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連載 衛生行政キーワード・62
黄砂の健康影響について
著者: 佐方信夫1
所属機関: 1環境省総合環境政策局環境保健部環境安全課
ページ範囲:P.172 - P.174
文献購入ページに移動黄砂とは中国大陸内陸部のタクラマカン砂漠,ゴビ砂漠や黄土高原など,乾燥・半乾燥地域で,風によって数千mの高度にまで巻き上げられた土壌・鉱物粒子が偏西風に乗って日本に飛来し,大気中に浮遊あるいは降下する現象である.
黄砂現象は従来,自然現象であると理解されてきたが,近年ではその頻度と被害が甚大化しており,急速に広がりつつある過放牧や農地転換による土地の劣化等との関連性も指摘されている.日本においては,黄砂は一般的に3~4月に多く観られ,11月にも観測される場合もある.
黄砂粒子(写真)には,石英や長石などの造岩鉱物や,雲母,カオリナイト,緑泥石などの粘土鉱物が多く含まれており,日本まで到達する黄砂の粒径の分布は,直径4ミクロン付近にピークを持つことが分かっている.また,黄砂粒子の分析から,土壌起源ではないと考えられるアンモニウムイオン,硫酸イオン,硝酸イオンなども検出され,輸送途中で人為起源の大気汚染物質を取り込んでいる可能性も示唆されている.
このように黄砂の物理的・化学的性質は解明が進んでいる一方,黄砂による健康影響については,海外の疫学研究において呼吸器系および循環器系疾患等の増加が指摘されているが,わが国における黄砂の健康影響については,疫学的調査報告をはじめ研究成果は今のところほとんど見当たらず,知見の集積が十分とは言えない状況である.
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