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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生72巻6号

2008年06月発行

文献概要

特集 若者を性感染症から守る

若い女性における性感染症の大流行―クラミジア感染症を中心に

著者: 熊本悦明12 南邦宏3

所属機関: 1札幌医科大学 2日本性感染症学会 3札幌東豊病院

ページ範囲:P.436 - P.443

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若い女性の間に広がるSTD:女性優位のSTD時代

 “無症候の性感染症”ほど,公衆医学上問題の多い疾患はないのではないか? 現在わが国の10代の若者に環境汚染のように広がっている疾患は,この“無症候の性感染症”だと言っていい.かつては花柳病そして性病と言い,“遊ぶ男の病”とされていたものが,若者の性の自由化を背景に,性感染症として若い女性を中心に大流行している.現在高齢者の生活習慣病や,メタボリックシンドロームには医学界で大きく注目しているのに,次代を担う若者に密かに大流行している性感染症に対しては,公衆衛生行政があまり積極的な関心を示していないと,筆者は危機感を覚えている.

 数年前から“若い女性が危ない,クラミジア感染症の大流行”という危機感を持つ識者方の強力なしっかりした疫学データに基づいた啓蒙キャンペーンにより,後述するが最近多少その効果が出てきて,10代の若い女性たちのSTD大流行の勢いにやや歯止めがかかりつつある.しかしまだまだ大流行は続き,迫りつつあるHIV/エイズの流行受け入れへの環境準備が徐々に進んでいることを危惧している.しかしこの問題は,何故か社会問題としてほとんど表に出ない.

参考文献

1) 家坂清子:子どもたちの性―思春期外来.p40,日本放送出版協会,2007
2) 熊本悦明,南 邦弘:わが国における若年層の性感染症―われわれの“性感染症予防のための啓蒙活動”がごく最近少しずつ実を結ぶ流れが出てきた.皆様とともに予防啓発を頑張りましょう.産婦人科治療91:467-476,2005
3) 熊本悦明・他:本邦における性感染症流行の実態調査(疾患・年齢別,10万人・年対罹患率):1998年報告,日性感染症会誌10:40-60,1999
4) 熊本悦明・他:日本における性感染症(STD)流行の実態調査―1999年度のSTD・センチネルサーベイランス報告.日性感染症会誌11:72-103,2000
5) 熊本悦明・他:本邦における性感染症流行の実態調査―2000年度のSTD・センチネルサーベイランス報告.日性感染症会誌12:32-67,2001
6) 熊本悦明・他:日本における性感染症サーベイランス―2001年度調査報告.日性感染症会誌13:147-167,2002
7) 熊本悦明・他:日本における性感染症サーベイランス―2002年度調査報告.日性会誌15:17-45,2004
8) 白井千香,小野寺昭一:若年者における無症候性器クラミジア感染症の実態把握と蔓延防止システムについて.日性感染症誌17:28-34,2006
9) Takahashi S, et al:Incidence of sexually transmitted infection in asymptomac healthy young Japanese men. J Infect Chemother・他11:270-273, 2005
10) 余田敬子,尾上泰彦・他:当科及び性感染症クリニックにおける咽頭の淋菌及びクラミジア陽性率.口腔咽頭科20(2),in print, 2008

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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