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連載 働く人と健康・17―過労死・自死相談センター代表の立場から②
最近の過労死裁判での経験
著者: 上畑鉄之丞1
所属機関: 1過労死・自死相談センター
ページ範囲:P.414 - P.418
文献購入ページに移動現在の過労死(脳血管疾患および虚血性心疾患等)の認定基準は,平成13(2001)年12月に改訂されたものである.この改訂作業では,1999年に最高裁でそれまでの労働省の認定基準が否定されたことから,労働省が「脳・心臓疾患の認定基準に関する検討委員会」を立ち上げ,その報告書をもとにして決められた.
この検討委員会で思い出すのは,筆者が国立公衆衛生院在籍中に,労働省の事務官が数人訪ねてきて,「今回,認定基準改定の委員会が発足し過去の資料を集めることになりました.ついては,先生が日本産業衛生学会で委員長として1995年にまとめられた循環器疾患の作業関連要因検討委員会の報告書『職場の循環器疾患とその対策』をいただけないでしょうか」と要望されたことである.筆者は,「あの報告書は当時の学会誌にも掲載されているので,そちらを参考に」と返事をしたところ,報告書の現物そのものが入用とのことで,残り少なくなっていたのを差し上げた.訪問者は,「ありがとうございます.この報告書は,基準改定のために必ず役立たせていただきます」と言って帰った.その後は全くナシのつぶて.当時は委員会のメンバーも公表されておらず,メンバーが誰かも知らなかった.そして,約1年後,新聞で認定基準が改定されたとの記事を見た.労働省からは筆者に報告書さえも届かず,雑誌に掲載された報告書を読んでみたが,筆者が提供した学会の委員会報告は一行たりとも引用されていなかった.
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