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特集 公衆衛生再考
社会デザインへ向けてのNPO/NGOの社会的役割と力―その現実と将来
著者: 中村陽一1
所属機関: 1立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科
ページ範囲:P.199 - P.202
文献購入ページに移動21世紀に入り,環境や地域紛争など前世紀からの宿題に加えて,新しい形の貧困や社会的排除(social exclusion)が大きな課題となってきた.その解決のため,政府行政・民間企業・NPO/NGO等の組織はそれぞれどのような役割を担うのか.また,近年重視されることの多いセクターの垣根を越えた「協働」は,どこまでの有効性と可能性を期待できるのか.いずれにしても,その際,従来の発想と方法論を超え,社会の仕組みや人々の参画の仕方を変革し,具体的に実現していくことが必要になってくる.そのような思考と実践を,筆者は「社会デザイン」と呼びたい.
こうした中,1980年代半ば頃から新しい形で注目を集めることになってきた,福祉・環境保全・まちづくり・国際協力などの,地域の人々の自発的な諸活動は,「市民活動」という呼び名で今日認識されるようになっている.現在のボランタリーな市民活動は,問題点の指摘や告発,あるいは反対運動だけに留まらず,「ではどうすればいいのか」「そのためにどのような構想,政策,それを実現する手段やプロセスが必要なのか」という点を,実際の活動を通じて身をもって提案するとともに,めざす状況を自ら創り出そうとするところに新しい特徴を見出すことができる.すなわち,社会を変革する力,イノベーションを起こす機能,コミュニティを再編していく機能,新しい政策や社会づくりへの提言・提案を含むアドボカシーと言われる機能等々の特徴である.
以上のような流れを踏まえ,(地域)社会の運営にあたっては,NPO/NGOを含む住民・市民の多様な諸活動,あらゆる面で自らの革新を求められている政府行政,地域社会と消費社会の大幅な変動への対応を迫られる民間企業,などによるネットワーキング,パートナーシップ,コラボレーション等々,「協働」関係が不可欠だとさえ言われるようになっている.
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