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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生72巻7号

2008年07月発行

文献概要

特集 たばこ研究

禁煙治療・禁煙支援に関する研究成果と今後の課題

著者: 中村正和1

所属機関: 1大阪府立健康科学センター健康生活推進部

ページ範囲:P.543 - P.548

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医療の場での禁煙治療の制度化を目指した研究

 筆者らは2004年度より厚生労働省の第3次対がん総合戦略研究事業の中で,保健医療の場での禁煙支援・治療の制度化について政策提案を行うための研究(policy research)を実施している1,2).本研究班全体の目的は,肺がんをはじめとする喫煙関連がんの1次予防の推進を目指して,喫煙者に対する禁煙治療・支援の推進と喫煙者の禁煙の動機を高める環境整備の両視点から,禁煙者を増加させるための効果的な方策や方法論を開発するとともに,その普及方策を検討し,政策化の検討に役立つエビデンスに基づいた資料を提示することにある.

 本研究の一環として,2006年度の診療報酬の改定に合わせて,医療の場での禁煙治療に対する保険適用の実現を図るべく,政策提言のためのエビデンスを収集・整理するとともに,医学会や日本医師会等の団体・組織と協働して厚生労働省に対して政策提言を行った.保険適用の政策提言にあたっての基本方針として,予防給付がなされていないわが国の現状を踏まえ,喫煙をニコチン依存症という病気として捉え,その治療に対しての保険給付を提案することとした.2006年度の診療報酬の改定から保険適用にあたり,その申請書にあたる「医療技術評価希望書」の作成が必要となった.そこで,関連学会や日本医師会と協働して,同希望書の作成を行うこととし,作成に必要となったニコチンの依存性や禁煙治療の有効性に関する科学的根拠のレビュー,保険適用の対象となる禁煙治療プログラムの検討,禁煙治療を保険適用した場合の医療費への影響の推定,諸外国での禁煙治療の実態の把握などを研究班が中心となって実施した1).そして2005年6月に日本循環器学会が厚生労働省保険局医療課に対して医療技術評価希望書を提出した他,日本気管食道科学会が日本循環器学会が提出した同じ内容の医療技術評価希望書を資料として,日本医師会長宛に禁煙治療に対する保険適用の要望書を提出した.さらに,日本循環器学会や日本呼吸器学会などの禁煙に取り組む9学会が,厚生労働省保険局医療課長に対して禁煙治療の保険適用の要望書を提出した.

参考文献

1) 中村正和:医療の場における効果的な禁煙支援法の開発と普及のための制度化に関する研究.厚生労働科学研究費補助金 第3次対がん総合戦略研究事業「効果的な禁煙支援法の開発と普及のための制度化に関する研究」.平成16~18年度総括・分担研究報告書(主任研究者/大島明),2005~2007
2) 中村正和:禁煙を効果的に推進する保健医療システムの構築に関する研究.厚生労働科学研究費補助金 第3次対がん総合戦略研究事業「効果的な禁煙支援法の開発と普及のための制度化に関する研究」.平成19年度総括・分担研究報告書(主任研究者/中村正和),2008
3) 9学会合同研究班(編):禁煙ガイドライン.Circulation Journal 69(Suppl. Ⅳ):1005-1103, 2005
4) Kawakami N, Takatsuka N, Inaba S, et al:Development of a screening questionnaire for tobacco/nicotine dependence according to ICD-10, DSM-III-R, and DSM-IV. Addictive Behavior 24:155-166, 1999
5) 日本循環器学会,日本肺癌学会,日本癌学会:禁煙治療のための標準手順書 第3版,2008
6) 厚生労働省中央社会保険医療協議会診療報酬改定結果検証部会:平成18年度診療報酬改定結果検証に係る調査 ニコチン依存症管理料算定保険医療機関における禁煙成功率の実態調査報告書.平成19年5月16日(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/05/dl/s0516-5c.pdf)
7) 厚生労働省中央社会保険医療協議会診療報酬改定結果検証部会:平成18年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(平成18年度調査)の結果について.平成19年5月16日(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/05/dl/s0516-5a.pdf)
8) 五島雄一郎,兼本成斌,並木正義・他:ニコチン依存喫煙者でのBa 37142(Nicotine TTS)の臨床効果―多施設協同二重盲検比較試験.臨床医薬10:2023-2059,1994
9) 五島雄一郎,兼本成斌,並木正義・他:喫煙関連疾患を有する喫煙者での禁煙補助薬Ba37142(Nicotine TTS)の臨床効果―多施設協同第Ⅲ相二重盲検比較試験.臨床医薬10:1801-1803,1994
10) 厚生労働省中央社会保険医療協議会診療報酬改定結果検証部会:診療報酬改定結果検証に係る特別調査(平成19年度調査)ニコチン依存症管理料算定保険医療機関における禁煙成功率の実態調査結果概要(速報).平成19年10月10日(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/10/dl/s1010-5h.pdf)
11) Ferguson J, Bauld L, Chesterman J, et al:The English smoking treatment services:one-year outcomes. Addiction 100(Suppl. 2):59-69, 2005
12) Nakamura M, Lam TH, Chan S, et al:International Comparative Study for Effective and Efficient Smoking Cessation Treatment(効果的かつ効率的な禁煙治療の普及方策に関する国際比較研究).財団法人ファイザーヘルスリサーチ振興財団第14回(平成17年度)助成金による国際共同研究結果報告,2006年12月
13) 厚生労働省保険局医療課事務連絡「平成20年度診療報酬改定関連通知の一部訂正について」(2008年3月28日)
14) 中村正和:禁煙治療の質の向上と普及に関する取り組み計画(JSTOP仮称)の概要紹介.日本禁煙医師連盟通信17(1):5-7,2008
15) 中村正和,片野田耕太,雑賀公美子:喫煙とメタボリック・シンドローム発症の関係についての文献的考察.平成18~19年度厚生労働科学研究費補助金循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業「たばこに関する科学的知見の収集に係る研究」平成18~19年度 総括・分担研究報告書(主任研究者/祖父江友孝),2007~2008
16) 日本公衆衛生学会:「標準的な健診・保健指導プログラム」に対する意見表明について.日本公衛誌54(5):291-292,2007
17) Cahill K, Stead LF, Lancaster T:Nicotine receptor partial agonists for smoking cessation. Cochrane Database of Systematic Reviews 2007, Issue 1
18) Nakamura M, Oshima A, Fujimoto Y, et al:Efficacy and Tolerability of Varenicline, an α4β2 Nicotinic Acetylcholine Receptor Partial Agonist, in a 12-Week, Randomized, Placebo-Controlled, Dose-Response Study with 40-Week Follow-Up for Smoking Cessation in Japanese Smokers. Clinical Therapeutics 29:1040-1056, 2007

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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