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特集 環境リスク
シックハウス症候群に関する研究の現状と今後の課題
著者: 岸玲子1 荒木敦子1
所属機関: 1北海道大学大学院医学研究科予防医学講座公衆衛生学分野
ページ範囲:P.295 - P.299
文献購入ページに移動生活環境の中で,水,食と並んで空気質は毎日の生活の中で曝露する重要な環境要因である.90年代まで日本では「シックビル症候群」の頻度は少なかった.その理由は1970年にビル管理衛生法がいち早く制定され,一定面積以上の建築物では室内粉じんなどの測定や,室内の機械換気による制御が適切に行われてきたためである.ところが,省エネルギーをめざして一般住宅でも高気密・高断熱化が進むにつれ,1990年代後半から「シックハウス症候群(Sick House Syndrome:SHS)」が全国で大きな社会問題となった.住宅の構造は気候と密接に関係し,また文化的,歴史的な特徴もある.そこで,わが国で地域を基盤とした疫学研究が重要となってくる.
筆者らは,一般住宅を対象とし,室内環境要因と症状の出現との関連を明らかにし,具体的対応策に役立てることを目的として,2001年から疫学研究をスタートした.過去10年,班研究で実施した疫学研究を振り返ると,すでにわが国で多くの知見が明らかになってきている.そこで本稿では,シックハウス症候群に関するわが国のこれまでの研究と,今後の課題を整理することとする.
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