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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生74巻2号

2010年02月発行

文献概要

連載 人づくりの足跡・3

赤ちゃんから高齢者まで,世代を越えてふれあい暮らせるまちづくり―「ふれあいの家おばちゃんち」

著者: 渡辺美恵子1 三井ひろみ

所属機関: 1NPO法人「ふれあいの家おばちゃんち」

ページ範囲:P.138 - P.144

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 ここは東京・品川区.JR品川駅は東海道新幹線,羽田空港へ向う京浜急行,都内を廻る山手線など様々な往来の拠点です.品川駅から京浜急行に乗り,2駅目の新馬場駅で下車すると,目の前にはその昔,旅人が歩いた旧東海道の品川宿のまちが見えてきます.「東海道中」の面影を残す道と,高層ビルのはざまから,どこかなつかしい声が聞こえてきました.通りの向こうの商店街に目をやると,近所のおばちゃんと子どもたちの遊ぶ姿.道ばたに出ての会話と笑い声は,和やかな色合いの風を吹かせてきます.誘われるように商店街の中程を歩いていくと,レトロモダンな建物が現れてきました.駄菓子屋のような店構えの一軒家.看板には「子育て交流ルーム 品川宿おばちゃんち」と書いてあります.

 風変わりなネーミングの家の中が気になって覗いてみると,店先の奥に8畳間ほどの板張りとたたみの部屋があり,いろいろな年齢の子どもたちが楽しそうに遊んでいます.子どもと一緒に積み木をしているおばちゃん,絵本を読んでいるおばちゃん.お母さんらしい若い女性とおばちゃんがお茶を飲んで,おしゃべりの華が咲いていて,あったかなぬくもりに満ちていました.通りがかって,興味本意に覗き込む私に「上がって,上がって」と声をかけてくれる女性.ふくよかな笑顔で手招きします.ふっと子どもの頃,隣の家の茶の間に上がって,おやつを食べたり,おばちゃんに遊んでもらった記憶が鮮ってきました.私は門前町の商店街で暮していたので,学校から帰ると隣近所のお店のお宅に気軽に上げてもらって,過ごしていた時間が日常の中にたくさんあったものです.大人になった今,改めて周りの子どもたちの居場所を見てみると,隣近所の家に上がり込んでご飯を食べさせてもらったり,世話を焼いてもらったりする光景は滅多に見られなくなりました.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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