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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生74巻4号

2010年04月発行

文献概要

特集 環境リスク

化学物質の多重曝露と複合影響の環境リスク評価への試論

著者: 鈴木規之1

所属機関: 1(独)国立環境研究所環境リスク研究センター曝露評価研究室

ページ範囲:P.270 - P.274

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化学物質の多重曝露から複合影響に至る環境リスク評価の現状

 現代の環境中には多数の人工化学物質が存在する.また,それ自体が人工でなくても,人為活動による何らかの反応で副生成したり,または人為活動の結果として環境中の存在状況が大きく変化している物質も存在する.ここでは,これら主に人為活動に起因する多数の化学物質によって,人あるいは生物が同時に曝露されている状態を多重曝露と考えることにする.

 多重曝露とはやや聞き慣れない言葉であろう.複合曝露と言うほうが一般的かもしれない.複合曝露は多重曝露と似た意味のように思われる.しかし,あるいは単なる曝露だけではなく複合影響を示唆する意味合いを持つ言葉とも考えられる.ここで複合影響とは,生物の体に対して複数の異なる影響が同時に現れたときにその総体としての影響を指す概念と考えられるが,複合影響の定義も必ずしも明確でない.複数の化学物質によって,異なる影響が同時に発現する結果として起こる影響全体と考えることも可能であるし,あるいは化学物質と他の何らかの生体作用の複合として複合影響が考えられる場合もあり得る.いずれにしても,環境中に多数の化学物質が存在し,それによる多重曝露の状況が存在することはほぼ自明であろう.そして,多重曝露のために,何らかの影響あるいは複合影響が存在するかもしれないという懸念もまた,懸念としては考えられるものである.しかしながら,仮に多重曝露の状況が明らかであっても,その影響やリスクを推定するのは難しい.その主な理由は,多重曝露の結果によって起こるかもしれない,影響もしくは複合影響の評価方法が定まっていないことにあると考えられる.

参考文献

1) 労働省:昭和63年労働省告示第79号,および関連告示
2) 松本理,丸山若重,平野靖四郎,青木康展,松本幸雄,中杉修身:大気中の化学物質の複合曝露による発がんリスクの評価.日本リスク研究学会誌15:55-67,2004
3) <Go to ISI>://000240540000001 Van den Berg M, Birnbaum LS, Denison M, De Vito M, Farland W, Feeley M, Fiedler H, Hakansson H, Hanberg A, Haws L, Rose M, Safe S, Schrenk D, Tohyama C, Tritscher A, Tuomisto J, Tysklind M, Walker N, Peterson RE:The 2005 World Health Organization reevaluation of human and mammalian toxic equivalency factors for dioxins and dioxin-like compounds. Toxicol Sci 93:223-241, 2006
4) 環境省:ダイオキシン類対策特別措置法施行規則(平成11年12月27日総理府令第67号)
5) 厚生労働省:水質基準に関する省令(平成15年5月30日厚生労働省令第101号)
6) 環境省:化学物質の環境リスク初期評価,2010http://www.env.go.jp/chemi/risk/index.html
7) 森口祐一・他:「輸送・循環システムに係る環境負荷の定量化と環境影響の総合評価手法に関する研究」(平成8~10年度)国立環境研究所特別研究報告(Sr-30-2000).国立環境研究所,2000
8) 松橋啓介,森口祐一,寺園淳,田邊潔:問題領域と保護対象に基づく環境影響総合評価の枠組み.環境科学会誌13:405-419,2000

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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