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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生74巻11号

2010年11月発行

文献概要

特集 再考:HIV/AIDS予防対策

薬害によるHIV感染者/AIDS患者を取り巻く現状と課題

著者: 若生治友1

所属機関: 1特定非営利活動法人ネットワーク医療と人権〈MERS〉

ページ範囲:P.910 - P.913

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はじめに

 昨今,年間1,000名以上のHIV感染者が報告され,感染予防・啓発が強く謳われているが,わが国においては,1980年代前半に既に1,500名あまりのHIV感染が起きていた.この「薬害によるHIV感染」は,血友病患者らが治療に使用した血液製剤によってHIV感染したことを言う.そして,その多くはHIVに加え,C型肝炎ウイルス(HCV)にも重複感染している.

 現在,抗HIV治療はHAART(Highly Active Anti-Retroviral Therapy)が中心的な治療であるが,「薬害によるHIV感染者」は,C型肝炎の重篤化やHAARTの長期的な副作用・耐性ウイルスの発現から治療困難となり,毎年10名以上の患者が亡くなっている.血液凝固異常症全国調査によれば,2009年5月末時点で,HIV感染1,432名のうち646名が亡くなられている(図1)1)

 血液製剤によるHIV感染から約20数年,「薬害によるHIV感染」者は,わが国においても世界的に見ても,最も長期に生存しているHIV感染者のグループである.さらに言えば,毎年10組以上の遺族が増え続けているグループとも言える.

 「薬害によるHIV感染者/AIDS患者を取り巻く現状と課題」を考えるとき,患者本人の課題だけではなく,家族やパートナーを失った遺族へも思いを馳せなければならない.

 本稿では,患者本人および遺族,それぞれの現状と課題を考えてみたい.

参考文献

1) 瀧正志,他:厚生労働省委託事業 血液凝固異常症全国調査 平成21年度報告書.財団法人エイズ予防財団,2010
2) 山崎喜比古,他:薬害HIV感染被害者遺族調査の総合報告書.薬害HIV感染被害者(遺族)生活実態調査委員会,2003
3) 金吉晴,他:薬害HIV感染被害者遺族等のメンタルケアに関するマニュアル.財団法人友愛福祉財団,2008

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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