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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生74巻12号

2010年12月発行

文献概要

特集 救急医療を救う

わが国の救急医療の問題点と解決策

著者: 有賀徹1

所属機関: 1昭和大学医学部救急医学講座

ページ範囲:P.982 - P.986

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はじめに

 わが国における救急医療は,需要の増大が年余にわたって顕著になっていたにもかかわらず,供給そのものが漸次減少の途を辿り,ついに需要と供給がショートして今日に至っている.かつて昭和40年代は,交通外傷による救急患者が“たらい廻し”のような状況にさらされ,昭和50年代から初期・二次・三次救急医療体制の整備が進められてきた.一方,今日の救急患者の増加は,高齢化に伴う内因性疾患の患者増による.

 救急医療の現状と問題点を論ずるなら,わが国の医療や福祉などに関する政策そのものに言及しながら,解決策へと議論を展開すべきであろう.加えて,将来のことをより深く考えるなら,一般(総合)医ないし家庭医から各診療科専門医へなどという医療提供のあり方そのものについて,大いに議論すべきである1)

 しかし,根治的でなく対症療法としてでも手を打たないと,救急患者の不幸に拍車が掛かるという現実がある.

 そこで,本稿では患者の緊急度(重症度)に応じて,救急医療という限りある社会資源の投入について,言わば傾斜配分をする,つまり患者の病態から緊急度を判断し選別するという手法の意義について論じつつ,標記のテーマについて考察を進めたい.

参考文献

1) 土屋了介,他:医療における安心・希望をもたらす専門医・家庭医(医師後期臨床研修制度)の方向性~卒後医学教育認定機構(仮称)設立の要望.pp12-17,平成20年度厚生労働科学特別研究事業「医療における安心・希望確保のための専門医・家庭医(医師後期臨床研修制度)のあり方に関する研究」(主任研究者/土屋了介),2009年3月
2) 東京都救急医療対策協議会:迅速・適切な救急医療の確保について.pp2-6,東京都福祉保健局医療政策部救急災害医療課,2008
3) 総務省消防庁:平成20年度救急業務高度化推進検討会報告書.pp27-66,2009年3月
4) 有賀徹:救急医のストレス.医学のあゆみ227(2):107-110, 2008
5) 有賀徹,他:日本臨床救急医学会「地域救急医療体制検討委員会」の意義について.日臨救医誌10:301-305, 2007
6) 総務省消防庁:平成22年度救急業務高度化推進検討会 第1回重症度・緊急度の判定・選別(トリアージ)に関する作業部会.pp45-48,2010年9月17日資料
7) 三浦弘直:増大する救急需要をふまえた新たな取組みについて―救急搬送トリアージの試行について.8)Appendix 3, App12~16
8) 日本救急医学会(監修),東京都医師会救急委員会,救急相談センタープロトコール作成部会(編集):電話救急医療相談プロトコール.へるす出版,2008
9) 三浦弘直:東京消防庁救急センターの運用状況.8)Appendix 1, App1~10
10) 韋晴明:救急相談センター勤務体験記.8)Appendix 2, App11
11) 森村尚登,石原哲,有賀徹,他:東京都重点事業「救急相談センター」の現況と課題.日医雑誌137:553-556, 2008
12) 森村尚登,櫻井淳,石川秀樹,他:電話救急医療相談におけるプロトコールの導入とその効果.日救急医会誌19:921-929, 2008
13) 清水直樹:国立成育医療センター救急センターにおけるトリアージ・システムの概要.pp27-36,平成17年度日本看護協会看護政策研究事業委託研究「小児救急医療における看護師のトリアージの有効性に関する研究」(主任研究者:伊藤龍子),2005
14) 吉野広美:救急医療とトリアージ.救急の日シンポジウム,2008
15) 西塔依久美:救急外来におけるトリアージ体制確立に向けた取り組みと課題.Emergency Care 18:276-279, 2005
16) 日本救急医学会,他(監修):緊急度判定支援システムCanadian Triage and Acuity Score 2008日本語版/JTASプロトタイプ.へるす出版,2010年6月

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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