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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生72巻9号

2008年09月発行

文献概要

特集 現代の貧困と健康

母子・父子家庭の健康問題と支援活動

著者: 有本晃子1

所属機関: 1京都市伏見保健所醍醐支所健康づくり推進室

ページ範囲:P.717 - P.723

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 近年,離婚件数,未婚の母の増加にともない,ひとり親家庭が増加している(図1).平成15年11月現在,母子世帯(父のいない満20歳未満の未婚の子どもがその母によって養育されている世帯)は1,225,400世帯(全世帯数の2.7%),父子世帯(母のいない満20歳未満の未婚の子どもがその父によって養育されている世帯)は173,800世帯(同0.4%)になっている1).さらに母子のみの世帯は788,000世帯(全世帯数の1.7%),父子のみの世帯は89,000世帯(同0.2%)であり,18歳未満の児童のいる世帯で見ると,6.8%がひとり親と未婚の子のみの世帯であると報告されている2)

 ひとり親家庭を対象とした調査3,4)(表1)では,母子世帯の3/4以上,父子世帯の約2/3が「現在の生活が大変苦しい,または苦しい」と答えている.また平成17年の年間平均収入は,母子世帯で213万円(一般世帯の37.8%),父子世帯で421万円(同74.7%)と低く,生活保護受給率は9.6%であった1).さらに表2に示すように「現在困っていること」として,「経済面」と答えた者が最も多く,ひとり親家庭の苦しい経済状態が明らかとなっている3,4,5).また健康面について見ると,大阪市調査(表2)で母子家庭の4割以上,父子家庭の3割以上が「現在困っていること」として「健康面」を挙げている3)

参考文献

1) 厚生労働省雇用均等・児童家庭局:全国母子世帯等調査,2003
2) 総務省統計局:国勢調査,2005
3) 大阪市ひとり親家庭等実態調査,2003
4) 東大阪市ひとり親家庭自立促進計画,2006
5) 東京都福祉保健基礎調査「東京の子どもと家庭」,2008
6) 馬場康彦・他:結婚と心理的健康―背景としての社会経済的地位.季刊家計経済研究58:77-85, 2003
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21) Wallerstein J(著),早野依子(訳):それでも僕らは生きていく.PHP研究所,2001
22) 東京都福祉保健局:児童虐待の実態Ⅱ,2005
23) 厚生労働省:子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について.社会保障審議会児童部会児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会第4次報告,2008
24) 荒牧美佐子:育児への否定的・肯定的感情とソーシャル・サポートとの関連―ひとり親・ふたり親の比較から.小児保健研究64(6):737-744,2005
25) 道中隆:保護受給層の貧困の様相.生活経済政策127:14-20,2007
26) 近藤克則:健康格差社会.医学書院,2005

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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