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特集 環境リスク
化学物質の多重曝露と複合影響の環境リスク評価への試論
著者: 鈴木規之1
所属機関: 1(独)国立環境研究所環境リスク研究センター曝露評価研究室
ページ範囲:P.270 - P.274
文献購入ページに移動現代の環境中には多数の人工化学物質が存在する.また,それ自体が人工でなくても,人為活動による何らかの反応で副生成したり,または人為活動の結果として環境中の存在状況が大きく変化している物質も存在する.ここでは,これら主に人為活動に起因する多数の化学物質によって,人あるいは生物が同時に曝露されている状態を多重曝露と考えることにする.
多重曝露とはやや聞き慣れない言葉であろう.複合曝露と言うほうが一般的かもしれない.複合曝露は多重曝露と似た意味のように思われる.しかし,あるいは単なる曝露だけではなく複合影響を示唆する意味合いを持つ言葉とも考えられる.ここで複合影響とは,生物の体に対して複数の異なる影響が同時に現れたときにその総体としての影響を指す概念と考えられるが,複合影響の定義も必ずしも明確でない.複数の化学物質によって,異なる影響が同時に発現する結果として起こる影響全体と考えることも可能であるし,あるいは化学物質と他の何らかの生体作用の複合として複合影響が考えられる場合もあり得る.いずれにしても,環境中に多数の化学物質が存在し,それによる多重曝露の状況が存在することはほぼ自明であろう.そして,多重曝露のために,何らかの影響あるいは複合影響が存在するかもしれないという懸念もまた,懸念としては考えられるものである.しかしながら,仮に多重曝露の状況が明らかであっても,その影響やリスクを推定するのは難しい.その主な理由は,多重曝露の結果によって起こるかもしれない,影響もしくは複合影響の評価方法が定まっていないことにあると考えられる.
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