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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生73巻11号

2009年11月発行

文献概要

連載 働く人と健康・11―産業医学センター所長の立場から④

働く人々の健康と喫煙

著者: 広瀬俊雄1

所属機関: 1(財)宮城厚生協会仙台錦町診療所・産業医学センター

ページ範囲:P.851 - P.856

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はじめに

 私が医師になった40年近く前に比べれば,世の中も医療・福祉界でも,禁煙への取り組みは格段に進んでいる.当時は外来でたばこを吸いながら診療する医師すらいたし,バスや電車の中で,すぐそばでたばこを吸われることは日常茶飯事であった.今は,新幹線やタクシー内での禁煙が広がっていて,旅や移動も楽になってきてはいる.しかし,未だ道路で堂々と吸いながら歩き,後ろの人に煙を浴びせて平気という喫煙者も多い.つい先日もある配送会社の衛生管理者との話で,男女共に運転手の高い喫煙率が話題になった.いくら禁煙・分煙が叫ばれていても運転席は自分の世界,一向に禁煙が進まないと言うのである.しかも,職場の交流会となると夜半まで子ども同伴者が多いそうなのだが,皆平気で子どもに煙を吹きかけたまま宴席が盛り上がっていて心を痛めている,とのことであった.

 私は呼吸器を中心とした一般診療と塵肺・石綿を含む産業医学診療を併せて進めてきていて,禁煙外来も設けているが,最近禁煙外来受診者に混じって「受動喫煙診断書」を求めてきたり,「会社を訴えたい」という希望で来られる方も増えてきている.話を聞くと職場での禁煙推進の現状は「まだまだ」というのが実感である.医療関係者と教育関係者が禁煙に熱心でないと,国の禁煙は進まないという話を聞いたことがある.

 この間喫煙の害や禁煙の必要性についての書籍も多く発刊されてきている1~9).今以上に禁煙を進めるには,医療・福祉関係者の禁煙活動のさらなる推進と共に,「職場での禁煙推進」が重要ではないかと痛感する.2004年に筆者はある雑誌の特集号で職場での禁煙指導について執筆したが10),本稿ではその後の取り組みも追加しながら,現状と課題を整理する.

参考文献

1) 喫煙と健康問題に関する検討報告書:喫煙と健康.保健同人社,2002
2) 高野義久(編):特集号 喫煙とタバコの疑問に答える.治療87(6),2005
3) 仲居祐之:大学生のための禁煙講座.牧歌舎,2006
4) クリスティーナ・イヴィングス(著),作田学(監修):喫煙の心理学.産調出版,2007
5) 日本禁煙学会(編):禁煙学.南山堂,2007
6) 原田正平・他:喫煙による子供の健康被害.小児科臨床61(3):345-404, 2008
7) 日本呼吸器学会喫煙問題に関する検討委員会(編):禁煙治療マニュアル.社団法人日本呼吸器学会,2009
8) 大和浩:わが国の今後の喫煙対策と受動喫煙対策の方向性とその推進に関する研究.厚生労働科学研究費補助金 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業 平成20年度総括・分担研究報告書,2009
9) 滝澤始(編):特集号 喫煙と内科疾患―エビデンスと対策.診断と治療97(7),2009
10) 広瀬俊雄:職場での禁煙指導.治療86(3):954-958,2004
11) 厚生労働省安全衛生部環境改善室(監修):職場の喫煙対策のすすめ.中央労働災害防止協会,2004
12) 岡山明:喫煙と内分泌疾患との関係―特にメタボリックシンドロームの視点から.診断と治療97(7):1375-1379,2009

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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