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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生73巻8号

2009年08月発行

文献概要

特集 超少子化と向き合う

わが国の少子化に伴う家族の変化と今後の展望

著者: 津谷典子1

所属機関: 1慶應義塾大学経済学部

ページ範囲:P.568 - P.572

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 わが国は世界で最も人口高齢化が進んだ国のひとつである.この最大の要因は,「少子化」と呼ばれる人口置換水準以下への出生率の継続的低下である.わが国の出生率は1970年代半ばに置換水準を割り込み,その後も低下を続けている.置換水準とは人口再生産が全うされる水準のことであり,具体的には純再生産率(NRR)が1.00の状態を指す.これを女性1人当たりの子ども数の指標である合計特殊出生率(TFR)に換算すると,約2.1人弱の水準に相当する.出生率が長期にわたりこの水準を割り込むと,人口は早晩減少を始める.わが国だけでなく,すべての欧米先進諸国は,1960年代後半~80年代前半に少子化を経験した.また,NIESと呼ばれるアジアの工業国でも近年急激な少子化が起こっている.

 結婚しないと子どもを産まない傾向の強いわが国では,少子化は主に20~30歳代の女性の結婚の減少(つまり「未婚化」)により起こっている.そこで本稿では,戦後のわが国の出生率の動向を概観し,少子化の最大の要因である未婚化とその社会経済的背景を分析し,他の先進諸国との比較を通して少子化と女性の社会的地位の関係を検討する.そして,これらを基に,わが国における少子化をめぐる政策的対応の方向性について考えてみたい.

参考文献

1) Lutz W. et al:The low-fertility trap hypothesis:forces that may lead to further postponement and fewer births in Europe. Vienna Yearbook of Population Research 2006:167-192, 2006
2) 国立社会保障・人口問題研究所:人口統計資料集2009.国立社会保障・人口問題研究所,2009
3) 津谷典子:女性と家族―少子化のゆくえ.小長谷由紀(編):家族のデザイン,pp116-161,東信堂,2008
4) 文部科学省:文部科学統計要覧 平成20年度版.国立印刷局,2008
5) 国立社会保障・人口問題研究所:人口統計資料集2008.国立社会保障・人口問題研究所,2008
6) 津谷典子:北欧諸国の出生率変化と家族政策.人口問題研究59(1):49-80,2003
7) 津谷典子:少子化と女性・ジェンダー政策.大淵寛・阿藤誠(編):少子化の政策学,pp157-187,原書房,2005
8) 厚生統計協会:わが国における少子化の動向と関連行政施策の展開.厚生の指標53(16):8-17,2006
9) 津谷典子:ジェンダー関係のゆくえ.阿藤誠・津谷典子(編):人口減少時代の日本社会,pp83-122,原書房,2007
10) ワーク・ライフ・バランス推進官民トップ会議:「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」及び「仕事と生活の調和推進のための行動指針」(http://www-bm.mhlw.go.jp/shingi/2008/03/dl/s0307-5d.pdf),厚生労働省,2008

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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