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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生74巻5号

2010年05月発行

文献概要

特集 自然毒 刺傷・咬傷―野外危険生物

海洋危険生物

著者: 神谷大二郎1 稲福恭雄1

所属機関: 1沖縄県衛生環境研究所

ページ範囲:P.384 - P.388

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はじめに

 人間に健康被害を与える海洋生物の一群は海洋危険生物と呼ばれている.これら海洋危険生物が引き起こす刺咬傷被害は,大きく2つのタイプに分けられる.1つはダツやサメなどの,刺す,咬むといった物理的な外傷被害である.2つめは,刺す,咬むという行為と同時に,毒を注入する刺毒・咬毒被害である.沖縄県で報告される刺咬傷事故の多くは,後者によるもので1),毒を有するクラゲやイソギンチャクなどがその代表的な加害生物である.

 海洋危険生物の毒は,本来,捕食や自己防衛のために獲得した生存手段であるが,その毒により人間にとって致命的な刺咬傷被害を引き起こすことがある.これらの生物による健康被害は,死亡事故も含め数多く報告されている2).そのため,被害防止対策は公衆衛生上重要な課題の1つである.特にサンゴ礁を中心とする海域は多様な生物相を有し,海洋危険生物も多く生息しているため,未然に被害防止対策を講じていくことが必要である.

 本稿では,海洋危険生物の中でも毒による刺咬傷被害を引き起こす生物を対象とし,被害の現状,加害生物,応急処置,沖縄県における被害防止対策の取り組みなどについて概要を述べる.

参考文献

1) 岩永節子,他:平成15年~19年度海洋危険生物対策事業報告書.沖縄県衛生環境研究所,2008
2) John A Williamson, et al:Venomous and Poisonous Marine Animals. Surf Life Saving Queensland inc. University of New South Wales Press, 1996
3) 岩永節子,他:沖縄県における海洋危険生物被害―ハブクラゲの生態と被害.月刊海洋41(5):255-259,2009
4) 大城直雅,他:ハブクラゲ刺症による死亡事例.平成10年度海洋危険生物対策事業報告書,pp16-17,1999
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6) 上里博,他:海の危険生物治療マニュアル.(財)亜熱帯総合研究所,2006
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12) 堺淳,他:フィールドワーカーのための毒蛇咬症ガイド.爬虫両生類学会報2002(2):75-92,2002
13) 小濱正博:海洋生物による咬刺症の臨床.中毒研究21:299-309,2008
14) Struan K Sutherland:Antivenom use in Australia. The Medical Journal of Australia 157:734-739, 1992
15) 大城直雅,他:沖縄県におけるマリントキシンによる健康被害.中毒研究21:293-297,2008

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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