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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生73巻1号

2009年01月発行

文献概要

特集 健康食品をめぐって

健康食品ブームの社会的背景

著者: 瀬川至朗1

所属機関: 1早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズムコース

ページ範囲:P.8 - P.12

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はじめに

 与えられたテーマは「健康食品ブームの社会的背景」である.そもそも健康食品は,今,ブームの中にあるのだろうか.私は少し冷めた目で見ている.

 「健康食品」とは,曖昧で得体の知れない食品群である.うさん臭いものを含めて,多くの種類の「健康食品」が跋扈する中で,果たして,「科学的根拠」をキーワードに個々の健康食品を精査していくと,どれほどのものが残るだろうか.そうした観点から,『毎日新聞』日曜版に「健康食品ノート」と題するコラムを書き始めたのが2000年10月だった.1年間の連載をもとに『健康食品ノート』(岩波新書)を出版したのは2002年2月であった1)

 連載当時は,「がんに効く」という触れ込みのアガリクス食品が盛んに宣伝され,まさに,異様とも言える「健康食品ブーム」の時代だった.その後も過熱気味の状況が続いたが,ここ数年,幾分かは沈静化したように思える.状況の変化には,アガリクス食品の「バイブル本」の摘発事件や,フジテレビ系列の人気健康情報番組「あるある大事典Ⅱ」の納豆ダイエット捏造事件などが深く影響している.しかし,2008年にはテレビ番組での紹介で「朝バナナダイエット」が関心を呼び,バナナが極端に品薄になる現象が起きている.

 人々の「食品信仰」には根深いものがある.「ブーム」は蜂の羽音を語源としており,「ある事柄が急に盛んになったりすること」(新明解国語辞典)といった意味が含まれる.一時的に沈静化しても再び過熱する可能性がある.ブームという形ではなく,市民が健康食品を冷静に眺め,適切に向き合えるようになることが大切である.

 本稿では,人類の歴史を振り返る「長期的視点」,戦後から今日に至る「中期的視点」,1990年前後からの「今日的視点」という3つの視点から,健康食品をめぐる動きを捉え直し,健康食品が人々の心を魅了する仕組みについて社会的背景を分析する.その上で,健康食品と賢く付き合うための処方箋の一端を提示できれば幸いである.

参考文献

1) 瀬川至朗:健康食品ノート.岩波新書,2002
2) 厚生労働省:「健康食品」のホームページ  http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/hokenkinou/index.html
3) 高橋久仁子:フードファディズム―メディアに惑わされない食生活.中央法規出版,2007
4) Robin B Kanarek・他:栄養と行動―新たなる展望(高橋久仁子他訳).アイピーシー,1994
5) 独立行政法人国立健康・栄養研究所:日本人における肥満者の割合の経年的な変化.健康・栄養ニュース1(3):8,2003 http://www.nih.go.jp/eiken/info/pdf/newsletter03.pdf
,pp24-27
7) 財団法人日本健康・栄養食品協会:特定保健用食品とは.同協会ホームページ http://www.jhnfa.org/
8) 松永和紀:メディア・バイアス―あやしい健康情報とニセ科学.光文社新書,2007
9) 日本経済新聞2005年10月5日夕刊:「ガンに効く」本で商品広告.出版社役員ら逮捕,薬事法違反容疑 他
10) 関西テレビ「発掘! あるある大事典」調査委員会調査報告書(2007年3月23日)  報告書のURL http://www.ktv.co.jp/info/grow/pdf/070323/chousahoukokusyo.pdf
11) 坪野吉孝:食べ物とがん予防―健康情報をどう読むか.文春新書,2002

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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