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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生74巻4号

2010年04月発行

文献概要

連載 地域保健従事者のための精神保健の基礎知識・4

自殺問題から明らかになる精神科医療・精神医学の課題

著者: 松本俊彦1

所属機関: 1国立精神・神経センター精神保健研究所自殺予防総合対策センター

ページ範囲:P.325 - P.329

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総合的な自殺対策のなかの精神科医療

 わが国の自殺による死亡者数は,1998年に3万人を超えて以降,11年間にわたって高止まりのまま推移している.その背景にはバブル崩壊後に急増した多重債務や過重労働,さらに最近では,リーマン・ショック以後に問題化した雇用の悪化といった社会的要因の影響が大きいと言われている.こうした認識に基づいて,現在わが国では,自殺対策を精神保健的対策に限定せずに,総合的な対策として進められている.自殺総合対策大綱において「総合」という言葉がついているのは,まさにそういった理由からである.しかし,穿った見方をすれば,その裏には,これまでの国の自殺対策があまりに精神保健領域に偏っていたという反省がある.確かにわが国には,長い間自殺対策をうつ病対策にすりかえてきた暗い歴史があることは否めない.

 ところで精神保健に限定しない「総合対策」とは,読み方を変えれば「精神保健的対策だけでは自殺は防げない」ということを前提とした対策と理解することもできる.このことは,自殺リスクの高い精神障害と日常的に対峙する精神科医療の責任が軽減したことを意味するのであろうか?

参考文献

1) Bertolote JM, et al:Psychiatric diagnoses and suicide;Revising the evidence. Crisis 25:147-155, 2004
2) Lönnqvist JK, et al:Mental disorders and suicide prevention. Psychiatry Clin Neurosci 49:Suppl 1:S111-116, 1995
3) 廣川聖子,他:死亡前に精神科治療を受けていた自殺既遂者の心理社会的特徴;心理学的剖検による調査.日本社会精神医学雑誌(印刷中)
4) 東京都福祉保健局(編):自殺実態調査報告書―自死遺族からの聞き取り調査.pp41-44, 2009
5) 南条あや:卒業式まで死にません.新潮社,2000
6) 樽味伸,他:うつ病の社会文化的試論―特に「ディスチミア親和型うつ病」について.日本社会精神医学雑誌13:129-136, 2005
7) Owens D, et al:Fatal and non-fatal repetition of self-harm. Systematic review. Br J Psychiatry 181:193-199, 2002
8) 内閣府:自殺対策加速化プラン http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/taikou/pdf/plan.pdf
9) Simon RI:Chapter 2. Suicide risk assessment. R.I. Simon:Assessing and managing suicide risk. pp25-60, American Psychiatric Publishing Inc, Arlington, 2004

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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