icon fsr

文献詳細

雑誌文献

公衆衛生72巻6号

2008年06月発行

文献概要

視点

もっとポピュレーションアプローチを

著者: 伊木雅之1

所属機関: 1近畿大学医学部公衆衛生学

ページ範囲:P.428 - P.429

文献購入ページに移動
 予防医学の方法論にはハイリスクアプローチとポピュレーションアプローチがある.前者は初期患者や大きなリスクをもつ者を早期に発見し,早期に対策を実施するもので,健康診断がその代表だ.後者は個人のリスクの大きさには関係なく,集団全体に働きかけ,多数の人々のリスクを少しずつ下げて,全体としては相当数の疾患発生を防ごうとするものである.日本では女性が妊娠届けを出したその時から死ぬまで,法定の健康診査,健康診断が提供される.妊婦健診,乳児健診,1歳6か月児健診,3歳児健診,就学前健診,学校健診,特定検診,そして,職場の特殊健診やがん健診や骨粗鬆症健診などだ.さらには人間ドックや脳ドックなどに補助金を出している企業や保険者もある.さても健診好きの民族かな,と外国人は驚く.健診のすべてが有効であるというエビデンスが必ずしもないことも問題だが,ハイリスクアプローチには原理的な限界がある.

 ハイリスクアプローチではスクリーニング検査などの方法でハイリスク群を同定し,それに濃厚な対策を講じる一方,ローリスク群は捨て置かれる.ローリスク群からの対象疾患の発生リスクは低いが,群の人数が多いので,ハイリスク群からの発生を上回る患者が生じてしまう.ハイリスクアプローチではこれらの患者の発生を予防できないのだ.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら