icon fsr

文献詳細

雑誌文献

公衆衛生73巻9号

2009年09月発行

文献概要

特集 弱者への暴力

ホームレスの人への暴力

著者: 安江鈴子1

所属機関: 1NPO法人新宿ホームレス支援機構

ページ範囲:P.665 - P.668

文献購入ページに移動
 「ホームレスの人への暴力」と言えば,まず挙げられるのが若者による襲撃事件であろう.1983年,横浜の寿町で起きた複数の中学生による「横浜浮浪者連続殺傷事件」(当時の新聞記事の見出し)がその最初のものであろうが,当時,野宿を余儀なくされる人々の問題は,社会的には取り上げられておらず,被害者も差別的呼称である「浮浪者」と表現されている.が,「汚い」「役に立っていない」という(襲撃した10人の中高生を含む若者は「おまえらのせいで横浜が汚くなるんだ」「横浜をきれいにするためゴミ掃除しただけ」と語ったという)思いだけで人を襲撃した若者の出現は,十分衝撃的であった.その後90年代に入って,野宿を余儀なくされる人は急増し,これらの人々の存在自体が大きな社会問題となり,支援する法律も制定されているのは周知のとおりである.

 「ホームレスの人への暴力」と言えば,この,若者による襲撃を氷山の一角としてホームレスの人が被っている市民からの嫌がらせを扱うべきであるが,なぜ人がホームレス状態になるかと言えば,人々を路上に押し出す力が働いているからなのであり,筆者などは,この力も「排除」とでも言うべき暴力ではないかと考えているので(岩田正美氏は,「寄せ場」は対策の目的自体が「排除」であった,と述べている1)),本稿ではホームレス問題の社会経済的背景も視野に入れて,若者の襲撃事件や市民のいやがらせをなくすためにはどうすればよいのか考えてみたい.

参考文献

1) 岩田正美:社会的排除.有斐閣,2008
2) 北村年子:「ホームレス」襲撃事件―弱者いじめの連鎖を断つ.太郎次郎社,1997
3) 生田武志:「野宿者襲撃」論.人文書院,2005
4) 大阪市立大学文学部社会学研究室:大阪における野宿生活問題に関する研究,1997年3月
5) 長弘佳恵,小林小百合,村嶋幸代:不安定就労・生活者にとってのDirectly Observed Treatment, Short-course(DOTS)受療の意味―横浜市寿地区の結核患者への面接調査.日本公衛誌54(12):857-865,2007

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら