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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生74巻4号

2010年04月発行

文献概要

特集 環境リスク

シックハウス症候群に関する研究の現状と今後の課題

著者: 岸玲子1 荒木敦子1

所属機関: 1北海道大学大学院医学研究科予防医学講座公衆衛生学分野

ページ範囲:P.295 - P.299

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はじめに

 生活環境の中で,水,食と並んで空気質は毎日の生活の中で曝露する重要な環境要因である.90年代まで日本では「シックビル症候群」の頻度は少なかった.その理由は1970年にビル管理衛生法がいち早く制定され,一定面積以上の建築物では室内粉じんなどの測定や,室内の機械換気による制御が適切に行われてきたためである.ところが,省エネルギーをめざして一般住宅でも高気密・高断熱化が進むにつれ,1990年代後半から「シックハウス症候群(Sick House Syndrome:SHS)」が全国で大きな社会問題となった.住宅の構造は気候と密接に関係し,また文化的,歴史的な特徴もある.そこで,わが国で地域を基盤とした疫学研究が重要となってくる.

 筆者らは,一般住宅を対象とし,室内環境要因と症状の出現との関連を明らかにし,具体的対応策に役立てることを目的として,2001年から疫学研究をスタートした.過去10年,班研究で実施した疫学研究を振り返ると,すでにわが国で多くの知見が明らかになってきている.そこで本稿では,シックハウス症候群に関するわが国のこれまでの研究と,今後の課題を整理することとする.

参考文献

1) Harris RL:Patty's Industrial Hygiene. Fifth Edition, Volume 4. Chapter 65, Indoor Air Quality in Nonindustrial Occupational Environment, pp3149-3241, John Wiley & Sons, Indianapolis, 2001
2) 浦嶋幸雄:いわゆるシックハウス問題に関する公衆衛生学的対応―札幌保健所のシックハウス問題に対する取組み.公衆衛生研究50(3):145-147, 2001
3) Saijo Y, et al:Symptoms in relation to chemicals and dampness in newly built dwellings. Int Arch Occup Environ Health 77(7):461-470, 2004
4) Kishi R, et al:Regional differences in residential environments and the association of dwellings and residential factors with the sick house syndrome;a nationwide cross-sectional questionnaire study in Japan. Indoor Air 19(3):243-254, 2009
5) Kanazawa A, et al:Association between indoor exposure to semi-volatile organic compounds and building-related symptoms among the occupants of residential dwellings. Indoor Air 20(1):72-84, 2009
6) 金澤文子,他:半揮発性有機化合物による室内汚染と健康への影響.日衛誌64(3):672-683, 2009
7) Araki A, et al:Diffusive sampling and measurement of microbial volatile organic compounds in indoor air. Indoor Air 19(5):421-432, 2009
8) 岸玲子,他(厚生労働科学研究「シックハウス症候群の実態解明及び具体的対策方策に関する研究」班):シックハウス症候群に関する相談と対策マニュアル.日本公衆衛生協会,2009

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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