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連載 公衆衛生のオルタナティブ・2
【鼎談】がんと循環器疾患の予防対策(下)
著者: 大島明1 磯博康2 坪野吉孝3
所属機関: 1大阪府立成人病センターがん相談支援センター 2大阪大学大学院医学系研究科社会環境医学(公衆衛生学) 3東北大学公共政策大学院
ページ範囲:P.394 - P.399
文献購入ページに移動坪野 今回,特定健診の実施主体が保険者になったことの動機の1つは,医療費の上昇抑制です.けれども,仮にがん検診の実施主体を市町村から保険者に移した時,がん医療費の上昇抑制というのはおそらくなかなか難しいと思います.がん検診の場合は検査そのものに相当コストがかかり,しかも500人に1人とか1,000人に1人ぐらいしか見つからないというものですから,保険者の予防給付としてがん検診を行ったとしても,おそらく医療費の抑制には結びつきにくいでしょう.するとコストが増える可能性がある予防対策を,保険に組み込めるかどうかが一番大きな課題だろうと思います.
大島 メタボリックシンドロームに焦点を当てた健診・保健指導に関しても,医療費が削減できるということは幻想かもしれません.がん検診にしても,その他循環器にしてもそうですが,健診・検診はまずは当該の病気なり,がんの死亡率を減少できるかどうか有効性をきちんと評価した上で,次はどれだけのコストでどれだけ救命できるかという費用効果比を一定のコンセンサスを得た基準のもとで検討すべきと思います.今回の特定健診・特定保健指導の場合,そこをスキップして,医療費の削減につながるという理屈だけで導入しようとしていますが,そのエビデンスは非常に曖昧です.
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