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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生73巻12号

2009年12月発行

雑誌目次

特集 がん予防

医療被曝と発がんリスク

著者: 島田義也 ,   西村まゆみ ,   柿沼志津子 ,   今岡達彦 ,   高畠貴志 ,   藤井啓輔 ,   土居主尚 ,   神田玲子 ,   赤羽恵一 ,   吉永信治

ページ範囲:P.922 - P.926

はじめに

 日本は医療被曝大国だと言われる.医師や放射線技師の被曝は,医療従事者の職業被曝という観点で,線量限度が5年間に100ミリシーベルト(mSv)(年平均20mSv)で,どの1年間にも50mSvを超えないよう規制されている.しかし,患者の診断や治療においては,このような規制値が設定されていない.これは,放射線診療や治療による患者の便益が明らかであり,利用を制限することで,診断精度や治療成績が低下したりすることが許されないからである.診断においてX線CT(以下CT)は,1回あたりの放射線の線量も多く検査数も着実に増加している.2005年における年間のCT検査の回数は英国では300万件,米国では6,000万件で,この10年に2~3倍にも増加している.1990年代の調査では,わが国のCTスキャナーの保有台数は世界でも断トツである.CT検査を複数回受けると,線量が100mSvを超えることもしばしばで,将来の健康に不安を持つ患者からの問い合わせも増えている.

 そこで,本稿では,主にCTに焦点を当てて,医療に伴う低線量放射線被曝(10~100mSv)の発がんリスクについて紹介し,医療被曝の問題に関する今後の展望について触れることにする.

電磁界と発がんリスク

著者: 武林亨

ページ範囲:P.927 - P.931

はじめに

 電気や電波の利用に伴って発生する電磁界は,熱作用と刺激作用を持つことがよく知られている.電磁界の健康影響を防止するための許容曝露レベル(日本では,電波防護指針)も,電磁界曝露によるこれらの影響を防止することを目的として設定されている.

 しかし,いくつかの疫学研究が電磁界曝露による発がんリスク上昇を示唆したことから,超低周波あるいは高周波電磁界の非熱作用,とりわけ発がん性が注目されるようになった.1996年に開始されたWHO(世界保健機関)の国際電磁界プロジェクト(The International EMF Project)は,静電磁界から高周波電磁界までの幅広い周波数帯について,健康リスク評価を行うとともに,各国政府への勧告や市民への情報提供,優先研究課題の選定などを行うとされる.本稿では,その動向に触れながら,電磁界の発がんリスクについてまとめる.

わが国のがん予防戦略の課題と展望

著者: 小坂健

ページ範囲:P.932 - P.936

がん対策における公衆衛生の役割

 ハーバード公衆衛生大学院のBarry Bloom前学部長は次のように述べている.「米国で国民の死因は何かと尋ねたら,医療の人は,41%が心臓血管疾患,24%ががん,4%が糖尿病と答える.しかし,われわれ公衆衛生に携わる者は,19%がたばこ,14%が不適切な食事や運動不足,5%がアルコール関連と議論すべきである.現在の米国の死亡者の230万人のうち,実に50%程度は予防が可能である」1)

 これをがんに限ってみると,25~30%がたばこであり,以下アルコール摂取4%,果物と野菜の摂取不足3%等となるであろう2)

がん予防に関する感染症学的アプローチ

①子宮頸がんの新たな予防戦略―予防ワクチンの導入や検診方法の見直しに関する展望

著者: 川名敬

ページ範囲:P.886 - P.893

 子宮頸がんの発がん過程にヒトパピローマウイルス(human papillomavirus,以下HPV)が関与することは明白である.1980年代から精力的に行われた研究の成果から,HPVは子宮頸がんの「必要条件」であると位置づけられている.HPV感染なくして子宮頸がんは発生しないという観点から,HPV感染を予防することが子宮頸がんのがん予防になると期待されている.また,HPV感染から始まって発がんに至るまでには5~10年はかかると推定されていることから,がん検診によって前がん状態で食い止めることもできる.このように,子宮頸がんは1次予防,2次予防によるがん対策・がん予防が現実のものとなっている典型的ながんと考えられる.

 本稿では,子宮頸がんに対してなし得るがん予防を,現状を踏まえて概説したい.

②肝がん予防策としてのウイルス性肝炎対策の効果

著者: 田中純子

ページ範囲:P.894 - P.899

肝がん死亡の年次推移とその成因

 わが国における悪性新生物による死亡を部位別に見ると,「肝」(肝および肝内胆管の悪性新生物,人口動態統計1))による死亡は,1975年より増加の一途をたどり,1995年に初めて年間3万人を上回った.肝がんによる死亡は,2002年には人口10万人対27.5人とピークを示したのち,2007年ではやや減少し,人口10万人対26.6人となった.日本肝癌研究会による調査成績2)および人口動態統計資料をもとに算出した成因別に見た肝がん死亡の推移を見ると,1975年以降,現在に至るまでB型肝炎ウイルス(HBV)の持続感染に起因する肝がんは増減がないままで推移しており,わが国で増え続けている肝がんはHBVの持続感染によらない(非A非B型の)肝がんであることが明らかとなっている.C型肝炎ウイルス(HCV)感染の診断が可能となった1992年以降について見ると,非A非B型の肝がんの95%以上はHCVの持続感染に起因する肝がん(C型の肝がん)であることが明らかになっている3)

 しかし2000年代(2002~2003年2))に入り,HBV由来の肝がん死亡割合には変化がないものの,HCV由来の割合がやや減少し(70%),不明の原因(非A非B非C型)に由来する肝がん死亡の割合が微増傾向にあるが,その理由については現在のところ不明である.

③胃がん予防策としてのヘリコバクター・ピロリ除菌療法の展望

著者: 加藤元嗣 ,   小野尚子 ,   浅香正博

ページ範囲:P.900 - P.906

 ヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)は生涯に亘って胃粘膜に感染して胃炎を惹起する.慢性胃炎を背景として胃・十二指腸潰瘍,胃がんなどの様々な上部消化管疾患が起きる.胃がんは組織型を問わずH. pylori感染粘膜から発生することがほとんどである.高度の萎縮,腸上皮化生,体部胃炎では分化型胃がんが,非萎縮や全体胃炎では未分化型がんの発生が高く,背景粘膜の炎症や萎縮の程度によって,胃がんリスクが異なる.動物実験ではH. pylori除菌が胃がん発生を抑制することが認められ,除菌を早期に行うほうが胃がん予防の効果は強い.中国でのH. pylori除菌による無作為二重盲検比較試験では,全体では除菌は胃がん発症を抑制しないとの結果であった.しかし,胃がんの内視鏡的切除後の異時性多発がんをエンドポイントとした無作為化試験がわが国で行われ,H. pylori除菌によって有意に異時がんの発症が抑制された.H. pylori除菌は胃がんの発育進展を抑制すると推測できる.胃がん撲滅のために,H. pylori除菌を基本に据えた施策を早急に計画すべき時期に入った.

がんの2次予防に関するトピック

①前立腺がん検診の有効性に関する議論と今後の展望

著者: 岩室紳也

ページ範囲:P.912 - P.916

はじめに

 PSA(Prostate Specific Antigen)による前立腺がん検診(以下:PSA検診)について厚生労働省の研究班1)と日本泌尿器科学会2)の見解が異なること,ヨーロッパ(ERSPC3))と米国(PLCO4))の大規模臨床試験の結果が異なること,さらに日本泌尿器科学会が「今回ERSPCの研究で明らかな死亡率減少効果が出たことで,PSA検診は,利益と不利益に関する最新情報を受診希望者に提供することを前提に,より強く推奨されるがん検診となります」5)と言い切っているため,地域保健,公衆衛生の現場に混乱が生じている.

 本稿では,日本泌尿器科学会認定指導医(認定番号92007324)であり,公衆衛生に長く関わってきた立場から,前立腺がんやPSAに関する既知のエビデンス,PSA検診や前立腺がん根治療法の実施状況,さらには泌尿器科医の思いを紹介しつつ,PSA検診の意義と課題について検証する.なお,ERSPCとPLCOの評価については,日本泌尿器科学会の「ERSPCの研究結果は科学的見地から優れており,世界の前立腺がん検診研究で最も重要なエビデンス」5)とする分析は的確と考え,ERSPCの結果を重視した.

②胃がん検診の問題点と新たな検診方法に関する展望

著者: 深尾彰

ページ範囲:P.917 - P.921

はじめに

 平成19年から施行されたがん対策基本法では,がん医療の均てん化やがん研究の推進に加えて,がん予防および早期発見の推進が基本施策として明記され,同法に基づいて策定されたがん対策推進基本計画では,2015年までにがん死亡を20%低減するためにがん検診の質の向上とともに,その受診率を50%とする数値目標を提示している.ここで重要なことは,がん検診の質の向上,つまり精度管理をしっかり向上させた上で,一層の受診率向上を目指せということである.

 本稿では胃がん検診の有効性の評価と現状の諸問題について述べ,精度管理の向上と受診率の向上を両立させた展開の可能性について言及した上で,今後の胃がん検診の方向性についての考えを述べることとする.

視点

保健所,今昔

著者: 皆川武人

ページ範囲:P.882 - P.883

 保健所は,日本の公衆衛生の縮図のような歴史を持ち,歴代の職員が公衆衛生の向上や健康なまちづくりを目指し,誇り高く奮闘してきました.私は,自分の勤務する杉並保健所が日本で最初のモデル保健所になり,今も健康づくりの独自の取り組みを行っていることから,当保健所の今昔について少々お話ししたいと思います.

特別記事

[インタビュー]アイヌ文化の表現者として今思うこと―自らの「アイデンティティ」を取り戻す生き方を

著者: 結城幸司

ページ範囲:P.940 - P.943

 2009年6月20,21日に行われた「第18回日本健康教育学会」(於・東京大学本郷キャンパス)の今年のテーマは,「ヘルスプロモーションを超えて:健康か?幸福か?」.特別講演で「幸福な明日を創るための発信型運動」をテーマにお話しされたのは,アイヌ・アート・プロジェクト代表の結城幸司氏.

 結城氏は講演の中で,「自分が本当に幸福を感じる」までの自分史を伸びやかに語り,自らの「アイデンティティ」を取り戻していきいきと生きておられる姿を見て,聴衆は感動し勇気付けられていました.

 アイヌ文化の表現者である結城幸司さんの率直な語りを,読者のみなさんにお届けします. (編集部)

連載 人を癒す自然との絆・5

介助犬の訓練をとおして学ぶこと

著者: 大塚敦子

ページ範囲:P.938 - P.939

 少年更生施設に入っている少年少女たちに,介助犬を訓練させる――ずいぶん突飛なアイデアに聞こえるかもしれない.体の不自由な人を手助けする介助犬の仕事は,落としたものを拾う,電気をつけたり消したりするなど様々だが,訓練する側には相当の忍耐が必要だ.問題を抱えた少年たちに,果たしてそんなことができるのかと思う人もいるだろう.ところが,アメリカでは90年代後半から取り組みが始まり,いまでは全米のあちこちで行われているのである.発案したのはカリフォルニアのボニー・バーゲン博士.介助犬や人と犬の関係について研究を行うバーゲン大学の創設者で,1970年代に,世界で初めて介助犬を育成したパイオニアだ.犬を訓練する過程からは,人が社会で生きていくうえで必要なレッスンの多くを学べると確信し,地域の少年更生施設の少年少女たちに,介助犬の訓練を教えるプロジェクトを始めたのである.

 介助犬の訓練は,なぜ少年少女たちの更生に役立つのだろうか.私は地域の少年更生施設シエラ・ユース・センターに何年か取材に通ったが,相手が思い通りにならないとすぐにカッとなりがちな少年少女たちが,犬が相手だと意思を通じ合わせるために一生懸命努力する姿に感銘を受けた.

働く人と健康・12―産業医学センター所長の立場から⑤

ありふれた疾患・障害への産業医学―問診と職場改善の重要性

著者: 広瀬俊雄

ページ範囲:P.944 - P.948

はじめに

 本シリーズの筆者担当分の最後は,「ありふれた疾患・障害への産業医学―問診と職場改善の重要性」とした.このテーマは,筆者が坂総合病院(財団法人宮城厚生協会:塩釜市)において内科内産業医学外来産業医学科を開設し,そして現在の診療所併設型産業医学センターで約30年経験してきた活動から,最も重要な点ではないかと思っている.

 1979年に坂総合病院に産業医学科を開設した.医師・医療従事者,患者本人,労組・諸団体,誰でもが,自身の疾病や症状・不調に対して労働や労働条件,職場・家庭の環境状態が関わっているのではという疑問が生じたら診察を受け入れるとし,①詳しい問診,②疾病・障害と労働・環境の関係を検討(検査含む),③職場や家庭の評価,を活動の3本柱とした.スタッフは筆者(当時呼吸器科長兼産業医学科科長),産業医学研修医1名,保健婦(当時)2名,事務2名であり,職域健診も担当していた.①~③で「疾病と環境の関わりの診断」が得られたら,紹介医に戻したり継続しうる診療科に紹介した.典型的な職業病や労災申請(検討から認定)事例,職場改善実施中事例,産業医契約職場からの事例は診断後も取り扱った.

 私が(というより病院や内科)産業医学科開設の際予想(期待)したのは,塵肺や化学物質中毒のような典型職業病の方との出会いであったが,実際に受診された方々のほとんどの症状が「肩こり・上肢痛,腱鞘炎,腰痛症」だった.それで筆者は呼吸器診療は続けながら,自ら整形外科の勉強を始め,写真読影会にも参加,可能な範囲で手術(形成外科含む)にも入らせて頂いた.この「整形外科研修」はその後の筆者の診療にも大変役立つことになった.産業医学科・外来や健診に来る患者の主訴が「骨・筋・関節障害=整形領域」であることは,今日まで続いている.

ドラマティックな公衆衛生―先達たちの物語・12

抑圧からの解放―弱者による強者の救済―パウロ・フレイレ

著者: 神馬征峰

ページ範囲:P.949 - P.952

…愛と革命は引き離せない(チェ・ゲバラ)

 

 パウロ・フレイレ(Paulo Freire,1921年9月21日~1997年5月2日)は,ブラジル北東部ペルナンブコ州レシフェ市生まれの教育思想家.フレイレのエンパワメント理論や意識化の概念は,今もなお公衆衛生分野に影響を及ぼしている.

リレー連載・列島ランナー・9

あなたの元気が,ふくおかの元気!!―新たな社会基盤の構築を目指す福岡市の特定健診事業

著者: 荒尾裕子

ページ範囲:P.953 - P.956

はじめに

 前号の筆者である東京都港区みなと保健所の川尻さんとは,港区の先進的な健康づくり事業の取り組みを教えて頂いたことが縁で交流が始まった.私にとって,よき仲間であり,よき相談相手でもある.都市ごとの特色や違いはあるが,そこから新たな発見や気づきを受けることも多く,このような全国で働く仲間とのネットワークは宝物である.

 筆者は平成20年度から開始された特定健診を担当している保健師で,福岡市保健福祉局保険年金課に籍を置く.平成17年度から医療費分析事業などに取り組み,平成19年度から特定健診立ち上げの準備事業を行い,現在に至っている.

 今回は新たな社会基盤の構築を目指す福岡市の特定健診事業の取り組みを紹介させて頂く.

保健師さんに伝えたい24のエッセンス―親子保健を中心に・9

5歳児健診をめぐって:発達障害を中心に

著者: 平岩幹男

ページ範囲:P.957 - P.961

 最近5歳児健診が2つの理由から話題となっています.1つは多くの自治体では母子保健法に規定された3歳児健診以降,就学時健診まで健診がありません.しかしこの間の子どもたちの心身の発達には目覚しいものがありますし,健康上の問題を抱えることも少なくありません.ですからこの時期に健康状態を把握する必要もあります.もちろん5歳頃の健診は1歳6か月児健診や3歳児健診のように,母子保健法に年齢を指定して規定されているわけではありません.この時期に健診を行うことの根拠は,母子保健法第13条の「必要とされるときに健診を行う」に該当します.5歳周辺の健診は,これまでにも発達や歯科保健を含む身体的なチェックを主眼として,少ないながらも実施してきた地域もあります.

 もう1つは発達障害に関連する問題であり,最近になってADHD(Attention deficit/hyperactivity disorder:注意欠陥・多動性障害)や高機能自閉症(High functional autistic spectrum disorder:HFASD,Asperger症候群,障害と多くが共通する)などを含む発達障害が注目されるようになり,これらへの早期発見や早期対応を目指しての5歳児健診が,鳥取県や栃木県,埼玉県などで開始されるようになりました.発達障害については次回お話ししますが,法的な根拠としては,発達障害者支援法第5条の「市町村は,母子保健法第十二条及び第十三条に規定する健康診査を行うに当たり,発達障害の早期発見に十分留意しなければならない」が挙げられます.これら2つの理由から,特に今後は発達障害の子どもたちの早期発見を目的とした健診を行うことが広がってくる可能性があります.

衛生行政キーワード・60

精神保健医療福祉の改革について

著者: 林修一郎

ページ範囲:P.962 - P.964

背景

 精神科医療の課題は時代と共に移り変わっている.戦後早期には,精神病床の整備等,精神医療の「量」の確保が課題であり,昭和30~40年代には多くの精神病床が建設され,入院患者が急増した.昭和後期から平成初期にかけては,入院環境の向上や患者の人権擁護が主な政策課題であった.

 現在では,このような経緯によって存在する精神科病院への長期入院患者の地域生活への移行が図られている.平成16年9月には,厚生労働大臣の下に設置された精神保健対策本部が「精神保健医療福祉の改革ビジョン」(以下「ビジョン」という)を提示し,国民各層の意識の変革や,精神保健医療福祉体系の再編と基盤強化を10年間で進め,「入院医療から地域生活中心へ」という精神保健医療福祉施策の基本的な方策を推し進めていくこととした.

海外事情

ヨハン・ペータ・フランクの故郷ロダルベンを訪ねて

著者: 華表宏有

ページ範囲:P.965 - P.967

 ヨハン・ペータ・フランク(Johann Peter Frank, 1745-1821)は,医学史の中で,18世紀後半から19世紀はじめの啓蒙主義時代に『完全な医事行政の体系』(System einer vollsta¨ndigen medicinischen Polizey)全6巻をまとめた衛生学者として知られている.

 一昨年10月から今年6月まで,訪欧のたびに彼の生家があるドイツ・ファルツ地方のロダルベン(Rodalben)を訪れることになり,今年6月の4回目の訪問では,生家前の広場に落成された一連の記念碑を実地に見ることができた.

 本稿では,彼の生涯と業績にも触れながら,ロダルベン訪問の経緯などを報告する.

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あとがき フリーアクセス

著者: 阿彦忠之

ページ範囲:P.970 - P.970

 『百歳まで生き,ガンで死のう.』これは,胃のX線二重造影法の開発者の1人である市川平三郎先生(国立がんセンター名誉院長)の著書の題名です.1992年初版の単行本ですが,書棚に見える背表紙は,当時よりも現在のほうが存在感を増しています.日本人の2人に1人ががんに罹患する時代を迎えた今,がん予防戦略の目標は,生涯を通じてがんに罹らないようにすることではなく,がんに罹る(または,がんで亡くなる)年齢をできるだけ先送りするという視点が重要であることを再認識させてくれる題名です.

 今回の特集では,がんの1次予防と2次予防に焦点を当てましたが,この分野の研究が急速に進んでいることを実感できる内容となりました.発がん要因として特定の微生物の関与が明らかなもの(HPVを原因とする子宮頸がんなど)については,罹患年齢の先送りはもちろん,罹患ゼロを目標に掲げることも可能となるかもしれません.

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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