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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生73巻12号

2009年12月発行

文献概要

特集 がん予防 がん予防に関する感染症学的アプローチ

②肝がん予防策としてのウイルス性肝炎対策の効果

著者: 田中純子1

所属機関: 1広島大学大学院医歯薬学総合研究科疫学・疾病制御学

ページ範囲:P.894 - P.899

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肝がん死亡の年次推移とその成因

 わが国における悪性新生物による死亡を部位別に見ると,「肝」(肝および肝内胆管の悪性新生物,人口動態統計1))による死亡は,1975年より増加の一途をたどり,1995年に初めて年間3万人を上回った.肝がんによる死亡は,2002年には人口10万人対27.5人とピークを示したのち,2007年ではやや減少し,人口10万人対26.6人となった.日本肝癌研究会による調査成績2)および人口動態統計資料をもとに算出した成因別に見た肝がん死亡の推移を見ると,1975年以降,現在に至るまでB型肝炎ウイルス(HBV)の持続感染に起因する肝がんは増減がないままで推移しており,わが国で増え続けている肝がんはHBVの持続感染によらない(非A非B型の)肝がんであることが明らかとなっている.C型肝炎ウイルス(HCV)感染の診断が可能となった1992年以降について見ると,非A非B型の肝がんの95%以上はHCVの持続感染に起因する肝がん(C型の肝がん)であることが明らかになっている3)

 しかし2000年代(2002~2003年2))に入り,HBV由来の肝がん死亡割合には変化がないものの,HCV由来の割合がやや減少し(70%),不明の原因(非A非B非C型)に由来する肝がん死亡の割合が微増傾向にあるが,その理由については現在のところ不明である.

参考文献

1) 厚生労働省大臣官房統計情報部:平成19年人口動態統計(上巻).2007
2) 日本肝癌研究会:第5回~第17回全国原発性肝癌追跡調査報告.日本肝癌研究会事務局,1978~2003
3) Yoshizawa H:Hepatocellular carcinoma associated with hepatitis C virus infection in Japan;projection to other countries in the foreseeable future. Oncology 62(suppl 1):8-17, 2002
4) Tanaka J, et al:Incidence rates of hepatitis B and C virus infections among blood donors in Hiroshima, Japan, during 10 years from 1994 to 2004. Intervirology 51:33-41, 2008
5) Kumagai J, et al:Hepatitis C virus infection in 2,744 hemodialysis patients followed regularly at nine centers in Hiroshima during November 1999 through February 2003. Journal of Medical Virology 76:498-502, 2005
6) Yoshikawa A, et al:Age-and gender-specific distributions of hepatitis B virus(HBV)genotypes in Japanese HBV-positive blood donors. Transfusion 49:1314-1320, 2009
7) Mizui M, et al:Liver disease in hepatitis C virus carriers identified at blood donation and their outcomes with or without interferon treatment;study on 1019 carriers followed for 5-10 years. Hepatology Research 37:994-1001, 2007
8) Tanaka J, et al:Natural histories of hepatitis C virus infection in men and women simulated by the Markov model. Journal of Medical Virology 70:378-386, 2003
9) Tanaka J, et al:Sex-and age-specific carriers of hepatitis B and C viruses in Japan estimated by the prevalence in the 3,485,648 first-time blood donors during 1995-2000. Intervirology 47:32-40, 2004
10) 田中純子:肝炎ウイルス検診受診者(2002.4~2007.3受診群)を対象とした解析.平成19年度 厚生労働科学研究費補助金 肝炎等克服緊急対策研究事業 肝炎状況・長期予後の疫学に関する研究報告書,pp1-6, 2008
11) 田中純子:初回献血者集団および節目検診受診者における出生年別のキャリア率をもとにしたキャリア数推計の試み.平成20年度 厚生労働科学研究費補助金 肝炎等克服緊急対策研究事業 肝炎状況・長期予後の疫学に関する研究,報告書-2,2008
12) 田中純子・他:肝炎ウイルスキャリア対策.平成20年度 厚生労働科学研究費補助金 肝炎等克服緊急対策研究事業 肝炎状況・長期予後の疫学に関する研究報告書,pp45-108, 2008

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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