公衆衛生72巻9号

2008年09月発行

特集 現代の貧困と健康

生活困窮者の医療問題

著者： 本田徹¹²

所属機関： ¹浅草病院 ²シェア＝国際保健協力市民の会

ページ範囲：P.704 - P.707

　21世紀初頭の日本社会における生活困窮者は，①老齢基礎年金などだけが頼りの，最低生活を強いられている高齢者，②生活保護を受給している個人や家族，③派遣労働や不定期就労で安定した収入を得られない若者・壮年層(いわゆるワーキングプア)，④ホームレス者やそれに類似した境遇の人々，⑤在日外国人(特に資格外就労者，オーバーステイ者)など，多様な人々を含む．これら異なった条件下に置かれた集団それぞれに，異なった医療問題と保健ニーズが存在することはもちろんだが，共通する課題も多い．

　筆者は，東京都台東区・荒川区にまたがる「山谷」に隣接した地域の病院で臨床医として働く一方，国際保健の分野で活動するNPO法人・シェアの代表として，海外での保健教育，HIV/AIDS，プライマリ・ヘルス・ケア(PHC)にかかわる仕事を継続してきた．シェアでは，1991年より在日外国人の健康相談に応じる形で，彼らの保健上の課題を共に考え，分析し，医療アクセスの改善や人権の保障などのために微力を注いできた．

参考文献

１) 本田徹：養老孟司さんの頭の中の「バカの壁」―ホームレスは働かなくても食える存在という神話を問う．季刊Sherter-less No19，2003新宿ホームレス支援機構

２) 富田茂，大脇甲哉・他：在日外国人無料健康診断受診者の結核．第22回日本国際保健医療学会総会抄録集，2007

３) 労住医連編集部：療養病床から介護施設へ―その論点(第4回)．pp8-11，労働者住民医療2008年1-2月号

４) 滝脇憲：「社会的入院」問題から居住支援と地域ケアを考える(上)，(下)．季刊Sherter-less No33，No34，2007新宿ホームレス支援機構

５) 逢坂隆子・他：大阪市におけるホームレス者の死亡調査．日本公衛誌50：686-695，2003

６) 石川信克：結核の現状とこれからの課題―都市結核研究班からの発信．季刊Sherterless 24：27-35，2005

７) Celestine Nyamu-Musembi, Andrea Cornwall:What is the "rights-based approach" all about? Perspectives from International Development Agencies IDS Working Paper 234, Institute of Development Studies at the University of Sussex, 2004

８) Tudor Hurt:The Inverse Care Law. 5.5 Improving Equity in Health Care Oxford Textbook of Public Health Practice, 2d Edition, 2006

９) アマルティア・セン：貧困の克服―アジア発展の鍵は何か．集英社新書，2002

10) 関連機関のウエブサイト：　　浅草病院　http://www.asakusa-hp.jp/ 　　シェア＝国際保健協力市民の会　http://share.or.jp 　　訪問看護ステーションコスモス　http://www3.ocn.ne.jp/~s.cosmos/ 　　山友会　http://www2.gol.com/users/sanyukai/ 　　きぼうのいえ　http://www.kibounoie.info/ 　　ふるさとの会　http://www.d5.dion.ne.jp/~hurusato/ 　　友愛会　http://www.you-i-kai.com/ 　　新宿連絡会　http://www.tokyohomeless.com/ 　　結核予防会結核研究所　http://www.jata.or.jp/