) Hochberg Z, Pacak K, Chrousos GP:Endocrine Withdrawal Syndromes. Endocr Rev 24:523-538, 2003
5) 玉舎輝彦:ライフステージと女性ホルモン―女性のライフステージにおける性差の出現とエストロゲン.医学のあゆみ219(5):321-326,2006
6) American Psychiatric Association:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Diorders. Fourth Edition Text Revision, American Psychiatric Association, 2000(高橋三郎・他訳:DSM-IV精神疾患の診断・統計マニュアル.医学書院,2002)
7) Altschuler LL, Cohen LS, Moline ML, et al:The Expert Consensus Gaidline Series;Treatment of Depression in Women 2001. The McGrau-Hill Companies Inc, 2001. 大野裕(訳):エキスパートコンセンサスガイドラインシリーズ;女性のうつ病治療2001.アルタ出版,2002
8) 岡野禎冶:産後うつ病とその発見―EPDSの基本的使用方法とその応用.母子保健情報51:13-19,2005
9) Parry B:Perimenopausal Depression. Am J Psychiatry 165:1, January 2008

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら