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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生74巻1号

2010年01月発行

雑誌目次

特集 感染症再見

インフルエンザ菌感染症

著者: 矢野寿一

ページ範囲:P.19 - P.22

はじめに

 インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)は肺炎などの市中呼吸器感染症の主要な原因菌のひとつであり,急性中耳炎・副鼻腔炎や小児化膿性髄膜炎を起こす菌としても重要である.近年,β-ラクタマーゼ非産生性のampicilin(以下ABPC)耐性株(β-lactamase-negative ABPC resistant,以下BLNAR)が本邦で急速な増加傾向にあり,注目されている.

肺炎球菌感染症

著者: 和田昭仁

ページ範囲:P.24 - P.27

肺炎球菌について

 肺炎球菌は,小児,成人の上咽頭にコロナイズすることがある一方,呼吸器感染の主要な起炎菌であり,また中耳炎,菌血症/敗血症,髄膜炎の起炎菌としても重要である.肺炎球菌が持つ莢きょう膜まくは,最も重要な病原因子であり,莢膜を持つ肺炎球菌は,持たない菌に比べて著しく病原性が強いことが知られている1).これは,莢膜が主として白血球貪食抵抗因子として働くためである2).莢膜は多糖(ポリサッカライド)からなり,その抗原性の違いから91種類の型(遺伝子組み換えにより人工的に作り出した型を含めると92種類)に分類されている.それぞれの型に特異的な抗体を用いることにより,血清型別を行うことができる.図に,肺炎球菌とその型に特異的な血清を反応させた顕微鏡像を示す.黒く見えるのが菌体(実際には色素により青く染まっている),菌体を取り囲むように見えているのが莢膜と抗体の複合体である.通常は菌体周囲の莢膜を観察することはできないが,莢膜と抗体の複合体は,抗体と反応していない莢膜より高い屈折率を持つため,陽性反応ではこのような像が得られる.表に肺炎球菌の血清型を示す.Typeのカラムに記載した数字にはそれぞれ1種類の型,Groupのカラムに記載した数字には複数の型が含まれ,例えば19F,19A,19Bといったように数字と大文字のアルファベットでそれぞれの型を表す.

黄色ブドウ球菌感染症

著者: 上原由紀 ,   平松啓一

ページ範囲:P.28 - P.33

はじめに

 ブドウ球菌属(genus Staphylococcus)は,強い病原性を持つコアグラーゼ陽性の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus,以下S. aureus)とその他のコアグラーゼ陰性ブドウ球菌に分類される.

 本稿では,肺炎を含めたS. aureus感染症の概要を解説する.

死亡者数最大の感染症:肺炎

①肺炎死亡の現状と動向

著者: 大日康史 ,   菅原民枝

ページ範囲:P.6 - P.11

 1899年からの人口動態統計(図1)による肺炎の死亡率を見てみると,1918年から3年間のところでの急増を除いて,結核に次いで高い水準であったが,1947年には前年度に比して半数になり,その後1972年まで低下していった.しかしながら,翌1973年より増加に転じており,2008年は91.6(対人口10万人)であった.死亡順位では1951年から脳血管疾患が,1981年から現在まで悪性新生物が1位となっているものの,1976年より肺炎は順位を上げ,現在まで4位となっているが,近い将来には3位に浮上する勢いである.なお,1918年からの急増の理由は,2009年の新型インフルエンザ発生に伴い,お気づきの方も多いと思われるが,いわゆる「スペインかぜ」である.性別では,男性にやや高い傾向がある(男:女=99.9:83.7,対人口10万人).年齢群別では70歳以上の高齢者が99.5%以上である.

 平成20年度の統計では誤嚥性や,化学物質等を起因とするものを除くと130,234名の死亡の内,病原体が臨床的あるいは検査室診断されているのは3,572名に過ぎない.病原体別では結核が1,806名と約半分を占め,ブドウ球菌(1,078名),肺炎球菌(180名),インフルエンザ(159名),緑膿菌(125名)と続く.この内ウイルス性は203名で95%が細菌性である.ウイルス性肺炎の3/4はインフルエンザであるが,分離されているのはその2/3である.

②高齢者の肺炎の特徴

著者: 高橋弘毅

ページ範囲:P.12 - P.14

 高齢者の肺炎の特徴は,嚥下障害,慢性閉塞性肺疾患(COPD)を持つことが多いこと,発熱や咳嗽などの自覚症状が軽い割に重症化しやすいこと,抗菌薬の用量設定に注意が必要なこと,病態回復が遅く遷延化しやすいこと,数日の臥床でもADL(日常生活動作)の低下を招きやすいことである.男性に多く発症し,75歳以上に限ると死因の第3位,90歳以上に至っては第1位である1).高齢者肺炎の多くは誤嚥性肺炎であるが,冬期間ではインフルエンザに合併する肺炎にも要注意である.

③高齢者の肺炎予防

著者: 山谷睦雄

ページ範囲:P.15 - P.18

はじめに

 高齢者肺炎は死亡者数が全死亡原因の10%と多く,第4位に位置している.このため,病態の解明と,病態の基づく予防法確立が求められている.本稿では高齢者肺炎の病態に基づく予防法を中心に紹介したい.

国内発生している致死率の高い感染症

①劇症型溶血性レンサ球菌感染症

著者: 池辺忠義

ページ範囲:P.34 - P.38

 劇症型溶血性レンサ球菌感染症(streptococcal toxic shock syndrome)は1987年に米国で最初に報告され,その後,先進国ばかりでなく,発展途上国からも報告されている.日本における最初の典型的な症例は1992年に報告されており,現在までに500人を超える患者が確認されている.そして,このうち約30%が死亡しているというきわめて致死率の高い感染症である.A群レンサ球菌感染による一般的な疾病は咽頭炎であり,その多くは小児が罹患する.一方,劇症型溶血性レンサ球菌感染症は大人から子どもまで広範囲の年齢層に発症するが,特に30歳以上の大人に多いのがひとつの特徴である.

②ビブリオ・バルニフィカス感染症

著者: 古城八寿子

ページ範囲:P.39 - P.42

 ビブリオ・バルニフィカス感染症は,夏に見られる劇症型軟部組織感染症で,肝硬変や糖尿病・免疫不全の患者らに日和見感染する.生の魚介類の経口摂取や汽水中で創部から感染し,敗血症性ショックや壊死性筋膜炎などを発症し,70%が死亡するきわめて予後不良な疾患である.経口感染型は特に死亡率が高い.本邦では1978年以来200例以上報告されているが,海外と比べ,刺身などの食習慣から経口感染型が多い.発症後の経過は急激で,死亡例の半数以上が3日未満に亡くなっているため,診断を急ぎ,治療内容が予後を左右する1)

 本邦では食品衛生法以外での届け出義務がないため,正確な発生状況は把握されていない.最も必要なことは発症の予防であり,ハイリスク者およびその家族に対し,夏季の魚介類生食や海水浴を避けるよう徹底して啓発することである.

視点

財政不如意の時,この時だからこそ将来に夢をつなぐ仕事を

著者: 矢内純吉

ページ範囲:P.2 - P.3

前書として

 1.国の動き

 昨年8月30日に行われた衆議院の解散総選挙において,戦後50年間続いた自由民主党が惨敗し,代わって民主党が第1党となり,民主党政府が日本の舵取りをすることとなった.

 9月に行われた国連総会で,地球温暖化について鳩山首相が削減目標値を提示し,地球的規模での危機意識を訴えたことに対し,世界的に一定の評価を得た.

特別寄稿

生活習慣病の予防と対策:WHO・国立保健医療科学院共同開催研修―さいたま行動宣言「Saitama Call to Action」へ

著者: 児玉知子 ,   兵井伸行 ,   林謙治

ページ範囲:P.44 - P.50

はじめに

 昨2009年8月,国立保健医療科学院において非感染症疾患の予防・対策を目的とする研修がWHOとの共同開催で行われた.これは,世界的に増加している非感染症疾患(生活習慣病)の予防とその対策に着目し,国内における経験をもとに,アジア西太平洋領域の国々の施策担当者を対象として実施されたものである.本稿では本研修の背景や意義,その内容等について報告する.

連載 地域保健従事者のための精神保健の基礎知識・1【新連載】

精神保健はどのように定義されてきたか

著者: 竹島正

ページ範囲:P.63 - P.66

はじめに

 今日,精神保健の問題は,がん,循環器疾患と並んで,国民健康の大きな課題となっている1).また,わが国の自殺による死亡者数は平成10年以降3万人を超える水準で推移しているが,自殺予防においても精神保健の果たすべき役割は大きい.

 地域保健の現場においても,精神保健のニーズは質・量とも増大していると考えられるが,本連載は,精神保健の発展経緯を踏まえた上で,今日的な「精神保健学」の基礎となる情報を地域保健従事者に提供することを目的とする.

 今回は連載の初回であることから,精神保健の定義について述べる.

路上の人々・1【新連載】

ミニー神父と仲間たち

著者: 宮下忠子

ページ範囲:P.87 - P.87

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人を癒す自然との絆・6

仔犬の誕生に立ち会う

著者: 大塚敦子

ページ範囲:P.52 - P.53

 夜の9時を少し回った頃だろうか.母犬のお腹がほんのかすかに動いたかと思うと,小さな仔犬の頭がのぞいた.「ああっ,生まれそう…」

 少年少女たちが固唾を飲んで見守るなか,仔犬の体はするりとなめらかに出てきた.母犬はすぐに仔犬の全身をなめてきれいにしてやり,さっさと後産を食べてしまう.

働く人と健康・13―フランス在住ジャーナリストの立場から①

プシコソシオ問題(職場のメンタルヘルス)で闘いを開始したフランス―過労自殺の歴史とテクノサントル・ルノーの悲劇

著者: 山本三春

ページ範囲:P.54 - P.58

はじめに

 フランスで労働関連自殺(過労自殺)が急増し,衝撃が広がっている.

 なかでも,2008年2月以来自殺が相次いでいた電話通信のフランス・テレコム(France Télécom)は,2009年10月15日,ついに20か月で25人目の犠牲者を出すに至った.1か月前から療養中だった48歳の男性が,3人の子を残して自宅で首を吊るという,痛ましい事件だった.

 このため犠牲者が出たフランス西部の町では,本稿を執筆している最中の10月16日現在,深い怒りをこめた“沈黙の行進”が行われている.

 また全国でも,労働組合,労働医(フランスでは産業医とは呼ばない)らが,数か月前から激しい抗議行動と団体交渉に乗り出し,わずかだが一定の前進も勝ち取った1~8).同時に精神医学者,法律家,社会学者,心理学者ら専門分野の研究者も,総力を挙げて一気に動き出し,災禍のストップに向けて,抜本理念および実践理念の確立に着手している.

 本稿ではこうした動向を,完全網羅はできないものの,いくつかの象徴例を挙げて,実態と対応の両面にわたって紹介・報告したい.

ドラマティックな公衆衛生―先達たちの物語・13

真理は小さき者とのふれあいの中に―神谷 美恵子

著者: 神馬征峰

ページ範囲:P.59 - P.62

…使命のほうがわれわれを探しているのであって,われわれのほうが使命を探しているのではない(ダグ・ハマーショルド,「道しるべ」)(文献1),p74)

 神谷美恵子[1914年(大正3年)1月12日~1979年(昭和54年)10月22日]は,精神科医である.15年間,長島愛生園でハンセン病対策のために活動.神戸女学院の社会学教授,ギリシャ古典,ミシェル・フーコーの著書等の翻訳家でもある(注:神谷美恵子の時代,ハンセン病は「らい」と呼ばれていた.そのため神谷美恵子の著書の中では「らい」という用語が使われており,本稿でもそのまま引用している).

リレー連載・列島ランナー・10

大津市,いま「健口」があつい―お口からはじまる地域力アップ! おいしく食べて豊かに過ごそう

著者: 西本美和 ,   内浦直子 ,   黒田ともみ ,   北林珠奈

ページ範囲:P.67 - P.69

「列島ランナー」この度,歯科衛生士が大津市を走ります!

 「健口」と聞いて,一体どれだけの人がその言葉の意味深さを感じ取ってくれるのだろう.広辞苑にも登場しないこの言葉.それにしても,本当にどこの誰だか知らないが,何て上手く作ってくれたのだろう.

 いまや「健康の入り口はお口から」,口腔と健康が関連深いことは多くの方が知っている.しかし,これを前面に出して歯科衛生士が活動できるのは,保健師をはじめ他職種との理解・協力・連携があってのこと.このチームプレイは『列島ランナー』ランニングの中で後ほど紹介していきたい.

 ところで,公衆衛生の現場で働く歯科衛生士は全国的にも少人数である.大津市保健所では,常勤の歯科衛生士は3人.これは歯科保健にかなり手厚いと言える.同時に,だからこそ求められることへのプレッシャーはあるのだが,「大津市を口腔から健康にしていきたい」と,結束は相当なもの.担うライフステージは妊婦・赤ちゃんから高齢者まで,ケースも多岐にわたる.中でも本稿では,高齢者口腔機能向上推進事業「お口元気教室」について取り上げてみよう.

保健師さんに伝えたい24のエッセンス―親子保健を中心に・10

発達障害とは

著者: 平岩幹男

ページ範囲:P.70 - P.73

はじめに

 「発達」という言葉も「障害」という言葉も,昔からある表現ですが,これら2つの単語を組み合わせて「発達障害」という表現になると,とたんにわかりにくくなります.最近話題になっている発達障害は,あとで触れる発達障害者支援法にもありますように,自閉症や注意欠陥・多動性障害(ADHD),学習障害などを含む一群の障害として定義づけられていますが,この言葉は以前には別の意味で使われていました.英語では「developmental disability」と表現しますが,この言葉が最初にアメリカで出たのは1960年代,ケネディ大統領の時代で,主として知的障害者,あるいはそれに類する障害を「発達障害」と位置づけ,支援をしようという概念でした.すなわち発達障害の根幹は知的障害とされていました.わが国でも日本精神薄弱研究協会が1970年代から開かれていましたが,精神薄弱という用語が差別的であるという批判もあり,1992年に発達障害学会と名称が変わりました.この学会では当初から知的障害を中心として研究や検討を進めており,名称を発達障害に変えても,発達障害を,知的障害という意味で使用していました.なお1998年に精神薄弱は法律的にも知的障害という用語で統一されました.

 しかし現在広く考えられている発達障害は,知的障害というよりは,むしろ行動やコミュニケーションの障害が中心となっており,自閉症ではしばしば知的障害を伴う(これについては別の回でお話しします)ものの,ADHDや学習障害などのその他の発達障害では,知的能力や基本的な社会生活能力には著しい困難を伴いません.歴史的な経過と,現在の法律に代表される考え方の違いが,発達障害という用語の使用における誤解を招いてきました.今回は現在考えられている発達障害についてお話しします.

衛生行政キーワード・61

厚生統計および保健統計の最近の動向(新統計法を踏まえて)

著者: 國光文乃

ページ範囲:P.74 - P.76

厚生統計および保健統計の概要

 「統計」とは,「統計集団(統計の対象となる,ある共通性を有する固体の集まり)について調査した結果,あるいは,当該統計集団に関する業務資料を集計・加工して得られた数字」とされ,「統計調査」とは,その統計を作成するための調査をいう.

 厚生統計から得られる情報は厚生行政において,データに基づいた科学的(Evidence-Based)な企画立案や評価等を行う上での前提条件であり,近年の政策決定過程の透明化,説明責任等の要請等を踏まえ,その重要性はますます高まっている.さらに研究機関における研究資料等にも幅広く活用され,保健・医療・福祉を中心とした社会生活全般にわたる基礎的資料を提供する「社会の情報基盤」としての性格も有するものである.

フォーラム

自殺における社会経済要因とその対策

著者: 田中剛 ,   近藤克則

ページ範囲:P.78 - P.85

はじめに

 「外因死」は,意外に多い.人口動態統計では,外因死の主な構成要素である自殺と交通事故死を合計しただけでも,悪性新生物・心疾患・脳血管疾患といった3大死因および肺炎に続き第5位で,死亡総数の7%余を占めている1).他にも,転倒・転落,溺水,煙・火災および火焔による傷害,窒息,中毒等といった不慮の事故死と他殺が含まれる.つまり病死と自然死以外のほぼすべての死に該当することになる.中でも自殺に関しては年間3万人を超える状態が続いたため平成18年には自殺対策基本法が制定されるなど,公衆衛生上の重要課題の1つとなっている.

 外因死と社会経済因子との間には,強い関連があることが国内外の多くの研究で明らかにされている.例えば,日本のJACCコホート研究では,低学歴群(15歳以下)では高学歴群(19歳以上)に対し約1.8倍も外因死のリスクが高いことがわかっている2).今後は,このような社会経済的因子の影響の大きさを踏まえた対策を考えることが求められる.

 そこで本稿では,外因死の中から特に自殺を取り上げ,社会経済的因子との関連についての研究を紹介する.また,どのような社会環境要因に介入すれば自殺を減少させることができそうなのか,考察を加えたい.

「公衆衛生」書評

「ひかりの足跡―ハンセン病・精神障害とわが師わが友」 フリーアクセス

著者: 近藤克則

ページ範囲:P.43 - P.43

 一度しか会っていないのに忘れられない人がいる.私にとって大谷先生がそうである.会ったのは私が医学生時代,先生は厚生省(当時)の局長であった30年前である.自己負担の引き上げなどの医療制度改悪やプライマリケア軽視の卒後研修制度などに義憤を覚えていた私は,それらを設計している厚生省のお役人とは,偉くなるほど初心をすり減らしてしまった人たちだろうと勝手に想像していた.しかし,先生は違っていた.本書の随所に書かれている厚生省に入られた初心「医者にかかれない社会的弱者含めたすべての人びとに,医学医療が公平に行き渡って欲しい」という思いを私に語った.そして第三章で紹介されている画期的な精神障害者実態調査(1963年)で現実を捉え,それを元に精神衛生法を改正(1965年)したことを例に,現実社会の厳しい制約と闘いながら,医療と社会を少しずつ変えていくのが官僚の仕事だと教えてくれた.

 著者は退官(1983年)後,財団法人藤楓協会理事長や国際医療福祉大学学長などを歴任され,さらにハンセン病(らい)国家賠償訴訟を巡る裁判の証人などとして闘い続けてきた.ただし,元官僚として国や自分たちのやってきたことを正当化し弁護する立場ではない.反対に,その過ちを認める立場であった.なぜ,そこまでしたのか.その答えも,この本の中にある.ご自身が多重がんなどを患った病身をおして,らい予防法の廃止(1996年),ハンセン病問題基本法の成立(2008年)に向けて奔走された原点は,1943年の小笠原登先生(京都大学助教授)との出会いにあった.当時18歳.大谷先生にとってハンセン病は,恩師の志を継ぎ,実に半世紀以上かけたライフワークだったのだ.

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あとがき フリーアクセス

著者: 西田茂樹

ページ範囲:P.88 - P.88

 肺炎は化学療法で治療できる非常に一般的な疾病のようですが,死因順位は第4位を占めており,わが国の公衆衛生上の脅威と言っても過言ではないと思われます.しかし,肺炎より死因順位の高い悪性新生物等のみならず,順位の低い糖尿病等と比較しても,公衆衛生上の課題とは認識されていないような印象を持ちます.

 また,肺炎の主要な原因は微生物であり,当然,多くの肺炎は感染症です.しかし,感染症対策としても,結核やインフルエンザ,人畜共通感染症や食中毒等に比べて,肺炎が対象とされている感は薄いように思います.

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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