文献詳細
連載 路上の人々・2
文献概要
2000年,厳寒の日々,東京都の路上に5,700人が身を晒す.上野公園の美術館近くの木立の中に,一歩足を踏み入れる.寒気が襲う.身を震わせ小道を進んでいくと,生い茂る木々の間に,晒し身に毛布を被って寝ている人や,座っている人がいる.昼間は,青いテントは壊さなければならない.その路上の人々の中に,白髪を丸坊主にした老人の姿があった.
「こんにちは,寒くはありませんか」
「いや,上野の森で生きていることに感謝していますよ」
口髭が銀色に輝いていた.
やがて厳しい冬も過ぎ,春から夏へと季節は変わっても,老人はその場所から動かなかった.
「こんにちは,寒くはありませんか」
「いや,上野の森で生きていることに感謝していますよ」
口髭が銀色に輝いていた.
やがて厳しい冬も過ぎ,春から夏へと季節は変わっても,老人はその場所から動かなかった.
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