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文献概要
連載 保健師さんに伝えたい24のエッセンス―親子保健を中心に・3
うつ状態,うつ病―妊娠中から出産後を中心に
著者: 平岩幹男12
所属機関: 1国立成育医療センター 2
ページ範囲:P.462 - P.465
文献購入ページに移動従来から産後にはmaternity bluesが知られていましたが,最近では産後うつ病という概念でまとめられるようになり,特に乳児を抱える母親の精神面での評価や対応が重視されるようになってきました.しかし現在はあまり注目されてはいませんが,うつ病は妊娠中にも存在します.本稿を執筆している現在,うつ病を抱えた妊娠8か月の方を拝見していますが,うつ病と診断された妊娠4か月以降,本人および家族の強い妊娠継続の希望があるために,SSRI(Serotonin selective re-uptake inhibitor:選択性セロトニン再吸収阻害剤:最近のうつ病治療には第一選択となることが多い.商品名ではパキシル®,デプロメール®,ルボックス®,ジェイゾロフト®)などを使うことができず,胎児に影響の少ない睡眠導入剤など最小限の薬剤治療とカウンセリングで診療を続けていますが,カウンセリングにも長い時間を要し,とても苦労をしています.多くの向精神薬は妊娠中や授乳中には胎児への影響や母乳への移行があるために使うことができません.また昨年,母乳で育てている生後4か月の子どもを抱えた母親がうつ病と診断され,相談に来られました.うつ病についてSSRIなどを使うとすれば母乳を中断する必要のあることをお話しし,納得されたのでSSRIを処方しましたが,家に帰って子どもが泣くと,特にパートナーが働きに出ている昼間にはつい母乳をあげてしまうことが続きました.結局知り合いの保育園にお願いして数週間,昼間だけ子どもを預かってもらうことにしてSSRIの服用を開始しましたが,当初の計画よりも4週間遅れました.産後うつ病については後述のEPDS(エジンバラ式産後うつ病自己調査票:Edinburgh Postnatal Depression Scale)などを含めて,早期発見・早期対応が叫ばれていますが,実際にうつ病の妊婦さんや産婦さんと対応することは,決して簡単なことではありません.
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