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特集 現場が求める保健師教育
イギリスにおける保健師教育の現状―卒前・卒後教育
著者: 岡本玲子1
所属機関: 1岡山大学大学院保健学研究科
ページ範囲:P.571 - P.575
文献購入ページに移動日本では,保健師国家試験合格者のうち大卒者の割合が90%を越えており,保健師供給における看護系大学の責任は大きい.しかしすべての看護系大学は,平成22年度入学生まで,文部科学省の指導の下,保健師看護師統合化カリキュラムを実施してきた.この体制は,看護師が幅広い視野を持って育成されることには貢献したものの,保健師として就労する者にとっては多くの課題をもたらした.それは,教育期間,とりわけ実習の不足による実践能力の低さ,自信のなさやリアリティーショック,そして何と言っても保健師のアィデンティティが育まれていない,という課題である.
英国では,大学での看護師(助産師)教育課程を終え,その免許を取得し,多くは数年の看護師(助産師)としての経験を経てから,保健師の教育課程に進み,免許を取得する.看護職数の日英比較を見ると(表1),英国の保健師数は日本の1.4倍程度であることがわかる.その「保健師:Specialist Community Public Health Nurse(通称SCPHN:スカフン)」の免許は,自分でその進路を選んだ者が,選抜されて教育課程に入り,国の専門能力基準を満たす実力に至ったという大学の評価を受けて,ようやく得られるものである.保健師になりたいという時点でその者には志向性がある.さらに入試において,統計の試験や,与えられた公衆衛生の課題に対する口頭発表,小論文等を経て,選ばれて入学する.この時点ですでにアィデンティティが芽生える準備万端である.保健師の免許はおまけではなく,目的意識を持った者が,この後述べるような1年間の学習を積み上げ,獲得する.
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