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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生73巻9号

2009年09月発行

文献概要

視点

若者の殺人事件をどう理解するか―アノミーを視点に

著者: 芹沢俊介

所属機関:

ページ範囲:P.632 - P.635

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 若者や子どもの起こした殺人事件を前にすると,いつもアノミーという状態を想定したくなる.アノミーは,100年ばかり前にフランスの社会学者エミール・デュルケームが『自殺論』の中で提出した概念である.私なりの理解を記せば,一人の人間の内部世界の秩序,つまり社会性が自力では修復不能なほどに崩壊してしまったことがもたらす感情の無規制状態を指している.

 これを実感的に知りたければ,たとえば何らかの理由で(たとえば突然の災難),自分の日常の暮らしを安定的に支えていたすべてが無に帰したことによる絶望的な内面状態を想像してみるのがいいだろう.これまで確かにあると信じてきた足下の生きる基盤が崩壊,再興の手だてもなく,無力感にさいなまれる.むろん希望など抱きようもない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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